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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十章:新年

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1390:ついに出た

 昼食と腹ごなしのリポップつぶしを済ませると、ミルコにいつものお供え物をする。コーラとミントタブレットと新作のお菓子を供えて二拍パンパン。お供え物はシュッと消えていった。これで俺達が来てるからよく見とけよ、という伝言にもなるだろう。


 さあ午後の部開始だ、いざ七十五層に向かって進軍する。七十五層のマップはほとんどを歩き回ってしまったので、七十六層への階段の位置はかなり絞り込めている。七十三層と七十四層を軽く歩き回り、各階段で水分補給をしながら七十五層に到着した。道中は何もなかったのでカットだ。


 この七十五層、ボス部屋こそ確認されているものの今までとは違い、ボス部屋があるにもかかわらずそれなりに入り組んでいる。階段下りて、ボス部屋まで一直線、ボス部屋出たら次の階段までまた一直線、というわけではない。なんだか気合が入っている。


 ミルコもこれだけ入り組ませたらしばらくはここで時間を稼げるから良いかもしれない、とか考えながら作ったのだろうか。だとしたらそこは減点対象だな。どうせ作るなら隅々まで地図を作るし、その分早く完成させてここに長く潜りたい! と思わせるほうが大事なのだ。


 そういう点で見れば、長く活動するにも体力を温存するためにも【熱変動耐性】をパーティーメンバーが保持し続けることは絶対条件になる。今回の探索でそれが見つかるかどうかはわからない。わからないということにしておく。


 ねらい目はやはり実績のあるマグマゴーレムなんだろうが、同時に【物理耐性】を落としてくる可能性もあるからな。フレイムサラマンダーでもヘルハウンドでもいいからスキルオーブを落として、それが【熱変動耐性】であることを祈るだけだな。


 七十五層に下りるとすぐのところにいるヘルハウンド三匹。同時に襲ってくるので雷撃衝で一匹を吹き飛ばし、二匹目は芽生さんに任せ、三匹目を圧切で縦に切断。噛みつきかひっかきしか攻撃パターンがないが、魔法耐性はそれなりにあるらしい。ただ、それなりなので今の俺と芽生さんなら確実に一匹なら倒せるだけの出力がある。


「ヘルハウンドにも慣れてきましたね」

「七十六層になったら四匹連れになるだろうからその時は交互にかな」

「にしても、このわんこも魔結晶だけなんですねえ」

「魔結晶が一番搬出効率が良いと言っていたからな。ドロップ品のほうはあくまでオマケなんだろうし、ヘルハウンドがドロップする品物をイメージできない。犬の骨とか落とされてもラーメンのスープにすらできないしな」

「案外いい出汁が取れるかもしれませんが……まあ出ないものは仕方ないですね」


 そのままボス部屋の前まで歩くように道筋を進む。七十六層への階段もボス部屋を通り過ぎたその先にあるようだし、しっかり戦いつつ地図を完成させる作業に向ける。しかし、暑いなあ。


 まだサウナ効果は続いているらしく、汗がタラタラとヘルメットの内側に巻いたタオルを越えてあふれ出てこようとせんばかり。一回安全な場所でヘルメットを脱ぎ、タオルを絞ると汗が出る出る、そしてヘルメットを脱いでも被っても変わらないこの蒸し暑さ。


 経口補水液を充填しながら探索はしているが、毎回どこかで倒れそうになるとまではいかないまでも軽く目前が真っ白になりそうになる現象が起きるので、いい加減出てほしい。というかミルコ、出せ。


 そんな事を考えながらボス部屋の前までたどり着いた。ボス部屋は洞窟めいたマップには似つかわしくないそれなりに大きい、マグマゴーレムなら通れそうなぐらいの大きさの鉄の門をしている。


 触ってみたが、この鉄の門が何故かひんやりしているのがマップには似つかわしくないな、と初めてボス部屋の前に来た時に芽生さんと笑いあった。


 そのひんやりで少し頭を冷ましつつ、マップの左奥にあたる未踏破地域でマグマゴーレム二体とご対面。いつもの手口で倒すと、そこには光る玉がポロリ。これはもしかするともしかするか。望み通りの物出ろ……と念じながらスキルオーブを手にする。






「【熱変動耐性】を習得しますか? Y/N 残り二千八百七十九」

「やった! ……イエス! 」


 熱変動耐性のスキルをようやくゲット。ここまで体感長かったな。合計六回、今日も合わせれば七回の強制サウナに付き合わされた人生とも今でおさらばだ。光り終えたら涼しくなれると思うとこの光っている間が早くしろ、早く終われと俺の脳内がささやいている。


