1349:新熊本第二ダンジョントライ二日目
ダンジョンで潮干狩りを
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ホテルを出てコンビニで昼食を補充し、バス停に向かう。バスはダイヤどおりに十分後に来た。どうやら昨日の帰りのタクシーほど早くはないが、ゆっくりと各停留所を経由して新熊本第二ダンジョンに向かっているらしい。
今日は七層からのトライだ。事前情報はしっかりインプットしたし、中からアクセスすることもできる便利なダンジョンでもある。この先は何処まで行けば他の探索者に会えるようになるのかも気になる所なので徐々に人の活気が増えていくと嬉しいな。繁盛しているダンジョンはそれだけでも寂しさが募らない分楽しさが上回る。
昨日もだが、今日はいくら稼いだかを競ったり儲かったかどうかを確認する日ではないので、儲かったらラッキーぐらいの気持ちでいこう。
畑と家と森しかない場所を抜けて山間を抜け、そしてダンジョンに到着する。どうやらダンジョンが出来てから切り開かれたのか、地肌が露出している斜面が見えている。そう多くはないが駐車場もあるので、タクシーを使わなくてもここでこっそり車を出して乗って帰る、という選択肢もありなのだが、出すときと仕舞うときに人の目があると困るのでダンジョンの行き来に関して保管庫の中の社用車を使う機会はないだろう。
長閑な道をブロロロと走るバスに対して、同業者と思われる集団が一緒に乗っている。朝一でダンジョンに行く層はこのバスを使わず直接車で行くか、もしくはもっと早い便を使うんだろう。小西ダンジョンよりも交通の便がちょっとだけよく、きちんと駐車場を確保できている新熊本第二ダンジョンはその点では恵まれているとも言えるな。
しばらくバスは走り続け、終点であるらしい熊本第二ダンジョン前に到着する。バスに乗っていた人たちはみんな降り、そして夜間潜っていたらしい人たちが代わりに乗り込んでいく。ちゃんと往復運賃を稼げるのはそれなりに栄えている証拠だ。もしかしたら微妙に赤字かもしれないが、路線を維持してくれているバス会社に感謝しようと思う。
さて、二日目である。昨日のうちに俺が新熊本第二ダンジョンに潜り込んでいるのはダンジョンマスター達の視点から共有されているであろうから、もしかしたら見ていなかったかもしれないガンテツにも伝わっていることだろう。後はガンテツが酒が我慢できずに飛び出してくるか、特定の階層……つまりセーフエリアでのんびり会話ができる状態を作り上げられるか、そのへんに関わってくるだろうな。
昨日と同じ手順で入ダン手続きをして、リヤカーを借り受ける。ここは小西ダンジョンよりもリヤカーがたくさん置かれている。つまり、荷物を大量に持って帰ってくることが前提のダンジョンになっているってことでもある。これはガンテツがダンジョンの設計時点で考えていたことでもあり、その荷物のやり取りに便利であろうことから、階段もスロープ付きの緩やかなものにされていることも相談の時点で決まっていたこと。
実際に使ってみて不具合やリヤカーに押し出されて階段を滑り落ちるというアクシデントもなかったので、充分に安全率を考えて設計されているものだと言えるだろう。
さて、まずはちゃんとエレベーターが使えるかどうか実験だ。帰りは大丈夫だったので行きも大丈夫だろう。燃料の魔結晶を入れると、俺と芽生さんとリヤカーはちゃんと七層まで行けるようにランプがついた。これで帰りも安心だな。
五分ほど待って七層に到着し、再び七層の空気を補充する。やはり昨日は夜中もいいところで人が少なかったのであまり人の動きがみられなかったのだろう、今の七層はそこそこ人が居る。そして、明らかに場違いというか見慣れない顔というか、そういう意識を向けられているのもわかる。
やはり地元のダンジョンでスーツというのは浮くのだろうし、こっちではあまり流行らないか、仕立てをしてくれる店がないのかもしれない。そういう意味でも珍しいコンビだとは思われているだろう。
七層の地図を頼りに八層への階段へ行き、階段を下りる前に芽生さんに確認。
「大丈夫? 」
「多分次、迷宮マップですよねえ。地図もありますから問題ないと思います。モンスターもどうやら見覚えのあるモンスターのようですし、強さが違う可能性はありますがまだまだ余裕はあります、大丈夫です」
