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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十章:新年

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1369:お多度かけねば片参り

有給休暇は異世界で

可能な限りは定期、不可能なら不定期連載でやっていきます

新作のほうもよろしくお願いします

https://ncode.syosetu.com/n1971lz/

 そのまま一戦……とはならず、テレビとネットを両方見ながらいたずらに時間を過ごす。


「これならちょっと離れた神社にお参りに行く、とかでも悪くなさそうね」


 結衣さんが膝枕されたまま俺にそうつぶやく。


「そうだな、新年デートとして出かけるのも悪くないな。どっちが運転していく? 」

「いつも運転してるほうだから、たまにはそっちの運転で行こうかな」

「わかった。行先は多度大社でいいかな」

「神社の大きさとしては問題ないわね。多度へ行くなら伊勢も……と言いたいところだけどたくさんすぎる人ごみに紛れてまでお参りしようとは思わないわ」


 多度大社も結構混むんだけど、そのぐらいなら良い、ということらしい。早速車を出して、片道三十分ほどで多度大社周辺まで着く。ここからが長いんだよな。


「どうする?お昼食べてからついでに参拝させてもらう……ってかたちのほうがスムーズに駐車場は確保できそうだけど」

「流石にまだお店開いてないんじゃないかな? ……うん、やっぱりまだ開いてないわね。素直にここは駐車場が空いて入れるようになるのを待ちましょう」


 暖房はかけてあるので寒くはないが、外の風はそこそこ吹いている。参拝の列は駐車場まで伸びており、お参りするにはざっと一時間ぐらいはかかりそうだ。


「後一時間半ぐらいはかかるな。それが終わったらちょうど食事時ってところだ」

「じゃあその時こそウナギを食べに行きましょう」


 更に三十分待って、ようやく駐車場が空く。無事に車を停めると、駐車場まで伸びていた列に並び始め、後は前が進むのをじっと待つ。やはり人数が多すぎる分通行整理に時間がかかっているようで、境内に入る人数を制限しているようだった。


「これは並ぶな……並んで待ってるから気になる屋台があれば行ってきてもいいよ。この列で待ってる」

「そうね……ちょっとうろうろしてくることにするわ」


 結衣さんを放出して一人でじっと並ぶ。しばらくして、結衣さんは十円パンを二つ買って帰ってきた。


「はい、安村さんが縁が無さそうな話題のお菓子、十円パン」


 遠くから十円パンを見ると五百円と書かれていた。


「十円パンと言いつつ五百円するなら、最初から五百円の形のほうがよかったんじゃないだろうか」

「そういう変なことを言いだすと思ってたわ」


 そう言いつつ自分の分にかじり付く結衣さん。外側の味は……戦争になるアレと似たようなもんだな。だが、中身が違った。チーズだった。かなり伸びるチーズが入っていたらしく、びよーんと手元から延びるので適度な所で切る。


「ふむ……これは面白いな。チーズ以外にも種類あるの? 」

「ここの屋台はチーズとあんこだけだったけど、専門店に行けばチョコとかカスタードとか色々あるわよ」

「なるほどな……うん、これは中々面白い、いいチョイスだった」

「そう? ありがとう」


 長い列を待たされるというテンションダダ下がりの行為に対して一花を咲かせてくれた一品だった。こういうのもチェックしてたまには知識として入れておかないといけないな。


 境内前の階段を上がり、ようやく手水場までやってきた。十円パンを食べて手が汚れていたのでちょうどいい手の洗い所だ。流石に【生活魔法】で水が使えるからとその辺に水をばらまくのははた迷惑でしかないからな。


 しっかり口の中も含めて清めると、いよいよお祈り場までの数百メートルを何十段からの石段をふくめて上っていく。


 途中にもいくつか賽銭箱と配祀神があるので、一つ一つ巡っていこう……そう思っていた時期が俺にもありました。


「そうだ、小銭は昨日全部神社に奉納してしまったんだった」

「全部にお札入れていくつもり? 中々大盤振る舞いするわね」

「むむむ……ここは名残惜しいが、主神の前でお札を入れてそれでまとめてお願いしますということにしておこう」

「別にそこまでケチらなくても一財産あるのに」

「金額の問題じゃないことは解ってるんだけどなあ」


 配祀神の皆様、ごめんなさい小銭の都合で今回は主神様にだけお祈りしておくだけにしておきます。また今後お願いに上がる際にはよろしくお願いします、と心の中で祈りながら、一番奥にある本宮までやってきた。


 保管庫から万札を取り出すと、出来るだけ奥のほうに飛ぶように祈りながら投げ入れ、二礼二拍手一礼。よし、これで参拝終了。戻りは早く、あっという間に境内まで戻って来た。


「さて……お守りか。もう一つぐらい保管庫に忍ばせておいてもいいよな」

「何処かのお坊さんがお守りの数は装甲板の枚数ではないと言っていたような気がするわ」

「それでもあって安心するならそれもひとつってところかな……と」


 ふと目が合ったところに居たお守りの名前は「うまくいくお守り」という名前だった。


 うまくいく、何が?


