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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十一章:年度末に向けて

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1396:価格改定の表

 いつもの気持ちの良い朝だ。今日も快調、元気である。息子のほうも元気である。うむ、目で見て手で触ってその元気っぷりを確認できるのは良いことだ。この肉体をいつまで維持できるかは解らないがしっかりと体調管理と肉体維持は行っていこう。


 価格改定後、スノーオウルの羽根は百グラム当たり五千円の値下がりということになった。つまり、布団の山本への納品金額の価格交渉を行うタイミングでもある。今日は休みにして雑談を兼ねて布団の山本へ行こう。


 いつもの朝食を食べ終わった後、ネットでニュースを見て、せっかく新規B+になれたのにすぐさま価格が下がってしまって思ったほどの収入にならなくなってしまった、と嘆く探索者がニュースのコメント欄を荒らしていたが、それでも十分世間様に比べたら稼いでいるんだから文句を言うんじゃないとたしなめられている格好になっていた。


 なお、今まで溜めに溜めたグリフォンの爪とグリフォンの肉だが、それぞれ三十万円、十万円の値段が付くことになった。どうやらグリフォンの爪はその硬さを理由として切削工具の先端チップとして、または印鑑の素材などに使われる模様だ。高級ダンジョン製品としては既にワイバーンの爪で作られた印鑑という物が流通しており、その上位商品としての価値が認められた形だろう。


 グリフォンの肉については希少性とそのファンタジー食品であることを評価されてのこの金額、ということになった。十万円を唐揚げにして食っていたのか、と考えると恐ろしい話。でも美味しかったからよし。


 今日の昼食はまだ保管庫に残っている弁当から適当に選んで食べることにするか。これもそろそろ食べ始めないと賞味期限こそ過ぎないものの、美味しさの期限が切れてしまうことにもなりかねない。せっかく金を出してかき集めた弁当だ、美味しいうちに食べ終えてしまいたい。


 今回の価格改定で新たに査定してもらう予定の爪と肉についてだが、午前中搬出午後から探索という前回のようなやり方はせずに、芽生さんと二人で潜った時に徐々に出していく、という形で補っていこうと考えている。


 俺がソロで潜った間の分も芽生さんに行き渡ることにはなるが金持ち喧嘩せずとも言うし、気にせずに貢いでおこうと思う。最悪の場合芽生さんは四月からほぼ無収入のような形になるのだ、その分多めにもらっておいても罰は当たらないだろう。


 明日から芽生さんと潜る際に徐々に搬出していくとして何回かかるかな……四回ぐらいで済んでくれるとありがたいところだが。


 さて、時間になったし布団の山本へ連絡を入れる。開店時間はもう過ぎているので受付の女の人が出たが、安村と申しますと伝えると納品ですかとスマートに伝わったので、納品と価格交渉の両方ですのでお願いしますと伝えておく。


 いつも通り十五キログラムと六キログラムの羽根を社用車に積み込むと一路布団の山本へ。到着したところでたまたま駐車場で山本店長と目が合ったのでお辞儀をしておく。店長はすぐさま店員に声をかけて搬入人員を用意してくれたのでスムーズに手配が終わった。


 いつもの商談スペースに座ると、羊羹と熱めのお茶の手配が済んでいた。早速羊羹を一口で頂き、喉をお茶で潤すと、スマホで今回スノーオウルの羽根が値下がりしたことを報告する。


「……というわけで、百グラムあたり五千円の査定価格の値下がりが決まりました。そのまま五千円値下げ、という形でいかがでしょうか」

「そうですね、安村様の品質で毎回納入いただけるならば仰る通りにいたします。おかげさまでどちらの羽根も好調な売れ行きですので同じ品質でより安く、商品を展開できるようになればこちらも有り難いところです」


 すんなりと値段交渉は済んだ。本来なら店側から値下げを提示してくるのが普通だろうが、俺も人に言えない方法で羽根を刈り取っては集めているので、こっちから値下げ交渉をする。その代わりに俺と店との取引による利益の金額は変わらない、ということで落ち着いた。


 店側としてはこれを機に更にマージンも減らして……と行きたいところなんだろうが、こっちの羽根の品質で納品してくれる業者があれば別だが、おそらく存在しないのだろう、ここで下手に交渉を始めて逃すよりは現状維持で納品してくれることを願うほうなんだろうな。


