エルフの大森林 その3★
『大鬼主』の討伐のために、大森林の最奥まで足を進める。火の玉をランタンの変わりに灯し、日の光が注がない森の深部を進む。
「大森林にこんなところがあるなんてな。これじゃ、昼か夜かもわからないぜ」
「そうだね。魔物が棲むには絶好の環境だ」
私が雷の魔法を唱えると、辺りの魔物が感電して息を絶える。背後にいた魔物たちが、私たちを奇襲する。すると、気配は察知したガイウスが、斧を振り回して迎撃する。
「お見事」
「サンキュ。だけど、『小鬼』がやけに多いな。本当に『大鬼主』がいるのか?」
「この奥から、強力な魔物の反応があります。『大鬼主』まではまだ先になりますね」
クラリスの持つ聖書から、強力な反応を感知する。どうやら、この奥に『大鬼主』がいるようだ。魔法でマップを開くと、迷路のように入り組んだ地図が表示される。どうやら南側がエルフの里で、北側に行くにつれて森林の深部になるみたいだ。ここに『大鬼主』が潜んでいて、エルフ達が傍迷惑をかけているようだ。
マップを眺めていると、アリーシェが遠くの方に目を向けながら弓を構える。すると矢を射向き、それと同時に何かの頭に当たる音が聞こえた。
「よし、『大鬼』を仕留めたよ」
「アリーシェさん……。私たちには何も見えませんでしたけど?」
クラリスは、アリーシェの方を向きドン引きをしている。どうやら、彼女のスキルに驚いてしまったみたいだ。
「あぁ、これ? 私のスキル『千里眼』だよ。森や空気中の魔力を目に集中させることで、遠くのものを視認できるの。私のクラスは『狩人』だから、弓を使う時に重宝するの」
「へぇ。それじゃ中衛や後衛もいけるじゃん」
「ガイウスの援護と私とクラリスの防衛にはうってつけのクラスだね。それに、ボウガンもあるなら、近くの魔物も射止められる感じだ」
私はアリーシェの腰に携えているボウガンを見る。どうやら、近接にはこのボウガンで対処し、遠距離にはさっきの弓で射抜くみたいだ。その考えが熟練の『狩人』でも中々そうしないものだ。彼女はエルフ故に、その使い分けを身についたようだ。
そう考えていると、クラリスが聖書を広げる。
「『主よ 我が敵に風の裁きを』」
クラリスの詠唱により、深き大森林に風が吹き荒れる。すると、木の上に登っていた『小鬼』が次々と落下していく。かなりの数の『小鬼』が落下と同時に頭蓋を粉砕される。
かろうじて生きていた『小鬼』はクラリスに攻撃をするが、それを見ていたアリーシェはボウガンで射抜く。
「あら、助かりましたわ。アリーシェさん」
「クラリスさんこそ、聖女とはいえすごい詠唱ね。これだけの神の奇跡、初めて見た」
「クラリスは戦闘と補助どれでもいけるからね。もちろん、回復もお手のものさ」
私がそういうと、クラリスはドヤ顔を決める。こうしているが、結局は金が絡まないと働かない銭ゲバ聖女なのは変わらない。
ともあれ、私たちは大森林の深部まで進む。ちょうど休憩にはうってつけの場所を見つけ、私たちは少し休むことにした。
「クラリス、『大鬼主』のところまではあとどれぐらいだ?」
「ここを抜けると、『大鬼主』まではあと少しのようですね。ただでさえ広い大森林とはいえ、これじゃ『迷宮』と変わらないですね」
「結構進んだってわけか。なら、そんなにかからないか」
「まぁね。でも、かからないとはいえ厄介なのも多く潜んでいるのも事実だ。気をつけて行こう」
私たちは少し休憩をとりながら、今後のことを話し合う。前まではクラリスと2人だけだったのに、4人もなると賑やかになるのもだ。そう考えていると、ガイウスがお腹を空かせたみたいだ。すると、アリーシェが葉っぱに包まれたものを取り出し、ガイウスに渡す。
「2人もどう?」
「えぇ、遠慮なくいただきます」
私たちは、葉っぱに包まれたものの封を開ける。すると、穀物が三角に固まった食べ物が現れた。
ガイウスとクラリスは、何事もなくそれを頬張る。だが、私はそれをしばらく見つめていた。どうも、エルフなのにこの料理を作れる時点で、彼女にはないか違和感を感じる。さすがの私も、腹を空かせているので食べる。いい塩加減で美味しく感じる。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ」
間食を終えると、私たちは大森林の最奥への探索を再開させる。マップを開くと、未踏のエリアが存在し、私はその場所へと向かう。
「リリアさん? そこには『大鬼主』はいないよ?」
「いや、進むよ。ここには意外なクラフトがあるかも」
「やれやれ。仕方ないですね」
アリーシェとガイウスは呆れながら私の後についていく。しばらく探索していると、それなりの量のクラフトを回収する。
「すごい……。まさか、大森林の奥にこれだけのクラフトがあるなんて……」
「なぁ、これって一目見るとただのガラクタにしか見えなんだけどさ。これって本当に価値があるのか?」
「正直、私にもわかりません。ただ、リリアが言うには、これらは500年前の遺物だというのです」
三人は私が戦利品を眺めている様子を見る。すると、気になるクラフトを見つけ、私はそれを見つめる。なんとそれは、見るからにこの世界のものではない物だった。東方の国の文字にしては、はっきりと書かれているものだ。
「リリア、これって?」
「あぁ、500年前の、それもその時の転生者の遺した遺物だ。まさか、この大森林で見つかるとはな」
「そんなにすごいのか、それ?」
「『勇者 ユウキ』が魔王を倒す前のクラフトはどれも高額で取引される。特に転生者たちが遺した物は、歴史的文献的な意味で、ギルドからも高値で取引されるくらいだ」
私が2人に説明したように、転生者が遺したクラフトはギルドでも高値で取引される。だが、ギルドの支部では鑑定士が配属されていないところもあるので、そう言った処置として『自由都市連合 ダグドル』への紹介状を発行して冒険者に向かうようにしている。
場合によっては、ギルド自体が破産しかねないほどの額になるからだ。
「それじゃ、このクラフトは?」
「おそらく、『勇者 ユウキ』が遺したものかもね。私が読んだ本には、『勇者 ユウキ』はエルフが住まう大森林に訪れた話が出てくる。となると、彼はここへ来たのかもね。全く、思わね収穫を得たものだ」
私はそのクラフトをしまうと、さっきまで行った道を戻る。そして、ようやく『大鬼主』の討伐を開始する。巨体を揺らしながら、棍棒を持ちつつ『小鬼』たちを引き連れながら歩き回る。
「あれが『大鬼主』か。それも、珍しい個体だ。ここまで強いのは見たことがない」
『大鬼主』は大きな咆哮をさせながら、私たちのいる方向を見る。
かくして、私たちは『大鬼主』の討伐を開始したのだった。
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