ラストアタック、アタックファイヤー
覇杖と名のつくこの太刀、これって普通の刀じゃないんですかね?あれぇ全然刀にしか見えませんけど…
「とにかく行くぞおおお」
竜の喉元へと辿り着いたキョーカはその刀を一振する。先程の大太刀より刀身が短いこの太刀を使った方が速く動くことが出来るのだろうとは思っていた。だけど、
「グオッ」
「エ、カッルイヨコレ?ってええええええめっちゃスパッといったあああああ」
なんとこの太刀、持ってみても重さを全く感じません。まあ誇張せずに言うとしても羽、うん羽です。それに加え、重さは1枚の羽なのに切れ味が半端ないの。何が起こったのかを説明すると、キョーカが太刀を振ると同時に竜が自身の左腕を前に突き出しガードした。勿論、キョーカが切ったのはガードしてきた左腕。その瞬間、禍竜の左腕が真ん中程から綺麗にズレて地面に切り落とされた。
切り落とされた直後に竜が痛みのあまり叫び出すと思い身構えたが、竜は叫び出すことをしない。もう叫ぶ行動すら出来ないくらい魔力を維持できていないのか?やっぱり魔力源っぽかった刀神の遺産を根こそぎ奪ったからか?まあとにかく、左腕をもぎ取ったぞ。これで随分と戦いやすくなった。
あっ、そういえばフィナのことをずっと忘れてたぞ、さっきは結構近くにいたけど大丈夫か?
キョーカが辺りを見回すとかなり離れた位置でフィナが横たわっていた。良かった…何とか距離を取ってくれたのだろう。
「前、前!!」
フィナがキョーカの目線に気付き急いで視線を自分から竜に戻すよう声を出し始める。しかし、キョーカが竜に視線を戻すまでには、既に竜が攻撃をしかけ始めた後だった。
「やばっ」
ガギンッ
咄嗟の思いで太刀を横にして構えてみる。攻撃はブレスだった。あ、これは詰んだ。
と思っていたら
「え、刀がブレスを吸ってる?」
なんと刀が竜の渾身の攻撃を吸収し始めた。何とも奇っ怪な光景だろうか。キョーカは最早自分が今何をしているのかすら分からなくなってきたが、今竜のブレスを吸えているチャンスを無駄にはしない。
「腕の後は脚でしょっ!」
ブレスから逸れながら勢いよく飛び出す。竜は視界がブレスに覆われていた為、勢い任せに飛び出したキョーカを捉えることが出来ない。キョーカが左脚に近ずき、【覇杖空断】で新たに一閃。
刹那、竜の片脚が斬られたことにより地面に倒れ込む。竜は倒れ込みに対して、流石に声を漏らす。
「グ」
「よしっ!!最後の追い上げだ」
キョーカにも限界はあるのでほんとに最後の最後の攻撃を仕掛ける。
一撃
二撃
三撃
禍竜はその間も果敢にブレスを仕掛けるも、この刀が吸ってくれる上に段々と勢いが弱まっている。竜は残っている右腕脚で立ち上がろうとするも、まともにバランスを保てない為突進も大した威力が出なかった。
「これで決まってくれ、【刀神刀技:砕絶流葉切】!!」
キョーカの太刀が竜の顔めがけて縦に斬下ろす。キョーカの渾身の一撃が禍竜に当たると、竜は今度こそ意識を失うように倒れて行った。
「終わった、勝ったんだ。勝ったんだああああ!!やったぞおおお」
キョーカの竜との戦闘が終了した。キョーカは自分では勝てる訳がないと思っていたら巨大モンスターに対して、途中で超強化が入ったが自分の行動が勝利に導いてくれたことになりよりも喜びを感じていた。まさか自分が竜殺しになれるなんて。いやでもあれは竜と呼んでいいのか?