力強い返答を聞いて、そのまま階段を下りていく。階段を下りた先は見覚えのある迷宮マップ。まだ八層だというのに十三層マップが出てくるというのが若干の混乱を催すが、ここはそういうマップなんだ、と自分に言い聞かせて道順通りに進む。
すると、早速スケルトンとスケルトンネクロマンサーのセットが出てきた。このスケルトンは天然かな、養殖かな。考えてる間に芽生さんがスケルトンネクロマンサーに近接、一瞬のうちに倒してしまう。そのままスケルトンも倒すと、両方とも魔結晶に変わった。
どうやらここのスケルトンネクロマンサーは魔結晶を落とすらしい。真珠が食べ物じゃないからか。いやでも内服して薬として扱う場合もあるんだから食べ物と言えば食べ物……いやここはガンテツが食べ物と判断したものが落ちるマップなんだから、真珠が確定で落ちない以上食べ物ではないんだろうな。
そして、一緒に居たスケルトンも魔結晶を落としたことから、養殖ではなく天然ものであったことが分かった。やはり周りに探索者が居ないとスケルトンネクロマンサーは召喚術を使わないのは共通しているらしい。もっとも、【隠蔽】のおかげで探知範囲が狭くさせられている分、召喚までにかかる時間が長くなり倒しやすくなっているのもあるんだろう。
そのまま道順に沿って迷宮マップを歩く。モンスター密度はそこそこ。小西ダンジョンといい勝負というところだ。そして肝心のドロップだが、やはり前情報通りキノコであった。
頭粒のそろって真っ直ぐに伸びたエノキタケやしっかりと傘の開いて食べ応えのありそうなエリンギ、一本なりの巨大なシイタケ、それぞれが自己主張をしつつもすべてが同じ形でドロップされている。ここでてこずると山盛りのキノコを運び出すことにもなりかねないからな。出来ればほどほどの戦闘で済ませておきたい。
「キノコとかネギばっかりですね」
「ガンテツにプレゼンした時も結構色々キノコを渡したからかな。まとめてこの階層で出す、という形で収まったみたいだな」
「迷宮のキノコって自然のキノコよりは安心できそうですが、死体に生えたキノコというイメージがあるのであんまり口にしたくない気がします」
「まあ、気持ちは解らんでもないが、綺麗にパッキングされてるしその点は大丈夫だと思うぞ。流石に生で食ったら腹をこわすどころじゃないだろうけどな」
キノコの生食はダンジョン産とは言え気が引ける所だ。ちゃんと火を通して加熱して、菌らしきものを熱で殺し切ってから食べないと腹を下すどころじゃなく、最悪病院直行コースだ。そこのところを案外わかってない人が最近増えているらしい。怖いことだな。
キノコはさておき、八層を進んでいく。縮尺から考えるに、五十分ほどで八層は抜けられる様子。小西ダンジョンより広い分だけモンスターとの出会いも多いし魔結晶も貯まっていく。今のところ魔結晶は背中のバッグに入れてそこから保管庫に詰め込んでいるので問題ない。
しかし普通に八層から十四層まで歩き抜けるには運搬についてはそれ相応の苦労があるんだろう。もしくは二パーティーで合同で抜けていく、なんてこともしてるかもしれないな。
見慣れたマップを歩いていて少しほっとしているが、モンスターはどうやらこの二種類だけしか出てこないらしい。次のマップに行けばちゃんとスケルトンアーチャーもいるらしい。今更あの魔法矢を受けてダメージを受ける可能性は低い。物理耐性も魔法耐性も二重化して防御のほうをきっちり固めているので、服にダメージが入らない限りは問題ないのでボーナスキャラクターのようなものだろう。
八層を歩き抜け、九層に入る。九層も迷宮マップ。相変わらずの謎の光源が明るく照らしだしてくれている。【採掘】持ちがここまで潜ってきて明かりの原因である謎のランプを破壊して持ち帰って解析、なんてことはしないんだろうかな。他の探索者や専門の機関がそれを研究しだすのも手段としてはありで、踏破する予定のダンジョンだからとあちこち破壊して回るのも中々面白いかもしれないな。
九層では三種類のモンスター、つまり小西ダンジョンで言う十六層が担当しているスケルトン、スケルトンネクロマンサー、スケルトンアーチャーが揃ってお目見えするいつもの行事が始まった。流石に三種類全部をどちらかに任せるのは荷が重いので、モンスターが探知範囲に入った時点でリヤカーを下ろして戦闘に参加する。
