1491:水曜ミーティング
朝です。今日は水曜日なので今泉君達は休みの日です。つまり私は一日暇。休みにしてしまってもいいところですが、休みは出来るだけ土日に取るようにしているので、仕事としてやることはマニュアル作りの続きを作るか、それとも深く潜って自分の稼ぎにするか、ですね。
まあ、大人しく潜ることにしましょう。今日も六十四層をうろうろしながら荷物を集めては重たくなったら六十三層に戻って……を繰り返して密やかな収入を確保しに行きましょう。本来なら六十四層ではなく六十五層辺りで探索をする方が荷物を軽く出来ていいのだろうけど、今六十四層をグルグル回ると迷うので、迷わない程度にしなくてはいけませんねえ。
さて、朝食です。相変わらずのトーストとバターとジャム、そして今日は……今日はサラダデーですね。多めにサラダを取ってしっかり栄養分を確保しておきましょう。後は昼食のお供に野菜ジュースを買ってからダンジョン庁に向かうことにしましょう。
でも、トーストとサラダだけで栄養分が少し足りない気がするので……サラダパスタと行きますか。今日は一日体を動かすのでしっかりと栄養を取っておく必要があります。お弁当はちゃんと持ち込むとして、お弁当以外の栄養はじぶんで調達しないといけません。
しっかりホテルで栄養を取った後、ちょっと休憩してからいつものスーツに着替えて出勤だ。出勤前に昨日の着替えをランドリーサービスに渡して、洗濯を頼みます。あまり生地が傷まずに洗濯して返してくれるので非常にありがたい。今までは自分で洗濯して干して……をやっていた分ものぐさになったのかもしれませんねえ。
ですが、せっかく宿泊についてくるサービスなんですし、使わない手はないでしょう。多少お金がかかる分は今から稼いで帰ってこればいいだけです。その分は充分に稼げるのはわかっているので問題なしです。
着替えて出勤スタイルにすると、持ち物を確認。いつものアレをやりましょう。
メイク、ヨシ!
スマホ、ヨシ!
スーツ、ヨシ!
お財布、ヨシ! 中身もヨシ!
でっかいバッグ、ヨシ!
お弁当、ナシ! 後で買う!
野菜ジュース、ナシ! 途中で買う!
コップ、ヨシ!
装備、ナシ! 一式更衣室に置いてある!
指さし確認は大事ですねえ。さて、ホテルを出ましょう。道中のコンビニで野菜ジュースのパックを買うと、これで栄養分を補充です。昼食の時に飲みましょう。
ダンジョン庁に出社して、更衣室でいつも通り着替えます。他にも同じタイミングで出社してきた職員とおはようございますをぶつけ合いながら着替えます。
「文月さん……でしたよね。探索課のほうは順調ですか? 」
先輩らしき職員から声をかけられる。名前は……ネームプレートを凝視する。坂崎さんか。
「はい、おかげ様で順調です。今の所は……ですが、みんな頑張ってくれていますよ」
「そうなのね。今年から出来た課だから、順調に行ってるかどうか気になってたのよ。他の部署はなんとか回ってるそうですから後確認を取るのは探索課だけだったのよね」
なるほど、他の部署は順調ってことですね。
「坂崎さん……は各部署の確認や進捗を報告をするお仕事なんですか? 」
「ううん、個人的な疑問かな。今の所他の部署の見回りが出来る暇がなかったし、他の新人に対してもちゃんと他の部署は回ってるらしい、というのを知らせる意味でも確認を取りたかったのよ」
どうやら間諜ではないらしい。と言っても、真中長官が直接手塩にかけている部署なので間諜を入れるぐらいなら自分で確認しに来ますよねえ。純粋に情報交換、というところなんでしょう。
「私は今日は一人でダンジョンに潜る日なので他のメンバーは解りませんが、それぞれ自分の課題に取り組んでいるのは間違いありませんし、進捗のほうも今の所問題が出てきてる節はないですねえ」
「それは何よりね。じゃあ、頑張ってね」
先に着替えて行く坂崎さんに置いていかれる格好になった。自分もさっさと着替えて部署に向かわないといけませんね。今日は水曜日なので強制会議日ではありませんが、なんだかんだで月木はみんな顔を合わせてお互いの進捗報告はする形になっている。今日は自分の担当パーティーで顔を見せるのは私だけ、ということになるんですかねえ。
