1399:スノーオウル一本勝負
今日も気持ちのいい朝、エアコンもしっかり効いていてこのままもうひと眠りと行きたいところだが、今日の予定はかなり厳格に決まっている。昼食もだ。なのでキチッと目覚めてキチッと動いていつもより早め早めを心がけていこう。
まずは朝食、いつも通り。トースト二枚にバターを塗って、目玉焼きと千切りキャベツ。急ぎだからと噛まずに食べることなく、いつも通りを心がける。時短をするべき場所はここじゃない。
そして昼食としてツナサンドとタマゴサンドとサラダサンドの三種のサンドイッチを作り上げると、さっさと着替えて今日は早めに家を出る。これでかなり時短できたな。良い感じに今日も探索が出来そうな予感がする。
柄、ヨシ!
圧切、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
スーツ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
籠手、ヨシ!
飯の準備、ヨシ!
嗜好品、ナシ! 今日はミルコに構っている余裕はナシ!
車、ヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。いつもより一時間半ほど早い出勤になるが、ちゃんと早出勤には理由があるので素早く家を出よう。今日もダンジョンが俺を待っている。
◇◆◇◆◇◆◇
いつもより三本早いバスに乗って、ほぼ開場時間に小西ダンジョンに到着する。今日は長丁場になるが、元気にやっていこう。今日の目的は一つ、スノーオウルをギリギリまで狩り続けることだ。
朝一の開場の列に並び入ダン手続きを受けると、普段ならばない時間に俺が来たのを見て受付嬢が驚く。
「おはようございます。今日はお早いですね」
「一人ですしね。ちょっと今日一日でやり終えてしまいたい案件がありまして」
「そうですか、ご安全に」
受付を潜り抜けてリヤカーを引き、エレベーターで七層に到着、念のために茂君チェックをすると、今日もしっかり茂っていたので刈り取ってから倍速で三十五層に向かう。
三十五層にたどり着くとそこそこの人だかり。これはワイバーンは狩れないな、と覚悟を決めて、リヤカーをエレベーター付近のみんなが置いている場所に設置すると、三十六層方向へ行く。たどり着いた三十六層では、予想通り自分より先を歩いている探索者のおかげでほぼ戦闘なしで三十七層へ到着することになった。その分時間を短縮できたのでこれはこれでヨシとしておこう。
三十七層ではいつも通り並木道を辿ってから南下、少しでも多くスノーオウルと出会えるように行動をする。ここでも三百グラムほどだが、羽根を手に入れることが出来た。行き帰りの少ない駄賃だが、これでも通るたびにかき集めれば布団一枚分には及ばずとも枕一つ分の材料にはなるだろう。
三十八層にたどり着き、さあここからが本番だ。三十八層は全面木で一杯のスノーオウル地帯。たまにスノーベアも混じっているが、近づいたら倒す程度にとどめておく。
ここからはひたすら西進し、スノーオウルを進行方向から見て前、右、左、と順番に雷撃を当ててスノーオウルをおびき寄せる。手元でドロップ品を確保するためにギリギリまで引き寄せてトドメの雷撃を当てる。ドロップが落ちる。場合によっては羽根も落ちる。その羽根が目当てだ。
流石に保管庫で収納は使えないのでバッグ越しにはなるものの、小走りで駆け抜けて移動時間を短くして次に、次に、とどんどん狩っていく。今日はいつもよりも二時間ほど早く来ている分だけ取れるスノーオウルの羽根の数も多いはず。
後は完全作業として没頭するのみ。さあ、どんどんしまっちゃおうねー。
◇◆◇◆◇◆◇
昼になり、大雪原のど真ん中でサンドイッチを頬張る。移動しながらでも食べられるのでもしゃもしゃと食べながら続けてスノーオウルを狩り続ける。飲み物は家で淹れてきたホットコーヒー。今はシンプルに腹が満たせればそれでいいだろう。ここまでで手に入れたスノーオウルの羽根はざっと四キログラム。午前でこれなら午後はもっと狩れるな。今日のところは目指せ十キログラムという所か。
