1328:お土産渡し
ダンジョンで潮干狩りを
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時間になり、七十層へ戻った。帰り道の最後のサメを忘れていて油断するということもなく、問題なく戻ることが出来た。今日の目的はほぼ達成されたので後は自由時間。午後も七十一層に潜ってもいいし、六十九層を素早く巡ってもいい。自由っていい響きだな。
さて、お昼ご飯に入る前に、先日の松本土産を結衣さん達に渡しに行ってみよう。居なかったらまた後日でも良いし、居たらその場で渡して……荷物になるだろうか。荷物になるならまたそれはそれで後日か、ダンジョンから出た後にこっそり渡せばいいだろう。まずは居るかどうかの確認からだな。
車でエレベーター横まで移動して収納。一階層分の燃料を入れて六十三層をポチと押す。五分ほど待って六十三層に到着し、リヤカーを確認すると確かに誰かがいるという目印の、リヤカーが置いてある。流石に新浜専用とは貼り付けてないのでもしかしたら高橋さん達かもしれないが、その時は高橋さん達にもお土産を配ろう。
エレベーターの位置から結衣さん達のテントを目指して歩くと、騒がしさと料理を作っている良い匂いが立ち込めてきた。これは結衣さん達で確定だな。高橋さん達はもうちょっと静かに黙々とレーションを食べているイメージがある。今度お願いしてレーションを分けてもらって試し食い、というのをしてみたいものだな。
平田さんが俺に気づく。向こうから手を振ってきたので手を振り返して応答。向こうは元気にやっているらしい。いいことだ。
「どうしたんでっか? 一人で食事が寂しいからこっちへ来たとかそんなんですか」
「先日松本までスキルオーブを受け取りに行って来たからお土産配ろうかと思って。ご飯はついでかな」
「また出張ですか、毎回もらってばっかりでえろう悪いですな。こっちも先日スキルオーブの取引はあったんですけど清州やったんですわ。久しぶりに懐かしい顔に会いましたわ」
どうやら知り合いのパーティーとのスキルオーブ取引になった、ということらしい。それはそれで向こうは貴重なスキルをこっちに手渡したってことにもなりそうだが、そこは黙っておいたほうがお互いのためだと無言で取引したらしい。
「これで残るはあと二つ、【隠蔽】と【索敵】が揃えば安全な六十九層の旅が出来そうで安心ですわ」
「ご飯出来たよー」
「わーい」
ご飯に群がる欠食児童たち。こっちもご飯を出すか。炊飯器と鍋をそのまま取り出すと、深皿にご飯とシュクメルリを乗せて食べ始める。
すると、ニンニクとチーズの匂いに誘われて向こうのメンバーが一瞬こちらを見る。
「元々一人で食べる予定だったから匂いに関しては気にしないことにしてたんだが、毒かな? 」
「そっちのニンニク入りシチューも美味そうですな。ちょこっとだけ、指先だけで良いから味見したいところですな」
「まあ、いつも二人分ぐらい作ってるから全員が満足する分はないけど、お分けする分ぐらいならあるよ」
「いいの? 食事が足りなくなるけど」
「その時はおやつなりなんなり入ってる物を食べるから良いよ」
皿を五人分出すと小分けにしてシュクメルリを分配して渡す。ついでにお土産の蕎麦とお土産をいくつか出して、今好きなように摘まめるようにしておく。
「今日は賑やかでいいわね」
「まあたまにはね。とりあえず人数分の蕎麦と……後小分けのお菓子はみんなで食べよう」
「とりあえずこっちからもおすそ分けってことでこれもどうぞ」
結衣さんから焼きうどんを分けてもらった。渡した分に比べればわずかに少ないが、途中でお腹が空くことはないだろう。さあ、みんなで食べてそこそこニンニク臭くなろう。
「豚肉のシチューですか。これはなかなかいけますな」
「シュクメルリっていうジョージア料理の更に俺風アレンジだからまあ豚肉のシチューと言ってしまえばそうなるか」
「ほう、そんな名前でっか……そういえばどっかで聞いたことありますな」
「チーズが良い感じにとろけていていいですね。しっかりお腹にも溜まりますし暖まりますし……しっかり具材の食感が残ってて味も美味しいです」
