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彼氏に友達紹介

第三十五話 「彼氏が“紗雪の友達に会ってみたい”とか言い出した」


「……は?」


 私はスマホを見つめながら固まっていた。


 休日の朝。


 ベッドの中。


 送られてきたLINE。


『高橋さんに会ってみたいです』


「……何で」


 即返信。


 すると数秒後。


『いつも紗雪の話聞いてくれてる人なので』


『ちゃんとお礼言いたいなって』


「重い……」


 いや違う。


 重いというか。


 真面目すぎる。


 でも。


 蓮さんなら本気でそう思ってそうなのが怖い。


『嫌でした?』


 その一文に、私は慌てて打ち返した。


『嫌じゃないです』


『ただ緊張します』


 すると。


『俺も緊張してます』


 絶対嘘。


 あの人、緊張してても顔に出なさそうだし。


 でも。


 少し考えて、私は高橋へLINEを送った。


『相談』


 返信は三秒だった。


『彼氏?』


 エスパーか。


 ◇


「え、会う会う」


 カフェ。


 休日の昼。


 高橋は即答だった。


「軽」


「いやだって気になるじゃん。瀬名をここまで変えた男」


「変わってない」


「変わったよ」


 断言された。


 私はアイスコーヒーをかき混ぜながら視線を逸らす。


「てか彼氏側から“友達に会いたい”って結構ちゃんとしてるね」


「……そういう人なので」


「うわその顔」


「何」


「好きじゃん」


「好きですけど」


 即答してしまった。


 高橋が吹き出す。


「瀬名、最近ほんと素直になったねぇ」


「……」


 否定できない。


 蓮さん相手だと、前より感情を隠せなくなっている。


 ◇


 そして日曜日。


 私はめちゃくちゃ緊張していた。


「……帰りたい」


「まだ集合前ですよ」


 隣で蓮さんが笑う。


 待ち合わせ場所は駅前のカフェ。


 今日は私服の蓮さん。


 シンプルなのに格好いい。


 悔しい。


「紗雪の友達に会うの、普通に楽しみなんですけど」


「……何でそんな余裕なんですか」


「余裕ではないですよ」


「絶対嘘」


 すると蓮さんが少し笑った。


「でも、紗雪の大事な人なので」


「……」


 そういうこと自然に言う。


 好き。


 いや今は落ち着け。


「おーい!」


 声。


 振り返る。


 高橋だった。


「こんにちは〜」


「こんにちは」


 蓮さんが軽く会釈する。


 その瞬間。


 高橋が私を見た。


 “うわ本当にイケメンだ”みたいな顔。


 やめろ。


 分かるけど。


「初めまして、高橋です」


「黒瀬……じゃなくて、蓮です」


「おぉ、名前呼び」


「やめて高橋」


 即ツッコミ。


 だが高橋はニヤニヤしている。


 絶対面白がってる。


 三人で席へ座る。


 妙な緊張感。


 というか。


 自分の友達と彼氏が同じ空間にいるの、変な感じだ。


「なんか不思議ですね」


 蓮さんが笑う。


「紗雪の会社での話、結構聞いてたので」


「え、どんな?」


「真面目だけど拗ねると分かりやすいって」


「高橋」


「事実じゃん」


 私は顔をしかめた。


 すると蓮さんが楽しそうに笑う。


「合ってます」


「蓮さんまで……」


 高橋がじーっとこちらを見る。


「いやでも本当に瀬名……じゃなくて紗雪? 柔らかくなったね」


「……」


「前より表情全然違う」


 その言葉に、私は少しだけ黙った。


 すると。


 隣で蓮さんが、自然に口を開く。


「元々すごく優しい人ですよ」


「っ」


「ただちょっと不器用なだけで」


 高橋が「うわぁ」と笑う。


 私は顔を覆いたくなった。


「蓮さん、火力」


「本音です」


 さらっと言う。


 無理。


「でも安心した」


 高橋がコーヒーを飲みながら言った。


「ちゃんと瀬名のこと見てくれてる人なんだなって」


 一瞬。


 空気が静かになる。


 私は少し驚いて高橋を見た。


 すると。


 蓮さんが、真っ直ぐ頷いた。


「大事なので」


「……」


「これからもちゃんと大事にします」


 その言葉は、変に飾ってなくて。


 でもすごく真剣で。


 胸の奥がじんわり熱くなった。


 高橋は数秒黙ったあと、ふっと笑う。


「なら安心だわ」


 私は隣の蓮さんを見る。


 蓮さんも、こちらを見て少し笑った。


 その瞬間。


 “自分の大事な人たちが繋がる”って、こんなに嬉しいんだと思った。

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