あと六時間ぐらいはここにいられるから、その間にペースを上げてもっと狩っていこう。多分このだだっ広い三十八層の中、迷い込んだ探索者は居るかもしれないが、同じ作業を繰り返してわざわざループしてまで探索している奴は居ないに違いない。居たらそいつは……変態だな。
そう思って歩いていると、どうやら一ループが終わったらしく、階段まで戻ってきた。もう一ループいけるかな? 時間を見ると午後一時。どうやらいい感じの時間で帰ってきたようだ。これならもう一ループ進んで帰ってきて、時間と今日の収穫高を見てから考えても良いぐらいだな。よし、さあ次のループへ進もう。
◇◆◇◆◇◆◇
二ループ目、後ろをついてくる探索者が居たので注意をしておく。
「私、階段に向かってませんので注意してくださいね」
すると後ろを着いてきていた探索者グループが驚いて引き返そうとしている。
「階段から数えて、西に十本、北に十四本行ったところに三十九層への階段がありますから、早めに戻って数え直すのをお勧めします」
「そうですか、どうもわざわざありがとうございます。あの、グルグル回っていらっしゃるようですがスノーオウル狩りですか? 」
「はい、羽根を専属で卸す場所があるのでそこへの納品用ですね」
俺の発言でどうやら納得したようで、探索者グループはお礼を言って戻っていった。もう帰ってくるんじゃないぞー。次迷ったら救助は来ないからなー。
さぁ、一イベント……前もあったよな? これ。まあいい、続きをやろう。今日は一日でどこまで稼げるかのチャレンジだ。しっかり稼いで二回取りに来るところを一回で済ませられるように挑戦だ。たまにはこういうのもいいもんだ。
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段々方向感覚がおぼろげになってきたので、方位磁石を見直して方位を確かめる。うん、ずっと西に向かっているな。このまま西に真っ直ぐ行けばまた階段にたどり着けるはず。方向は迷ってないぞ。スノーベア君こんにちは。
今日は君の相手はするつもりはないんだけど向かってくるなら仕方ないよね、と雷撃で一発で倒す。熊胆が出たが、これも金額としては安いほうに入ってしまうんだよな。まあ出ないよりマシだし、今日一日何をしてきたか説明するのに役立つだろう。
ひたすら西に、西に、進み続けながら、前、右、左と木に向かって雷撃を放ってスノーオウルを呼び寄せ、掴まれそうになったところで雷撃で止めを刺す。今日はもう何回この雷撃を撃ったのだろう。数えるのを止めてからどのぐらい経っただろう。
七キログラムほど羽根を手に入れているので、そこにドロップ率を割って二回ずつ雷撃してるから……七百回は軽く超えているな。よくもまあ飽きずにやっているなと自分を褒める所だろう。
さて、もうちょっとでもう一ループが終わるはずだ。一ループが終わった段階で時間を見て、素早く帰って今日の成果を確認するというのもありだろう。
◇◆◇◆◇◆◇
二ループ目が終わり、時間は午後五時。もう一時間ぐらいはグルグル回っていられるな。今後はスノーオウルを狩る際はこのペースでやっていこう。早出勤もたまには良いものだな。体のほうの疲れは今のところ問題ないし、疲労困憊なら問題大ありだがただ歩いていただけ……いやそれでもそこそこ本来は疲れるものではあるか。
たまにだけ、たまーにだけやろう。これは毎日やるとメンタルか肉体かどちらかに蓄積がある奴だ。無理なく無茶なくご安全に、がモットーの安村文月コンビとしてはあまり褒められたものではないのだろう。芽生さんには早出勤遅退勤であることは黙っておこう。
明日も来ることだし、今日はこの辺で上がっておくか。今上がれば午後七時あたりには、つまりいつもの時間にダンジョンから出られる計算になる。その為の早出勤だったはずだ。スノーオウルの羽根もしっかり九キログラムほど溜まった。これだけあれば充分としておくか。
階段を上がり三十七層、並木道に沿って歩いて並木道のスノーオウルを一本一本処理しながら帰る。帰り道も三百グラムになった。次は三十六層、混んでれば三十分、空いてれば一時間かかる帰り道だ。出来れば混んでいてほしいな。