 きっと何かがうまくいくんだろう。これを三人分買おう。三つ買うと、その場で結衣さんに一つ渡す。


「じゃあ、これは俺から。なにかがうまくいくことを願ってプレゼントだ」

「具体性が全くないけど、何かがうまくいくならなんとなくご利益はありそうね」


 駐車場まで戻って道を逆走し、すぐ近くのうなぎ屋へ入る。流石に昼前とあって、駐車場はそこそこ込み合っている。多分、後飯を食いに行くという理由をつけてそのまま多度大社まで歩いて参拝しに行っている客も居るんだろう。俺がそうしようかと考えたぐらいなんだから同じことを考えてる奴は十三人ぐらいはいるはずだ。


 店に入り二人席に通されると、どうやら元日はグランドメニューは無しで決まったメニューだけ調理してお出しする集中方式らしい。そのほうが注文が混乱しないし数をさばけるからだろう。せっかくなのでと大うなぎ丼を二人前注文。


「ふぅ、激しい人込みだった」

「参拝するだけで一苦労だわ。まだダンジョンに潜ってるほうがマシね」

「こっちは逆に人が居ないからな。今上層がどうなってるかはわからないがすし詰めという状態も解消されているだろうし、むしろ清州のほうが深刻かもしれないな」


 清州ダンジョンの二十九層辺りは混雑してるイメージが強い。BランクとB+ランクがそれぞれ移動しながら探索をしていく姿と、二十九層三十層でトレントを倒している様子を想像してみるも、そもそも清州のそのあたりの階層に潜ったことがないのでイマイチイメージがつかめなかった。


「清州から流れてきた顔なじみに会ったことはあるけど、エレベーターのおかげで楽になった分人口密度は上がったから、小西ダンジョンのほうがまだ動きやすいって話だったわ」

「その彼らは無事にB+ランクになれるんだろうかねえ? 清州ほど人口が多ければここみたいにノートで同道者募集ということにも連絡がつけづらそうだし、ローカルルールで他のパーティーが戦ってたら手を出さない、ぐらいの相互不可侵は組んでそうな気はするけど」

「そんな感じかしらね。まあお互いにエルダートレントとの戦いが始まった後で諍いが始まっても困るだろうしね」


 戦闘中に言い合いになってそっちに気が取られてる間にエルダートレントに絡めとられるなんて馬鹿なことはしないだろうからな。それにそういう事故が起きているなら俺のアンテナにも届いてるだろうし、それがないってことはうまく回っているってことなんだろう。


 もしかしたら既に攻略したB+ランクに手伝ってもらっての実績解除という手もありうる。そういうのもありだが、仮に俺にお鉢が回ってきたとして、彼らに出来る俺への報酬支払いというのはどういうものになるんだろう。ちょっと興味が湧くが、どっちにしろ俺の時給を賄うほどの報酬は用意されないんだろうな。


 しばらく雑談している間にウナギが出来上がったのか、二人の前に注文の品が出て来る。


「新年からウナギを食べるとはこれまた豪勢な昼食になったな」

「まあ、五分も働けば食べられるご飯だし、私たちにとって豪勢な食事って何なのかしらね」


 哲学的な話になってきた。時間でいくら稼げるかを考えると、高い食事がそのままイコールで豪勢な食事とは言えないんじゃないだろうか。


「そういう意味では多分自炊じゃないかな。自炊する時間ダンジョンに潜ればその分だけ時短になるし、時短ができるだけの時間働けば報酬として何千倍も高い金額で返ってくる。そういう意味では俺の作る食事は豪勢な食事と言えるのかもしれないな」

「それを毎回食べてる芽生ちゃんも豪勢な食事をしてると言えるのかもしれないわね。さていただきます」


 話もそこそこに、冷めないうちに食べ始める。うなぎのたれと、蒸さない関西風の調理法がそこそこにマッチしていて美味しい。蒸すか蒸さないかで関東関西で違いがあり、腹から切るか背から切るかでも違いはあるそうだが、美味しければどっちでもいいのだ、というのが俺の感想だ。


