5話
〜side ガルガン〜
パーティが始まった。
先ほどまでも盛況だった会場内だが、数段階か活気のレベルが上がったように感じる。
会場の中心の方では娘のフェリア、そしてフェリアを婚約者としたこの国の第二王子であるクリフ殿下が、挨拶にくる高位貴族達との会話に忙しくしている、ある程度落ち着いたところで行くと約束はしているが、それはそれとして今回は遅れて行く理由ができてしまった。
その理由を作り出した息子、そして息子曰く感情を増幅する闇魔法をかけられていた、という公爵家の長女であるエレノアール嬢、公爵家との問題というだけで頭を抱えたくなる事実だが、その発端が魔法により引き起こされたこととはいえ、フェリアに関することというのが頭痛と胃痛を加速させる。
「なんなのよ、その何か微笑ましいものを見るような顔は」
「姉と少し重ねていただけです、ですがそんなに不安がらずとも大丈夫ですよ、奇異の目でみられてしまっては貴女が辛いだけです」
そんなふうに会話をしている悩みの種の2人、ダインはフレアが昔花瓶を倒した時のことでも思い出していたのだろう、それともソウラの時だろうか、子供が親に怒られないかと様子を伺う様子に似ている、とは私も思った、だが女性に正直に姉と重ねていた、というのは…どこかダインは家族が好きすぎるあまり、そのあたりの常識が欠如しているような気がする、それとも私が教えなかったのが悪いのだろうか?
無駄な考えに痛む頭を回していると、遠くにいるフェリアと目が合う、早く来い、と言っているような圧を感じるが、どう考えても父への敬意というものが欠けている…情けない姿も見せているから仕方がないのだろうか、その辺りが周囲にバレていないのは正直に賞賛できるだろう、クリフ殿下には見透かされていそうだが。
「ダイン、エレノアール嬢、そろそろ向かおう、まず私たちが挨拶をしよう、その後でフェリアに謝罪を、というなら何も止めることはない」
「……お心遣い感謝します、アルフレイブ卿」
そう言って恭しく礼をする姿は完璧な貴族令嬢の姿に見えた。
優秀であるからこそ、フェリアへの嫉妬も強かったのだろう、それでも先ほどまでの行動を反省できている辺り、相変わらずダインの感覚は優れている。
自然にエレノアール嬢をエスコートしている息子に、誰に似てしまったんだと頭を抱えたくなる感情を無視し、途中でユリフィアとグレンを呼び止め、こちらを見つけて近づいてきてくれたラウドとフレアを連れてフェリアの元へと向かう。
ユリフィアとラウドはエレノアール嬢のことに関して、粗方察したのだろう何も言わないでいてくれているが、グレンとフレアは不思議そうだ、だがそのあたりはダインが上手く説明するだろう、その辺りの信頼はあるが、子供に寄せるものではないと反省するべきなのだろうか。
「お父様、お母様、今日はきてくださってありがとうございます」
「私からも感謝を申し上げたい、アルフレイブ辺境伯、遠路はるばるよくぞお越しいただきました」
そう言って礼を告げるフェリアとクリフ殿下、ユリフィアとラウドが丁寧に挨拶をする中、その後に続いたフレアとグレンが精一杯する挨拶はとても微笑ましく思えた。
そして最後にダインが挨拶をするのだが、その後ろに縮こまったエレノアール嬢がいるので、フェリアもクリフ殿下も少し困惑しているようだ、もちろんエレノアール嬢の身長は平均よりも少し高いほどはあるので、ダインの身長に隠れられるわけでもない、縮こまってしまっているのはただの緊張か、情けなさからだろうが。
「フェリア姉様、そしてクリフ第二王子殿下、ご婚約おめでとうございます、領地で留守をしている母と末の妹、ならびに弟に変わって祝いの言葉を述べさせていただきます」
「ありがとうダイン、それで…その、私の友人がいるのだけれど…?」
「ひいては私から少しお願いと言いますか、お話したいことがございます、なんのことかはわからないかもしれませんが、お聞きください」
フェリアからの質問には敢えて答えず、一歩身を引くダイン、おずおずと出てきたエレノアール嬢は少し震えている手を抑えて、呼吸を整えているよう、ここまでくれば純粋に応援せざるをえないのだが、ユリフィアやダインから何も口に出さないように、と言った雰囲気の視線を向けられたので、あわてて口を噤む。
「その、フェリア…ごめんなさい、私貴女に嫉妬したわ、魔法でも、座学でも、得意な語学でさえ負けて…クリフ殿下と婚約したのだから、だから、ごめんなさい」
そう言って頭を下げる、フェリアはしばらく驚いたような顔をした後、見たこともないような穏やかな表情を見せて、エレノアール嬢に顔を上げるよう伝える。
「何がなんだかわからないけど、そんなの普通よ、私も貴女に嫉妬したことはあるわ、えっと…スタイルだとか、だから気にしなくていいの、貴女が謝りたいのなら、私は許すわ」
「っ…ありがとう、フェリア、これからも…私と仲良くしてくれる?」
「えぇもちろん、私達友達でしょう?」
2人とも満足そうに、泣きながら抱きしめ合っている、親としては感動するような、どこか悲しいような、フェリアにも友人にしか見せないような表情があり、自分の素を知っているような友人ができたのだと、親としては少し感傷に浸りたくもある。
「お邪魔になりそうですし、私は他の方へ挨拶をしにいってきますね」
そう言ってその場を去って行くクリフ殿下、人格者として有名だが、勢力争いの旗頭としては弱い…そんな評価を貴族達からはされている彼だが、1人の親としては安心感がある、政略結婚という側面もありはするが、当人達が納得しているというのも、大事なところだ。
それはともかくとして、フェリアとエレアノール嬢の件については片がついた、どうしてこうなったか、最初からこれを狙っていたのか、まず勝手なことをしすぎだとダインと聞き出し、話さなければいけない。
「………どこに行ったんだ?」
先ほどまでダインのいた場所を見るため振り返る、そこには影も形もなく、ユリフィアやラウドに聞いても、少し前から見ていない、という端的な返答しか返ってこなかった。