「お、ついに出ましたか。よかったですねえ。これで涼しいお仲間ですよ」


 ドロップをかき集めて待ってくれている芽生さんを横目に、発光が終わる。そして、頭の中のスイッチを入れた瞬間一気に周辺が涼しくなった。


「おおおお、空調作業服回したままエアコンの効いた部屋に入ったような感触だ。一気に涼しくなって暑さがなくなったぞ」


 ヘルメットの中まで全身が空調作業服に覆われたような感覚。つま先から頭のてっぺんまで涼しい。頭に挟んであるタオルが逆に暑いぐらいだ。早速ヘルメットを脱いでタオルを絞って乾燥させると、普通の水を出してタオルを濡らして顔を拭く。汗が混じった顔が綺麗になり、さっぱりとした。後はウォッシュ&乾燥で全身のケアはバッチリだ。


「よし、ここから挽回していくぞ」

「その意気です、とっとと階段見つけてしまいましょう」


 暑さの無くなったこの階層はもはや一層や二層を歩いているのとほぼ変わらず、モンスターだけが強化されていると考えれば非常に楽ちんである。あー涼しい。汗をかかずにマップを歩けるのがこんなに気持ちのいいものだったなんて。


 せっかくならあの肌寒い雪原マップでこれを出してくれていればもう少しテンポが遅くなってミルコもダンジョンを作る余裕があったかもしれないのに、もったいないことをしたな。


 気持ちいいばかりにテンションも上がり、テンションが上がった分火力も上がる。襲ってくるヘルハウンドを迎撃、消滅。アン・ドゥ・トロワ。良い感じに仕上がってきたぞ。


 でも、一応さっきまで汗をかいていた分は水分を補給しておいたほうが良いだろうな。念のため、周りにモンスターが居ないことを確認してから経口補水液を口に含む。これもまだ結構な在庫があるが、水分不足に陥るのは何も暑いからだけとは限らない。


 気づかないうちに脱水症状を起こすことだってあるのだから、ダンジョン探索には欠かせない一品としてリストアップしておこう。コーラと経口補水液。それとちょっとお遊びで買った飲み物。それときれいな水があれば事足りる。これも保管庫のおかげと言えばそう。ありがとう保管庫。


 さて、この先はまだ未踏破のゾーンだ。気分が一新されているおかげで気持ちよく回ることができるし、地図に汗も滴り落ちることがない。これは中々にいい。そこから十分ほど進んだところで無事に階段を発見できた。真っ直ぐ歩いて四十分、という所だろう。


「さて、七十六層への道はわかったことだが……そろそろ戻りの時間か、七十二層で稼いでから帰るか……」

「もしくはボスに顔合わせしていくか、ですねえ」


 とりあえずボス部屋の前まで戻り、ボス部屋の前にいたフレイムサラマンダーを倒して少しそこでシンキングタイムを取ることになった。


「今来ても後で来ても同じ……ですよね? 」

「そうだな、しいて言うなら今日はボスの姿だけ見て帰る、というのも有りだ」

「とりあえずボスを見てから考えませんか? それだけでも手に入る情報は大きいと思います」

「それもまた有りだな。とりあえず覗いておくか。いつもの流れならボス部屋の扉は開けたり閉めたり自由のようだし、ボスの顔だけ見て帰るという選択肢も取れるはずだ」

「じゃあ、顔だけ覗き込んでちょっと見ましょう。まずは見て、それから考えましょう」


 まず、ボスが何なのか、という所について確認することになった。鉄の門をそっと押して扉の中が見えるようにする。首だけをそこからボス部屋の中に入れて部屋の内部を観察する。