 布団の山本にはあらかじめ、既に俺の稼ぎとしては非常に少なくなるところを納品のために時間を費やしていることを伝えてあるため、それを機会として羽根の納品業から撤退すると言われた時のダメージも考えてのことだろう。


 値段交渉は予想以上に素早く成立し、今後半年の見通しが立った。これで山本店長も売値を多少下げる、もしくは利益幅を大きくすることができるだろう。また、俺の羽根の品質で引き取り額がこれだけだ、ということを提示することで他の探索者との値段交渉にも有利に進めることができるようになるはずだな。


「ダーククロウのほうですが、太めの顧客を一つ抱えることが出来まして。おかげ様でそちらがひっ迫する、という可能性は現状の所無さそうです。スノーオウルの羽根についても持ってきてくださる探索者の方が増えてきてますので、そちらでも対応をさせてもらっております。もちろん、安村様ほど安定して量も質も持ってきてくださる探索者の方は今のところ居ないのが現状ですが」

「そうですか……ということは清州ダンジョンのほうから来てるんですかね。小西ダンジョンだとあまり聞かないものでして」

「かもしれません。まあ出自はともかくダーククロウの羽根であることに間違いはなかったですし、どこか新しいルートか、もしくはたまり場みたいなものを見つけたのかもしれませんね」


 ふむ、俺の知らない清州の五層か六層か、それとも八層か……いずれにせよ、俺一人で屋台骨を支えていかなければならない、というような前向きな姿勢は少し正してもいいということだな。


「受け入れ口がいくつもあることは良いことです。おかげで私も少し楽が出来ますよ」

「是非、これからも期待させてください。急遽必要となって頼れる相手は今のところ安村様だけですので最終受け止め口になっていただけると幸いです」


 やはり、ある程度は常に保管庫に入れておくことにしよう。二回分ぐらいバッファがあればいいかな。そうなると……近々もう一回か二回スノーオウル羽根を入手しに向かわねばならんな。芽生さんと潜らないときに済ませてしまって在庫として早めに持っておくほうが良いな。


 明日芽生さんと潜る約束がなければ今夜一晩夜勤で済ませてしまう、という手もあったがタイミングというのはうまくかみ合うときとかみ合わない時があるらしい。


「では、私は久しぶりの休みを満喫しに戻ろうと思います。本日はありがとうございました」

「はい、またよろしくお願いします」


 すんなりと情報交換もできたところで家に帰るが、新しいダーククロウの卸し元は気になるな。清州ダンジョンの……おそらく清州だろう。小西ダンジョンならばそれらしい話や大荷物を抱えたまま帰る探索者を見つけることができるはずなので、スレッドにも情報が乗るに違いない。


 それがないということは清州ダンジョンか、それとももっと別のダンジョンからわざわざこちらに納品しに来ているかのどちらかだ。可能性が高いのは清州だが……まあ、いい。俺の手間が一つ減ってのんびりダーククロウとスノーオウルを狩っていても問題はない、ということが分かっただけでも儲けものだ。その分だけ七十二層で存分に金稼ぎに徹することができる。


 家について弁当を温める。今日は四角い洋食弁当にしよう。洋食なのに丸みがないパッケージに頭も尻尾も付いたエビフライとソースのかかったハンバーグ、そして唐揚げ。唐揚げって洋食だっけ? と思いながらも食べるが、さすがに金がかかってるだけあって美味しい。特にハンバーグだと思っていたステーキがベターな食感だ。


 エビフライも真ん中から豪快にかじって尻尾と頭を残す。多分ここはお飾りで食べるようには調理されていないはずだ。そうでなくても、俺はエビのしっぽは残す派なので、頭も当然残す。胴体のきっちり衣をつけられ揚げられた部分だけをしっかりと味わい尽くす。


 唐揚げは……洋風唐揚げかと期待したが、普通の唐揚げだった。なぜ洋食に唐揚げを。もしかして、海を渡ってきたものはすべて洋食に入れるとかそういうのだろうか。


 小さいマスに入れられたマカロニのトマト煮のような箸休めも、漬物の代わりに使われているということなのだろう。箸休めとは一体何なのか。色々と考えさせられる弁当になったな。


