表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十章:新年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1368/1381

1368:新年

 紅白が終わり、テレビを消す。そろそろ出かける時間でもあり、一年の終わりの時間でもある。


「さて、今年一年も随分お世話になりました。来年もどうかよろしくお願いします」


 二人に正座で三つ指ついてお礼を言う。


「そんなに畏まらなくてもいいわよ。私たちは出来るだけいつも通りでいるほうが良いと思うし」

「そうですねえ。しいて言えば私が就職してその後どうなるかがわからないことぐらいですか」

「そういえば最近、ダンジョンで芽生ちゃん見かけないケースが増えたけど何か私用? 」


 結衣さん達は充分な身体強化のレベルアップとスキルオーブ集めをしつつ、七十層にも顔を出すようになってきた。どうやら、スキルオーブは自分たちで出すよりも誰かが出したものをみんなで買いあさるほうが早いと見切りをつけたらしい。


「自動車学校に通ってますからね。三月中には免許を取る予定です。仕事で使うことがあるかもしれないということなので」


 芽生さんは今教習の真っ最中。ダンジョンに潜る時間と稼ぎのペースを考えると、その教習一回分で数千万円分稼げる時間の浪費をすることになるのだが、免許がないと仕事上色々と不便になる可能性があるのは頷けるし、免許が要るのはダンジョンも自動車も同じ。是非予定通りに頑張ってほしいところだ。


「結衣さんは時間からして、今日も潜ってた感じ? 」

「一応ね。今年は全員そろって大晦日まで頑張ってたところ。おかげで次のスキルオーブを買う見通しが立ってきたところかな」


 次は何を買うんだろう。やはりベースアップとしての各属性オーブなのか、それとも耐性オーブなのか。つぶしが効くのは耐性オーブだが、それぞれ各属性スキルオーブもそろそろ多重化を含める時期でもあるだろう。


 運が良ければ村田さんの【爆破】もそろそろドロップ品としての存在が出始めてきてもおかしくない所だ。スキルオーブの取引表には乗っているんだろうが、価格の基準が解らないからな。おそらく花園マップのボムバルサミナでないとドロップしないであろうスキルだから、レアリティも含めて高い方であると思われるな。


「とりあえず、今年の目標は無事達成されたことだし、来年は何を目標にしようかしらね。全員で安村さんの火力に追いつくにしても無理があるだろうし……まあぼちぼち考えることにしますか。まだゆっくりとしか六十九層を回れてない所だし、もっときびきびと戦闘を行えて確実に倒す手段を講じられるように……それが来年の目標ね」

「後はスキルオーブ頼みってところかな。相場も上がり傾向のようだし、その分だけ稼がないとね」


 結衣さん達は今年一年お金貯めとお金放出。俺は……何をしようかな。目の前まで来ているであろう七十三層から七十六層を歩き抜けることと、七十五層に居るはずのボスの撃破。これを芽生さんがまだこっちに居るであろう三月までに済ませたいというのが目標だ。


 しかし、芽生さんも車の免許の取得があるためにそうそう多く潜れるわけではない。そうなると俺が出来ることもそんなに多くはない。なかなか難しいところだな。


 近所の寺の鐘が鳴り始めた。どうやら日が変わって新年になったらしい。


「さて、お参りに行こうか。去年と同じところだけどいいかな」

「行きましょう。むしろそれが目的で今ここにいるというところもありますしねえ」

「私もそのつもりで来たのよね」


 目的は同じ、最寄りの神社への参拝。早速家をでて神社までの道のりを歩く。


「今年も洋一さんは一万円賽銭箱に入れるんですか? 」


 ニヤニヤしながら芽生さんがこっちに茶々と入れて来る。


「今回は小銭はちゃんと用意してある。散々デパ地下で買い物をしてきた分だけおつりとして受け取っておいたからな」


 小銭入れを確認したが、五百円玉が二枚と細かいのが色々。まあ、これだけ入れておけばありがたみはあるだろう。


「それは何よりですねえ。まあ、金額でありがたみが変わるわけでは無くて気持ちが大事ですからねえ」

「前回は二回お参りに来たからじゃないの? 今回は一回で済むから小銭入れごと放り込んでしまってもいいんじゃないの? 」

「流石に財布はちょっとな。まあ中身は全部入れるつもりではあるけど」


 小銭が多ければ多い分だけ今は預金手数料がかかるらしいからな。神社の負担を軽くするためにもここは高額保持者がいっちょ入れてやる必要があるだろう。


 神社に着き、参拝の列に並ぶ。どうやら今年もいつもと変わらない賑わい様の模様。早速手水を使い両手を洗い、口を漱いで参拝の列に並ぶ。芽生さんと結衣さんもそれに続いた。十分ほどで列は解消し、自分達の番。さて、何をご報告するべきか。