着替えを終えて探索課の部屋に向かうと、皆もう揃っていた。まだ着替えてない人もいるが、人数が揃っていたので早速ミーティングを始める。
「じゃあ、今日もいつも通りってことでいいのよね。高野君のパーティーはゴブリン狩りから、可能ならソードゴブリンのいる四層へ向けて実力を確実に積み重ねていくこと。私のパーティーはソードゴブリンをひたすら狩る。文月さんは? 」
こっちへお鉢が回ってきたので私の予定を伝えておきます。
「私はマニュアル作りが一段落したので今日は一日一人で潜ろうと思います。手持ちの魔結晶でエレベーター代は捻出できるので気楽に一日稼いで帰ってきますよ」
「そう……今泉君達他のメンバーは昨日帰ってきたからお休みってことね。まあ、文月さんも一緒に潜らなくなった分出勤日が実質的に増えたってことかしら? 」
「まあ、実働時間は変わらないですからね。平日休みで何処かへ出かけるというわけではありませんので毎日仕事のほうがある意味では気楽です。むしろ、リヤカーで七層に下りて皆が一層に到着するまでの時間の暇つぶしに何ができるかを考えるほうが苦労が多く感じる所ですね」
今泉君達はちゃんと休憩できているだろうか。もしかしたらどんどん早く進みたいために月火・水木・金土と詰め込んで探索をすることも可能といえば可能ですが、無理をして稼いでCランク試験に挑んで失敗、ということもありえます。
後は時間が解決してくれる問題なので、きっちり週二回潜ることで確実に成果を出すことのほうが大事だと思います。なので平日休みでも気にせずゆっくり休んでくれていることを願います。
「じゃあ、各自予定通りに……文月さんは気を付けて行ってきてね」
「そういえばなんですが、高野君と阿南さんはたまには深く潜ったりしないんですか? 」
念のためガス抜き話題として聞いておきます。高野君も阿南さんも本来なら自分がゆっくり楽しめる階層での探索や、より深くへ潜っていけるようにしたいのではないでしょうか。それをパーティーの引率役ということで制限することで、ストレスが溜まっていたりしないでしょうか。
そこもちゃんと気を回しているんだぞ、というポーズだけでも取っておかないといけません。
「正直なところを言えば行きたいわね。文月さんが単独で六十三層辺りまで潜れるようになったみたいに、私たちもその内揃って深いところまで行けるようにはなりたいし。でも、まだみんなのサポートをしていく方が大事だって認識はあるから今の所は後回しね」
阿南さんは自分のパーティーで潜っていくのを優先していくことにしたらしいです。
「俺もそうだな。せめてDランクになって一人……じゃない、パーティーだけで行って帰ってこれるようにきっちり仕上げてからでも遅くないと考えてる。最初は確かに、自分の探索が出来ないのはストレスかもーとは考えてたけど、俺一人でできる範囲なんて狭いものだし、それならみんなで一緒に潜り込んでいく方がまだストレスがなくていいし後ろ髪を引かれるような気持にもならなくて済む。時間が解決してくれるのはこっちも同じだしな。みんなが立派に独り立ちしてくれるようになってからでも遅くはないかなって」
両方とも自分のパーティーメンバーにちょっとした圧をかけつつ、我慢している訳ではないから気長に頼むよというアピールを忘れてはいないようだ。他のメンバーはその声を聞いて少しやる気を出しているのか、表情に嫌気が出ていたりはせず、むしろ頑張って追いつかなければ、という表情をしている。やる気があるのは良いことです。
「そういえば先日真中長官と少し話していたことなんですが、人事院と話がついて、ダンジョン庁における探索活動の収入は副業として認められる方向性にいきつつあるそうです。なので今まで稼いだ金額を返却しろ、と言われる可能性は低そうですよ」
せっかく人が居るので……全員ではないが、ここで伝えておく。今泉君達にはまた別で話そう。
「それは何よりね。探索してて目の前の収入が全額ダンジョン庁に入るんじゃやる気も出ないし、いい判断だと思うわ」
「それって文月さんの場合、いくらぐらい返却しなきゃいけないことになるんですかね……」
「億単位なのは確実でしょうね。私個人の収入のために、というわけではないけど職員のやる気を出させるのも長官の仕事、ということではないでしょうか」