おっと、もし混んでいるさなか丸一日潜ってた割に荷物が少ないと判断され、スレッド辺りに書き込みをされる可能性を考えておく必要があるな。物陰でちょっと荷物を出し入れ。背中のバッグにはスノーオウルの羽根、両手には魔結晶が入っている、という風を装ってから三十六層に上がろう。
そのほうが変な噂も立たないだろうし目撃者は少ないほうが良い。目撃されてても両手いっぱいだけどスキルでモンスター狩ってた、という言い訳もできるぞ。
そう思いながら三十六層に入ると、そこそこの探索者のパーティーが見えている。そして、頭の上にはちょうどワイバーンが接近してきていた。せめてこれだけ狩って帰るか。
ワイバーンを雷撃でちょいちょいとつついて、ブレスを吐かせて地面に下ろし、地面についた時点で雷撃衝を当てて一発で消し飛ばす。固有ドロップは何もなし。まあこういう日もある。
そのまま他の探索者とすれ違いながら三十五層方面へ進む。人通りが多いため崖下で湧くダンジョンヴィーゼルと空中で湧くワイバーンには他の探索者が対応してくれているので、さっさとここは潜り抜けて早めに帰るのが吉だろう。
そのまま戦闘らしい戦闘もないまま、両手に魔結晶をぶら下げて三十五層へ上がった。三十五層ではすれ違うたびに「おじさんだ……」「潮干狩りおじさんだ、本当に居たんだ」「何してたんだろう? 」などの声が上がっているが聞いてはいるものの無視するような形で自分のリヤカーへ荷物を下ろすと、そのままリヤカーをエレベーターに入れて一層へのボタンを押す。
帰りは急いでないし荷物整理があるのでゆっくりと上がっていく。結局のところ、九千六百グラムほどスノーオウルの羽根を稼いでいたらしい。納品一回半分という所か。もう一回行って三回分ってところだろうな。どうやら年が明ける前から計算していた、年明け二回ぐらいでスノーオウルが切れるという予測は大体当たっていたことになる。俺の予測も結構当たるもんだな。
一層にたどり着いて退ダン手続き。そのまま査定カウンターで査定。四千三百七十三万円を受け取る。端数が出ないのは珍しいな、なんか得した気分だ。
さて、いつも通り振り込みをして熱い湯をもらってバスのダイヤ確認。帰りのバスにはまだちょっと時間があったのでコンビニへ立ち寄り、お菓子の補充をしておく。今日は家に帰ったら買い出しに行く日だったな。コンビニ限定のお菓子をいくつか見繕うと会計してバスを再び待つ。
バスが来たところで乗りこみ、定位置に無事座ると駅までそのままちょっとお疲れ癒しタイム。座って休んで今日一日こき使った足に慰労の念を送っておく。明日はどうするかな。一日七十二層にするか、七十一層でしばらく戦った後七十二層に潜るか。どっちでも結果が同じなら、七十二層に一日居たほうが儲けも大きくなるし、そっち狙いで行くか。
駅について電車に乗り換え家に着く。さて、早速自家用車で買い出しだ。今日買うのはコーラを箱でと、ミントタブレットの補充、それから食パンと卵。バターは前に買ったお高いのがまだ残っているので今回は無しだな。後は……夕食はまだ保管庫にいくつかデパ地下弁当が残っているのでそれで足りるだろう。一応タコ焼きを追加しておくかな。
会計を済ませて家に帰って、さあ何を食べようか。そろそろ賞味期限的に怪しくなり始めているであろう生ものを使った弁当は早いうちに処理はしていたものの、念のために全部取り出してチェックする。
すると、生ものこそなかったもののすし飯弁当に近いものが出てきたので、即刻温めて処理することを決断する。明日腹を壊さなければいいが、それ以外には危なそうなものはなかった。結果は今夜から明日朝にかけてという所か。どちらにせよ温めて殺菌できるとは思えないが、それでも温めないよりははるかにマシであると思うところだ。
ちんちこちんに温め直した弁当は本来の味わいとは違うものになったのだろうが、こちらも少々思っていたより長持ちしそうだと当て込んでいただけに残念だ。後は熱い風呂に入って眠るだけ。今夜腹痛で起きないことを祈ろう。
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