横田さんは割と好みらしい。個人の好みまでは覚えておくことはしないだろうが参考にはしておこう。流石に新浜パーティー全員の好みを聞いて回ってそればかり作るのでは難しいだろうから、多少の好みの差は考慮に入れないんだろうな。人数分作ることを考えても難しいだろうしな。
「そっちの焼きうどんもしっかり炒められてて美味しいな。ちくわの食感もいい。後醤油の程よい風味がなんともいい」
「そう、ありがとう」
結衣さんはそっけない態度でかわすが、口元が少しニヤついている。うむ、反応はちゃんととれたということでいいだろう。ちゃんと褒めるところでは褒めておかないとな。
焼きうどんにご飯にシュクメルリという統一感のない昼食だが悪くはない。それぞれ食べて満足した後、お土産の個包装のものをそれぞれで分ける。蕎麦は帰りにまとめてリヤカーで運んでいくことにしたらしい。確かに探索中に持ち歩くものではないしな。
「それで、松本まで行って何のスキルオーブ買い付けに行ったの? 」
「【雷魔法】。向こうも新潟の北のほうから来たらしくて、中間点の松本で取引ってことになったんだ」
「松本ダンジョンで出たなら清州で取引でもいいんじゃないとは思ったんだけどそういう理由で松本までのこのこ出かけていったわけね。で、無事に取引は終了したと」
「今回はね。前回は多重化に失敗して途中でキャンセルされちゃったからびっくりしたんだよ」
結衣さん達に、五重化以上の多重化には相当な熟練度と使いこなし、威力アップや持久力アップなどいろんなことを試してみた結果うまくいったことを話しておく。うっかり五重化まで上げてしまってそこで詰まらないように、という警告の意味もある。
「また知っちゃいけない話が舞い込んできたわね。その件知ってるのは芽生ちゃんと私たちだけってこと? 」
「一応真中長官も知ってる。そのぐらいだからまあ、あんまり騒ぎにはならないだろうし、金を使ってそこまで見せびらかせてスキルを覚え回るような人はそう居ないと思うからそこはちょっと安心してるかな」
冷めやすい焼きうどんを先に完食し、シュクメルリを食べる。まだ充分に温かいこれを丁寧に味わう。うむ、チーズはもっと足しても良かったな。次はもっと俺の胃袋に合うシュクメルリを作ろう。
「まあ、何にしろうまくいって良かったわね。これからはソロで六十九層を今まで以上のスピードで回れるようになるってことなのかしら」
「午前中は七十一層を巡ってみたけど、今のところは問題なかったかな。午後も七十一層をゆっくり回って体に馴染ませていこうと思うよ」
その発言に全員がちょっと引き気味になる。流石にソロで七十一層で回れるのは異常火力なのだろうか。芽生さんでも出来なくはないとは思うんだけどな。少なくとも二人できる者がいるならそこまで引く必要はないと思うんだけどな。
「うちのパーティーの今年の残りと来年の抱負は戦力強化ってことね。追いつくのは難しそうだけどせめて五人で肩を並べるぐらいにはならないと」
「その為にもスキルオーブを積極的に買い求めるか、ひたすら戦うかしないといけないですね」
「うーん、僕らも相当強くはあるはずなんだけどな。安村さんのおかげで強くなった印象が薄れるというか。目標が高いと色々と面倒もあるけど、少なくとも慢心しなくて済むのは良いことかな」
慢心か……俺も六重化したからと言って慢心してはいけないな。七十二層も一人で回れるようになればもっと収入も増えるだろうし、その先、七十三層から七十六層が出来た時には火力不足や相性の悪さでうまくいかない可能性もあるんだからそれを考えたらきっちり戦っていかないといけない所だな。
「ふむ……俺も慢心せずに自己研鑽に努めなくちゃいけないってことか」
「安村さんがそれ以上強くなって何を相手にするのよ」
「例えばリッチ単独撃破とか、七十三層以降のモンスターに後れを取らないようにとか、色々かな。次のマップが出来たらボスは居ることになるし、ボスに有効打を与えられないならそれはあんまり意味がないなと」
実際七十二層にはまだ単独で戦うことが出来ていないのは確か。そういう意味で強さというものを追い求めるにはまだまだ伸びしろはある。伸びしろがあるということはそのまま楽しみがまだ引き続きあるということになる。
「現状では満足できないって感じですか。今のままでも充分お強いのに」