皆それぞれ返さなくてもいいかもという話にほっとしている。ほっとしている人は既に探索で得た収入を使い込んでいる人がメインなのだろう。
まあ、いきなり収入が断たれて返金となるとそれぞれ一気に返すことは難しくなるでしょうし、ちょうどいい発表になったかもしれません。これで皆のやる気が上がってくれるならこっちとしても本望ですねえ。
「さて、そろそろ行きますか。長話をしていても無駄な時間が増えるだけだし」
「そうですね、では各自行きますか。ちゃんとお弁当忘れないようにしてくださいね」
朝のミーティングが終わり解散。私も食堂で弁当二個を注文してダンジョンの中へ出かける。そういえば、増加食の話はどうなったんでしょう。うまく伝わってくれると良いんですが……
今日はリヤカーを使うパーティーがいないため、真っ白に塗装されたダンジョン庁リヤカーは私が一人で占有できる贅沢な日になります。許可を出して解りやすいように塗装してくれたダンジョン庁に感謝ですねえ。
五百円玉をチャリンと入れてダンジョン内に入場し、また一時間ほどのエレベーター待ちの時間になる。この間にもマニュアルの下地を作っていきましょう。暇な時間にすることがあるというのは非常にいいことですね。あまり集中すると列を乱すのでそこまで根を詰めてやらないように注意だけしておきます。
一時間待って自分がエレベーターで六十三層まで下りる番になりました。ゴブリンキングの角をはめて燃料を入れて六十三層までボタンをポチッとな。ここから先は小西ダンジョンとは違い、純粋に四十五分ほど待つ時間になりますが、今はスマホでマニュアルの下地作りをする仕事があるので待ち時間が暇でしょうがない、ということがないのがありがたいですね。
これで片道二時間。帰りもありますから、それほど長い間探索できるわけではないでしょう。ですが、六十四層の密度なら一億稼いで帰るのも難しくはありません。洋一さんがいる時と違って荷物がある程度貯まったらこまめに六十三層まで戻って荷物を置きに来る必要がありますが、それでも他の階層に潜り込むよりは密度が高く収入も多い探索ができます。
今日は普段のデスクワークではなく探索を思いっきり楽しめる日でもあります。全力ダッシュで……というわけにはいきませんが、まあのんびりいくとしますか。
どんどん下書きが増えていく。時には考えながら、時には思い出しながら自分の体の中に身に付いているモンスターとの戦い方とスキルの使用法、それからモンスターの行動パターンやドロップ品、探索時に注意するべきポイント、主にドロップ品についてですね。
重くなり過ぎないようにほどほどに荷物を持ち歩かなければいけないということを念頭に置いておかなくてはならない。
六十三層に到着するまでに、五十六層までのマニュアルの下書きを終えた。正直ここまで作れば今年いっぱいは必要ないだろうとは思ってはいますが、出来る所まで……六十八層までのマニュアルが出来ていれば充分だと思いますのでそこまでは作っていくことにしましょう。
まだ何回か書きなおす必要もあるでしょうし、読んでもらうだけで情景やモンスターの強さなどを思い描いてもらえないようではマニュアルとは言えませんからね。誰が読んでも対応ができるようになるのがマニュアルです。
真中長官にも目通しをお願いして、「これで私もダンジョンに入り込んだ気分になれたよ! 中々素晴らしいね! 」ぐらいの感想は引き出したいところですね。
さて、広い六十三層に到着したところで、六十四層側の階段に近い広場のところにいつも通りリヤカーを設置。どうやら他にもお客さんがいるようなので安心して探索が出来るかな。
荷物と弁当はリヤカーに置いておき、後で食べに来る時に回収しましょう。それまではこのひんやりしたマップで程よく冷蔵とまではいかないものの、ご飯の時間まで冷えていてもらいます。
さて、探索をしますか。
作者からのお願い
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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。
後毎度の誤字修正、感謝しております。