今のところ芽生さんは朝食をしっかり取った分、カロリーを消費するべく奮闘しているが、ちょっと疲れた段階で交代してもらって俺がカロリーを使う番にしてもらうかな。
九層から十層に関しても四十五分から五十分ほどで抜け切れる距離らしい。戦闘に手間取ってしまえばその分だけ長くなるだろうが、手間取るどころか一方的に瞬殺してしまっている現状だと、四十分から四十五分ほどで到着できそうな気がしてきた。なんだかんだで小西ダンジョンの復習をしている気分になってきた。
「うーん、真新しさより懐かしさが先に来るな。そういえばここで随分苦労したなあという思い出がよみがえる」
「今回は自分たちで地図を作らなくていい分気が楽だから良いんですけどね。先人の知恵をうまく使って楽していきましょう。昨日もですが、今日も収入は二の次で良いです、とっとと仕事終わらせてガンテツさんに会って、それからたっぷり旅行を楽しみましょう」
芽生さんの中では今日中にガンテツに会う、ということで確定事項らしい。十八層から先は地図もないから進捗が怪しいんだが、たどり着くまでに精々他の探索者に出会って道を教えてもらえるようになることを願っておくことにするか。
九層の曲がりくねったいやらしい通路を抜けつつ、曲がり角ごとに現れている骨たちを倒しながら進んでいく。食品のドロップ率は三割ぐらい、というところか。キノコだけこんなに集まってもキノコ鍋をする以外に使い道はないんだろうが、それでも食えるだけましだと考える。
それとももっと違うことを考えるのだろうか。まあ収入としてはあまり美味しさは無さそうだな、というのが分かる。製品として優秀なのは認めるし、所詮キノコと言えど食卓に色を添える存在ではある。すき焼きにするにしろキノコが入ってればそれだけでも旨味がしみ出してきて肉も一段と美味しくなる。後、揃ったネギは中々に彩りを整えてくれるし、白菜も最近は値段が乱高下し気味なので持ち帰るには質量があるが食べ応えはあるだろう。きっと甘いはずだ。
今日持ってきた食材のほうも、キノコの種類を増やすものがあるし、高級キノコは中々に金になることは間違いない。そしてダンジョン産が売れれば売れるだけダンジョン産のキノコが人気になり、自然の中のキノコは環境が保全されていく。自然との共生という意味でも、ダンジョンから出てくる食材にはそれなりに価値が見込めるだろうな。
九層にもいくつか小部屋があるが、今回は小部屋を通らなくても真っ直ぐ道だけを進んでいけるらしいので、小部屋の中でカタカタとおしゃべりをしていてこちらに気づかない骨たちはスルーしていく。いくら楽に倒せるとはいえ先は長い。今日一日で十四層まで行くならまだそれで済むだろうが、今日の目的地は二十一層、一日で一気に十四層渡り切る強行軍だ。
その分朝も早めに出てきたし、夜も日付が変わるギリギリまでかかるだろうことを計算に入れての行動となる。いっその事リヤカーごと保管庫に入れて走って進みたいところだが、所々で他の探索者に出会うのでそれはちょっと止めておきたい。やはりリヤカーを置き去りにして背中のバッグだけでやり取りするほうが素早く行動する為には大事だったかもしれないな。
完全に収入を捨てていきたいところだが帰りの運賃は欲しいし背中のバッグにもお土産は欲しい。中々難しい所だな。このキノコ類も本来はオマケで、この階層のメイン収入は魔結晶なんだろう。魔結晶を搬出させて魔素を拡散する、というダンジョン自身の目的は忘れていないらしい。
九層も歩き切り、十層の階段が見えてきた。目の前にはスケルトンが四匹。どうやらこれが最終の戦闘になりそうなのでリヤカーを置いて戦闘に入る。芽生さん一人に任せることもできるがそろそろ俺もまともに運動したい。リヤカーの三分の一ぐらいはキノコで埋まってしまったのでこの後のドロップ品が小さくて価値のあるものであることを祈りながらスケルトンを倒し、階段を下りた。
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後毎度の誤字修正、感謝しております。