でもそんな事は関係ない。とにかく、自分でこの大業を成し遂げたということをめちゃくちゃに浸りたい気分になっているのだ。
刀神さん本当にありがとう。貴方のお陰で僕は禍に勝てました。貴方のお残しもきっちり片付けましたよ。
「キョーカさん!!!!!!!!!!」
あ、フィナにも伝えなきゃね
「おーーい」
「フィナあああ!!勝っ、」
キョーカは背後から邪悪で悪寒を感じさせるような爆発的な魔力の揺らぎを感じ取った。
次にキョーカが気付いたのは、自分が今大神殿の壁に吹き飛ばされてめり込んでいる状況だ。
「な、にが…」
キョーカが自分の本当にミリ単位で残ったHPバーを見て、即座に最後の回復ポーションを使う。体力が十分の一まで回復出来た。
キョーカが霞む視界をこじ開けると、
目の前には左右合わせて3枚の非対称の翼を使い神殿内を飛ぶ、先程自らの手で決着をつけたはずの竜がそこにはいた。
「なんで、さっきで完全に倒したはず…」
「…………ォ、オ、オ、オオオオオオオオオオオオ!!!」
竜が叫び出し、その身体を更に赤黒く光らせて、キョーカ目掛けて羽ばたき始めた。
「うぐっ、」
キョーカは咄嗟の思いで身を乗り出して右にズレるも、竜の羽がキョーカに掠る。キョーカは冷や汗をかく感覚が止まらないが、ここまで来て自分が死ぬことは出来ないと、もう一度帰属した空断を握る。左脚が全く動かない。と思い自分の脚を見ると、膝から下が無かった。どうやら先の攻撃で脚を犠牲にしてしまったようだ。
「片足なくても、やらないとやられるんだ。こい、やってやる。」
片脚と手を使って何とか距離を取ったキョーカは、自らが活発に動くことは流石に出来ないと悟り、禍の竜からの攻撃にその場で相対することを覚悟する。
「ォォオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」
竜が新たに神殿内の壁に沿って飛び回り速度を生み出してキョーカ目掛けて突進してくる。
キョーカは想定以上の攻撃動作を見て急いでもう片方の大太刀も握り攻撃に備える。
飛び込む竜の顔と振り下ろされる2振りの刀が激突する。
キョーカは片脚が使えない状態で、根性勝利では分が悪ことは分かっている。ただ、分かっていたとしても、キョーカに出来ることはここで竜を斬ることのみ。キョーカはこの二斬に全てかけ、何とか片脚で地面を踏みしめ続ける。
「う、ここで負けて、たま、る、か、かああああああああ」
キョーカの2振りが竜を斬る。しかして竜は咄嗟に受け流しの体勢を取り大きく後ろに後退する。
竜はもう一度突進の体勢に入り、雄叫びをあげながら行動を始める。
キョーカは絶望しつつも新たな攻撃に対して向き合う覚悟を決め、こちらも雄叫びをあげて行動を始める。
これが本当に最後の攻防になるだろう。
「ォォォォォォオオオオオオオ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!!!!!!」
「があああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
竜が突進する。
キョーカがとった行動は、
燦切を捨てる。
自らが1番早く放つことが出来るであろう、空断での居合攻撃をするためだ。
竜が眼前まで近ずいて来る。
竜は突進と同時に大口を開け喉の奥から炎の揺らぎを溜める。
キョーカにコレを防ぐ手立てはもうない。 が、
キョーカは鞘に空断をしまい刀技を発動させる。
「【刀神刀技:抜っ」
キョーカが鞘を支える手で鍔を押し刀身を少し見せた。
その瞬間に、覇杖空断の鍔から勢いよく前方に向かって爆炎が螺旋状に放たれる。
「はっ?」
爆炎が竜の大口に入り込む。竜の口の中には、ブレスを仕掛けるために轟々と揺らぐ炎が存在していた。空断の爆炎が竜の炎に引火する。
キョーカの視界が明転する。
ゴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ン
巨大な爆発音がキョーカの耳に轟く、
「な、に…」
キョーカは咄嗟に刀を納め、攻撃の体勢に入る。
しかし、キョーカの視界がその空間を写した時には、
今まで戦っていた禍竜ファグアデルグの姿は何処にもなく、塵となって消えてゆく黒焦げの魔力のようなもののみが視界に入ってきた。
「、、、、おわっ」
た
キョーカはその場で意識を失う。
ーーークエストの完遂を確認ーーー
【EXTRA】再禍の悲慼、頒つ怨嗟ーーCLEARーー
ーーー〖ワールドアナウンスを報告します。〗ーーー
ーーー〖ゲーム内にて初めて【EXTRA】クエストの完遂を観測しました〗
ーーー〖ゲーム内にて初めて真竜が討伐されました〗
ーーー〖当プレイヤーに称号【初の真竜の討伐者】が与えられます〗
ーーー〖当プレイヤーに名誉称号【再天の放浪者】が与えられます〗
ーーー〖当プレイヤーに異名称号【焔水の精魔師】が与えられます〗
生産者目指してる筈なのに、いつの間にか刀神になってますねこの人。ちなみに【資格の証明砕絶の刀神】のCLEAR条件は竜に啖呵切ってカッコつける事ではなくて、禍竜への一定時間独りで戦いきること、一定数の攻撃を与えること、を行うことでファナがご都合的な気配を察知しフィナを大神殿に送り戻してきます。そして、フィナが見ている中で竜の攻撃を防ぐ事で、過去の放浪者を思わせる行動とみなされてCLEAR出来ました。キョーカはそもそも紙装甲で、結構ギリギリでした。フィナの前での攻撃も防ぎ切れてもいないしね。
しかし、空断強くね?おっきいだけの燦切があんまり使えないように感じる。と自分でも薄々思っていますが、これはそもそもが刀神に至るレベルで研鑽を積んだ放浪者さんが、拵えた大太刀です。ピーキー仕様になっています。特殊ジョブを手に入れたばかりのキョーカさんではマトモに使えません。それに比べたら、空断は初心者でも軽いので使い易いです。キョーカは曲がりなりにも刀神に一時的になれましたが、雲泥の差、月とスッポン、もはや光年レベルで強いのが過去の刀神さん。禍竜も当時の方が強いです。今だと世界を滅ぼすには足り得ません。簡単に言えば、残りカスが丁度いい触媒見つけて形だけ復活したみたいなものですから。形すら不完全ですけど。