 稼ぎを気にすることなく腹いっぱいウナギを食べられる。これもまた一つの豪勢な食事ということになるんだろうな。今日はゆっくりすると決めた日なので今日の稼ぎは何をしようとゼロ円。ちゃんとお参りに行って無事を願って、それで安全にダンジョンに潜れるならばこれもまた回り回って収入のためになる。


 もし今日お参りしないことで何らかの事故や事件に巻き込まれて探索が出来ないということになれば、それはお願いをしなかった分の損失として計上できるので、今日のお参りは予防線みたいなものだ。


 きちんとお参りをして安全祈願をして、それでいて無事に毎日が送れるならば無駄な時間と出費ではなく、危険から守られていたからこそこれが出来た、と信仰心を一つ深めることにもなる。決してお参りしなかったから悪い結果に終わったと考えるではなく、良い結果に終わったからこそのありがたみ、という所だろう。


 しかし、美味しいなこれ。せっかくならひつまぶしにすればよかったか。まあ、俺がひつまぶしで結衣さんが丼では食べる時間もかかるだろうし、結衣さんもこの後の予定が……そういえばないって言ってたな。この後どうしようかな。


 昼食を食べ終わり、お茶を飲みながら少し休憩。


「さて、この後どうするね? 」

「家に帰って食材の確認と必要なら買い出しかしらね。家まで送ってもらったら後は帰るわよ。安村さんも……そういえば、安村さんって今だに呼んでるわね。せっかくの彼女なのに」

「二人して洋一さん、と呼ばれるとちょっとなあ」


 呼び方か……確かに、みんなに安村さんと言われるのは悪い気はしないが、二人ともに洋一さんと呼ばれるといつか勘違いして反応しそうだから困る。


「じゃあ……洋ちゃん」


 背中にピクッと来た。その呼び方は想像の範疇外だったぞ。


「そんな呼び方をされたのは両親以来だな。ちょっとぞくっとするものがあった」

「ふふっ、よ・う・ちゃん」

「やめてくれ……とは言わないが、そう呼びたいなら今後そうしてくれ」

「考えておくわ」


 会計をして家に帰る。帰りの車の間、結衣さんはずっと洋ちゃん洋ちゃんとうわ言のように呟いてはシートベルトを抱きしめていた。そんなに呼び方が気に入ったんだろうか。


 家に着いて、結衣さんが自分の車に乗り込む。


「じゃあまたね、洋ちゃん」

「じゃあまた……次会うまでには慣れておくようにするよ」


 結衣さんは帰っていった。さて、ここからは一人の時間だ。何しようかな。夕食は色んな弁当からその時気に入った一食を選び出せばいいし、完全な暇。


 こういう時はネットの海に潜るに限る。新熊本第二ダンジョンでは早くも新年会が始まっており、十四層で酒の振る舞いが出ているらしい。酔っぱらって探索するべきではないと思うが、まあ新年だし飲む奴は飲む。頼むからけが人だけは出ないようにしてほしいものだな。


 変わってこちらは清州ダンジョン。どうやら四十九層周辺の情報が出回り始めたらしく、【毒耐性】が必要だという情報がそのままスキルオーブの成り行きを見守るスレにも伝わっていく。これは今後【毒耐性】は徐々に上がり続けていくんだろうな。もしくは市場から一時的に消えるかもしれない。


 俺と芽生さんも、【毒耐性】が一枚で足りるのかどうかについては一考の余地がある。【毒耐性】二枚刺しでどこまでの毒に耐えられるようになるかも気になるが、とりあえず持っててよかった、というところだろう。パッシブスキルは覚えるに限る、という言葉がそろそろ独り歩きし始めて腕立てやスクワットまで始める時代に突入するのだろう。


 さて……今後どんなスキルオーブがドロップされていくのか。そしてこっちの手元に来なかったスキルオーブドロップはどんな活躍をしているのか。そういうのを探してみるのもいいかもしれないな。ちょっとネットの海に潜って、時間が来たら夕食を食べて明日の準備をして寝よう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
先にお守り買ってから行けばお釣り貰えたのに何故参拝を優先したのか?
> チーズだった」 ウホっと言うおじさん > いいチョイスだった」 キリッとした顔で肩を叩いて最大限の賛辞を送るおじさん > 小銭は」 割り込みの報いを受けるおじさん > 配祀神の皆様」 詳細は…
次までの間に 誰に呼ばせて慣れるんだろう
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