 さて、食事を終えてまた考え出す。七十二層も一人で回れるようになった現状、七十二層を含めて午前中二時間七十一層、午後から往復二時間の七十一層と三時間の七十二層で五億に近いだけの収入を稼ぎだすことができる。もしお昼ご飯を七十層で取らないなら、五時間七十二層で戦えるので五億六千万ほどの稼ぎになる。


 この上で若返りらしいポーションが査定開始になればさらに収入は多いものになる。現状これが一番稼げると思います。若返りポーションが査定開始になることで七十三層以降のモンスターも視野に入ってくる。


 どこまで潜り込めるかまでは解らないが、芽生さんと二人なら七十五層を越えて七十六層でも探索は可能だ。現状七十六層が最もポーションの落ちが良い。保管庫に溜まっている若返りポーションの本数と、預けてある本数を考えると、ポーションの査定開始日には一回の査定における日本記録を大幅に更新する話になってしまうんだろうな。


 一応手元に数本残すとして、それでも……うん、去年の俺の最後のほうの稼ぎの一カ月分ぐらいにはなってしまうか。恐ろしい金額だが、ポーションが素直に今のペースの金額で推移してくれることが前提だ。


 ここで急にやっぱり倍額ね、となっても結局記録は更新してしまうことにはなるが、予想された収入よりは確実に少なくなってしまうので芽生さんがへそを曲げることは容易に想像できる。


 さて……今から何すっかな。もうちょっと調べもの……みんなが価格改定でどういう感想を抱いているかとかそういう方面で調べておくか。とうに稼ぎ場所は過ぎ去った場所だが、他の探索者にとっては今まさに挑んでいる場所であり、懐具合にはかなり来るはずだ。


 特に簡単に倒せて量も取れるカメレオンダンジョンリザードの革なんかは俺が取りに入った段階から毎回値下がりしているので、そろそろ何かしらの需要が生まれるか、供給と一致するあたりがどこらへんかは解らないがそこまでは下がり続けるんだろうな。


 ただでさえ【索敵】目的で乱獲されることの多いカメレオンダンジョンリザードだ。後は一緒に出てくるゴーレムから【物理耐性】が出やすいのがあり、二十五層から二十七層はいつも混んでいるらしいからな。


 それとトレントについては言うまでもなく、Bランク探索者にとっては最下層でありエルダートレントも出る場所であり、ケルピーと共にある程度の需要もあるし、馬肉ことケルピー肉は食品としての需要が高い。馬肉をどこでも新鮮に食べられて疲労回復に効果があるということで値段は高いながらも確かな効果が見込めることもあり、需要は落ちない。食品はやはり強いな。


 今回の値下げ商品の中にレッドカウの肉が入っていたのは少し驚きだが、それだけCランクが増えてきたからその分市場にも在庫があふれ始めた、ということだろうか。レッドカウ肉は高級品だ。値段を下げてもっと世の中に配給しても問題はないんじゃないか、という流れだろうな。


 結構な品数が値下げに入っているので、やはりボリュームゾーンはBランクに移行しつつあるんだろう。Cランクはもう一杯一杯ってところだろうな。田中君みたいに肉類だけを査定に通さずにかき集める探索者がいるように、バトルゴートの毛だけを集める探索者とかも居るはずだ。


 値下がりで割を食う部分はあるだろうが、その分バトルゴートの毛で編んだ服は世の中にあふれることになるだろう。バトルゴートツナギもまだ値段が高いものの仕事着としてあふれてきているという話も聞くし、探索者以外への波及は徐々に行われていると言っていいだろうな。


 後はトレントの実も値下がりしているというのはちょっと驚きだな。他の樹液や枝があふれているのは解るが、探索者にとってもそれ以外の人にとっても効果的であるトレントの実の値下がりで、疲労回復、魔力回復効果のある食品をもっと世の中に広めていこうという狙いがあるのだろう。


 とりあえずこんなものかな。とりあえずダーククロウの羽根の値動きがなかったのとスノーオウルが値下がりしたことだけ頭に入れておけばいいだろう。それ以外のことは追々……と、腹減ったな。夕飯のお弁当は何にしようかな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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新築マンションの入居者募集はどうなったのかな…
印鑑ははんこを押した結果できる印影のことで、はんこそのものは印章となります
ファンタジー素材で作られた印鑑とかかっこよくていいわねえ!
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