 ボス部屋の内部は簡素な石のフィールドだった。そして、その真ん中に鎮座するボスが……ゐた。


 赤い肉体と所々に鱗を持ち、そして立派な翼と角、そしてこれまた立派なしっぽ。ワイバーンやグリフォンよりもさらに大きな、巨大なトカゲが丸まって寝そべっている。


 どうやら、七十五層のボスというのはドラゴンに属する物らしい。いわゆる西洋風のドラゴンであり、中国近辺で言う龍ではない形のようだ。


 芽生さんと二人、確認してお互いの顔を見合わせて、コクリと頷くと、扉を閉めた。


「ドラゴン……でしたねえ」

「ドラゴンかあ。もっと九十層ぐらいに出てくるかと思ったけど、ここでドラゴンとは思わなかったな」

「あ、でもでも、鱗で完全に覆われていなかったですね」

「腹の部分はともかく、鱗は生えそろってなかったな。子供のドラゴンなのか? 」

「もしかしたらレッサーがつくのかもしれませんよ。それよりどうします? あれ絶対ブレス吐きますよ。うっかり当たったらスーツが台無しですよ」

「スーツもそうだが、【熱変動耐性】がどこまで通用するのかの試験としては良いかもしれないな」

「また余計なこと考えてますねこの人は。私スーツ焼けたら予備ないんですけど」

「じゃあ、予備を持ってきてその時にするか? 」

「うーん……もう一回来るのは面倒くさいですね。出来れば今日のところで終わらせちゃいたいなあという部分もあります」


 終わらせるだけの自信が芽生さんにはあるらしい。念のため詳細を聞きだしておこう。そのぐらいの時間的余裕はある。


「今日中に終わらせる、という点が気になる。まずは芽生さんの戦術プランを聞こうか」

「赤かったってことは火属性でしょうから、私の水魔法とは相性が抜群に良いはずです。それに、腹の部分や鱗の無い部分は耐久力がそれなりに低いであろうことが考えられますので、洋一さんの射出で貫ける可能性が高いです。そして、空を飛びそうになったら翼めがけて雷撃なり射出なりして翼を破いたら、ワイバーンよろしく翼を失って地面に落ちてくる可能性もこれまた高いです。後は全戦力をぶち込めば何とかなるんじゃないでしょうか」


 ふむ……なるほど、悪いプランじゃないことは解った。後は防御時、つまり攻撃されているときにどう動くかだな。初手はともかくとして、一端こっちの先制攻撃が終わった後は向こうのターンが必ず来る、と考えておくべきだろう。


「で、攻撃を同時にするタイミングはおそらくないだろうから、それぞれでお互い距離を取って近づいていって、ターゲットを取ってしまった方はひたすら逃げ回ることになる訳か」

「それはそうなるでしょうね。でもまあ、逃げ足には自信があるので大丈夫ですし、洋一さんも無事に【熱変動耐性】を入手したことですから、体の動きが暑さで阻害されることはないと考えてもいいですよね? 」

「それは……そうだな。芽生さんプランで行くのが現状持てる全て、とまではいかないがそれが限度だな。逆にこの手で仕留めきれなかったら今の我々では戦術プランの立てようがない、ということにもなる。人手が足りないか火力が足りないか、どちらにしろ二人で倒すには手に余るボスモンスターということになる。高橋さん達か結衣さん達か、応援を呼ぶ必要があるだろうな」

「だったら今試して、無理そうだったら撤退するって手もありますし」

「なんかこのやり取り、前もやった気がするな」

「ゴブリンキングの時、初回からこうだった気がします」


 思いだせば、まともに戦略を立ててボスに挑んだのはエルダートレントだけのような気がする。後は出会って何とかなれで倒してきたような……うん、基本的にはごり押しで攻めてここまで戦ってきてるな。


「またごり押しか……【雷魔法】も六重化されてることだし、リニア式射出の威力が上がってることを確認するしかないな」


 ボス戦前に威力の確認。イメージできる最大限の出力を作り上げて、リニア式射出をその辺の壁に向けてゴブリンソードをぶつけて試してみる。


 いつもの景気のいいパァンという音と共に、ゴブリンソードは勢いよく飛び出し、目視で確認することも叶わないまますぐそばの壁にぶつかり、ゴブリンソードはゴブリンソードではなく、よく解らない金属の何かに変化していた。


「これは、威力が上がってると考えていいのかな? 」

「原型保たないぐらいの推力を得ている、と考えればかなりの火力アップはされてるかと。これなら手持ちの武器全部放出して柔らかいところに刺さったところで雷撃衝を撃てば内部からのダメージにも期待できるんじゃないですかねえ」

「よし……いっちょ行ってみるか。こいつを撃ちこんでみてダメそうなら帰ろう。帰ってその辺のホームセンターでもっと先のとがった鉄筋か何かを仕入れて再戦だな」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
ゴブリンソード今どれくらい死蔵されてるのかねぇ?今更補充に4層に行くのも無意味だしなぁ( *¯ ω¯*)……スケ剣もあったか!最悪ダンジョニウムをそのままレールガンで射出でもいいか!
まさに(東洋)龍ではなくて(西洋)竜なんですねぇ 竜でも意思疎通できると倒しづらいのに大抵の場合話のわかる龍はなおさら(フラグっぽいw
これゴブ剣で貫通してあっけなく終わるパターンじゃない!?そうだとしたら不完全燃焼の芽生さんにポコポコ(通常一般人は即死レベル)叩かれたりして謝る羽目になりそう
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