「まだまだかな。俺としては一日七十二層をグルグル回り続けられる持久力を手にするまでは、きちんと自分の力を御しきれているとは言い難いと考えてるからね。とりあえずしばらくは七十一層、七十一層をしっかり回ることが出来たなら次は七十二層、と潜れるところを順番に増やしていきたいね」
どうやら、みんなは俺の背中を見てついて来ようとしているらしい。その俺が自分の限界を見たくて色々深いところで模索しているもんだから中々近づけない、という所だろう。戦力的には……悪くはないとは思うんだよな。ガイド付きとはいえ七十層までは潜れているんだから、最深層のお仲間として考えている。
「まあ、今年中に次の階層ができるってことはないだろうし、のんびりやっていくさ。その間に身体強化も上がるだろうしまだまだ上……下? を目指せることだし、今のところダンジョンマスター関連で手持ちの案件はないしな。新しいダンジョンのほうも後はそれぞれが立ててくれればそれで終わりってことにもなってる」
「じゃあ後はダンジョンマスター任せってわけ? 気楽なもんね、新しいダンジョンが出来るなんて日本規模のえらい騒ぎでしょうに」
「まあ、自分の通うダンジョンが増えるってなら他人事ではないんだけど、何処のダンジョンもここからはそれなりに距離が離れてるしな。出張で出かける程度はあるかもしれないが直接見に行って俺が直に何かする……ってことはないと思うよ」
シュクメルリをぺろりと食べきり、鍋の底に残った分も綺麗に平らげると、ウォッシュで鍋を綺麗にしてから保管庫に片付ける。後は家に帰ったら軽く水洗いして本当に綺麗になってるかチェックしてから片付けることにしよう。器のほうもご飯粒一つ残さず綺麗になった。
ちなみにちょっと残ったご飯は欠食児童たちの手によって胃袋に納められた。これも無駄が出なくてよかった、ということになるんだろうか。夕食にご飯だけあっても仕方がないしな、そこはまあ良しとしておこう。
「さて、食事も終わったしお土産も渡したし、午後の仕事の準備に行くかな。午後もゆっくり七十一層散策に行くことにするよ」
「お土産ありがとうね。私たちもどこか出かける機会があったらお土産買ってくるわ」
「その時も消え物でよろしく……っと、ミルコの分も今のうちに送っておくか」
机を片付ける前にコーラとミントタブレット、それからいくつかの小分けにした信州土産の食べ物を机の上に乗せると、パンパンと二拍。しばらくして机の上から消え去った。お土産も受け渡し完了、と。気に入ってくれるといいが、後で苦情で返ってきたらどうしようかな。
「これでよし、じゃあ戻るわ。そっちも頑張って」
「お気をつけて、私たちは午後もこっちで頑張るわ」
六十三層から七十層に戻り、車でまた七十一層側に移動したが、稼働するにはまだちょっと早いか。もう少し椅子と机を出して休憩し、胃袋を落ちつけてから行こう。焦る必要はないし、グリフォンが出る分だけ稼ぎは多いしモンスター密度も高い。普段よりも多少の遅れが出ても問題ない程度には稼げるところなのだ。
もう少し……二十分ほど休んでから行くか。机に突っ伏して目を閉じ、胃袋の消化に体を集中させる。時間になってアラームが鳴ったところで休憩終わり。机と椅子を片付けて七十一層へ向かう。
降りてすぐのサメをいつも通り雷龍で撃破し、空中でドロップ品をキャッチ。うむ、いいスタートだ。この調子でどんどんいこう。サメとエイ、サメ二匹、エイ二匹、グリフォンとサメ、グリフォンとエイ。ここではこのパターンのどれかでモンスターが出現するのでそれぞれのスピード差を計算に入れてどっちを先に攻撃するかを確定する。
さて、もう一勝負頑張るか。今度は耐久実験だ。何時間戦闘状態を維持したまま戦い続けられるか、俺と雷撃衝の我慢比べと行こう。上手くいっていれば、【雷魔法】を新たに修得した分だけ長くなっているはずだ。
作者からのお願い
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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。
後毎度の誤字修正、感謝しております。