 去年一年無事に探索者として勤めあげることが出来ました。今年も引き続き探索者として勤めあげられるようよろしくお願いします……このあたりかな。


 賽銭箱に小銭入れの中身を一気にドバドバッと入れて、二礼二拍手一礼。ここの神社は鈴がないので鈴はならせない。だが、いつも通り今年も新年を迎えられたのは良いことだ。来年も無事にここに来れるように祈っていこう。


 さて、脇にあるテントでお守りと財布に入れておくお守りを買って……と、さっき小銭を使い果たしてしまっていたことにここで気づく。


 そして今年は後厄。厄払いに破魔矢も買っておこう。縁起にはそれなりにこだわるほうなので、色々と買い込んでおく。再び小銭が出来たので、この小銭も神様に奉納しておこうと、列を無視して横入りして小銭だけを入れておく。


 結衣さんと芽生さんはその間、焚き上げをやっている炎の周りで暖を取っていた。いつもならここで火の番をするついでにタバコに火をつけてボーっとしているおじさんがいるはずだが、今年は居ない。なんぞあったのだろうか。見慣れたものがなくなるのはちょっと心配になるな。


「お待たせ。いろいろ買ってきたから帰ろうか」

「意外と洋一さんは験を担ぎますね。やはり商売ごとだからですか」

「それもあるが一応後厄だからな。いらん厄にはとっととどっかへ行ってしまってほしいものだ。そのほうがダンジョンに集中できる」


 破魔矢を飾る場所はあったかな……後で家の中を色々探して風通しの良さそうな所に吊り下げておくか。


「結衣さんはこのまま帰るんですか? それともお泊りですか? 」

「流石に深夜でこの人通りで車で帰るのは厳しいものがあるから、今日は泊まっていこうかな。やらしい意味はなしで」


 ふむ、いきなり姫はじめ、という新年から疲れる出来事がなさそうなのはよいことだ。新年ぐらいゆっくりしないと俺も電池が切れてしまうかもしれないからな。明日の食事はトーストではなく弁当にするか。せっかく数があるんだしみんなで好きなものを選んで食べるということにしよう。


「私も泊まっていきますからね。たまには自分用の部屋をちゃんと認識する作業が必要ですし」

「そうか。まあ自由にしな。明日の朝はトーストじゃなくて弁当になるけどいいよね? 」


 芽生さんに確認を取る。


「弁当って何? もしかして色々買い込んできてたりするの? 」


 結衣さんから確認の質問が飛んできた。別に隠すようなことでもないので素直に答えておくことにしよう。


「するの。いっぱいあるから好きなものを選んでもいいよ」

「それは楽しみね。精々お腹を空かせて寝ることにするわ」


 家に帰ってきて、年始早々のお笑いのコントの番組や新春初笑いの番組が流れているのを確認すると、特に興味が湧かないので消す。


「さて、明日もいつも通り動くために寝るか」

「そうしましょう。おやすみなさい」

「おやすみー」


 それぞれの部屋に入っていき、寒っとか聞こえてきたが、エアコンをフルに活動させて温かく寝てほしいところだ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 一晩明けて朝七時。いつもよりも少しだけゆっくりした目覚めになった。普段日が変わる前に寝てるからその分後ろにずれた感じだろう。


 ゆっくり起き上がるとまずは全身のストレッチ。今日も体に違和感がないことを確かめると、ほれぼれするような肉体にぐっと力を籠め、天を突くようなポーズで全身の力を拳に集めて引っ張るように体のばねと神経を伸ばし、体の筋肉をほぐす。


「何やってるんですか」

「朝の体操かな。おはよう」


 芽生さんが通りがかってばっちりその姿を見られる。ちょっと恥ずかしいが毎朝のストレッチみたいなもんだと説明すると納得して部屋を出ていった。


 寝間着のままリビングに行くと、二人のお腹を空かせた最上級探索者がご飯が出てくるのを待っていた。


「おはよう……あけましておめでとう? 」

「おめでとう。二人とも、今年もよろしく」


 定型文の挨拶が終わったところで、昨日の夕飯と同じく弁当をドサドサッと出し、好きなものを選んでもらう。


「よくもまあこれだけ買い込んだもんね。お昼も夕食もこれで賄っていく感じなの? 」

「昼は自分で作ろうかなと。夜の食生活がコンビニ飯か中華屋で済ませてるのを改善する一歩になるかなと」

「まあ、仕事で疲れ切って帰ってきて夕食作るのもなかなか難しいだろうし気持ちはわかるわ……と、私これ」


 結衣さんは自分の弁当を決めるとレンジで温め始めた。芽生さんはじっくり見分けつつも、トンカツ弁当が気になるらしい。俺は幕の内にしようかな。焼き鯖が乗ってるのが気に入った。


「これもある種のおせちってことにはなるのかしらね。品目はともかく、長持ちして自分で作り置きが出来てるって意味では」

「そうだな……五十種類ぐらいあるし、おせち弁当と言ってもいいかもしれない。倍率が百だった前と違って今は二百まで効果が伸びてるから、その分長持ちするのは良いことだな」


 三人それぞれ違う弁当を食べながら、今日の予定について話し合う。時々おかず交換もしながらなので和気あいあいだ。


「私は完全にフリーだわ。探索も三日からって決めてるし、しばらく暇な時間を過ごすことになりそうね。なにしようかな」

「俺は二日から潜りに行こうかなと。早めに書類のほうをギルドへお願いして作成してもらうのもあるけど、流石に年末年始とはいえ日を空けすぎると腕が鈍るかもしれない」

「私は元日は昼から実家に戻ります。家族にお年玉用意してありますし」


 芽生さんから家族へのお年玉か。多分帯封付きの贅沢な奴をドンと置いて、これも俺と一緒に探索出来てるおかげなんですよーとか言ってそうではある。


 ついでに半同棲の形で暮らし始めることになるので……という話を暦さんとすることになるかもしれない。どんどん隅っこに追い詰められていく俺、という感じが出て来るな。まあ、追い詰めたのは俺の発言の結果なので自業自得ともいえるが。


「正月ってこれといってやることがないのが悩みよね。テレビとかも特番だらけだからやることもないし。二日間どうしようかしらね」


 結衣さんもノープランの休みらしい。今日も俺はノープランだったりするのでどうしようか悩ましいところだな。


 さて、俺はどうしようかな。朝っぱらからやることが思い浮かばない。たまにはスレに降臨してちょっとずつ下層の情報を流していくか。そういえば、グリフォンの爪と肉、年を跨いで溜まったな。


 これも価格改定の時にまとめて査定に並ぶ、という認識でいいのかな。溜めておいて後で徐々に積めるだけ積んで査定にかける、という方法で良いだろう。インゴットの時みたいに重さだけで一トンを超えるような品物ではないし、肉についても自分で食べる分は残しておきたいしな。


 とりあえずは爪から順番に査定していくことになるだろう。爪が終わったら肉、肉は二十個ぐらい在庫を保持ししていく形にしておけばいいだろうな。


 ノートパソコンを開いて、ネットをボーっと見始めると、後ろで芽生さんがドタバタし始めた。どうやら実家に帰る準備をするためにそろそろ出かけるらしい。


「私は実家に戻るために一回自宅に帰ります。明日はさすがに参加できませんが、また潜れる日にちをメールするので確認お願いします」

「わかった。皆さんによろしく言っといてね」

「それじゃあ行ってきます」


 芽生さんは元気に実家へ帰るために自宅へ戻っていった。結衣さんと二人きりになる。


「安村さん何かご予定は? 」

「なーんにも。本当にゆっくりした休日になりそうだ。今年の抱負でも考えておこうかな」

「今年の抱負ねえ。探索者の誰よりも稼ぐ……というのはもう去年達成しちゃった感じみたいだし、新しいものが良さそうね」

「まあ、目標はいずれ見つかるだろうさ。結衣さんはこっちの強さに追いつくとか言ってたっけ。応援してる」

「そうねえ……こっちのほうで一回勝てるようにはなってみたいもんよね」


 そういうとあぐらをかいている俺の足元に頭を寄せてきた。そっちのほうは俺も強いが芽生さんも中々強いからな。その抱負は達成できないかもしれないぞ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
> 五百円玉が二枚と細かいのが色々 = 10円玉と500円玉は避けた方が良い硬貨と言われています。 > 賽銭箱に小銭入れの中身を一気にドバドバッと入れて = 神様に対して罰当たりな行為と言われています…
> そろそろ出かける時間」 新年早々徘徊するおじさん > 二人に正座で三つ指」 交互に頭をフミフミされる土下座おじさん > 教習の真っ最中」 初めてのバック車庫入れを一発でピタリと入れる最深層探索…
>>近所の寺の鐘が鳴り始めた。どうやら日が変わって新年になったらしい。 鳴り始めはきっちり煩悩の数の108回突くところでは23時頃のところが多いらしく、旧年中に107まで突いて、新年に最後の1回を突…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