表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/17

7 【二階堂視点】二階堂傑について 

俺様がまだ小学生だった頃の話だ。

ちょうどそのくらいの時期に、世間に『ダンジョン』ってもんが登場しやがったんだ。


野球もサッカーも鬼ごっこも、ゲームも。

同年代のガキどもが好んでやる遊びなんてのは一通りやったけど、どれも簡単で退屈で、俺様にはピンとこなかった。

だけど、ダンジョンだけは違った。


化け物がウジャウジャ出る地下の迷宮を、自分の力だけで突破する――

スポーツのような雁字搦めのルールも、ゲームのような上限ありきの不自由さも、何もない――

その危険さと、未知の領域に踏み込む感覚。

その想像だけで、本気でワクワクした。心が震えた。


どうやら、そう思ったのは俺様だけじゃなかったみたいだがな。


親父は誰よりも早くその世界に飛び込んで、今じゃ最前線を行く一流の攻略者。

兄貴と姉貴も親父の背を追って、そのまま攻略者になっちまった。

今じゃ親父のパーティの一員として、レベル30に近いダンジョンに潜ってる。


日々人間離れの力を得ていく一家に居るのが怖くなったのか、お袋は3年前に家を出ていった。

ま、正直言って、いなくなってせいせいした。

口うるさく攻略者にはなるなって言うだけで、俺様の邪魔ばっかりしていたからな。


当然、俺様も親父たちに続いて攻略者を目指してた。

実際、俺様にはその資格があった。親父が有名っていう後ろ盾もあったしな。


その時、用意されたのが推薦試験。


一般のやつらにはまず縁のない、特別な選抜ルートだ。

この試験に合格すれば、いきなり有名ギルドへの所属やすさまじいバックアップがついてくる。

まさにエリート街道まっしぐらってわけだ。


だから、俺様は本気だった。


実力にも、自信があった。



だが……結果は惨敗だった。


あの、見た目だけは整ってて、どこ行っても女子にちやほやされそうな()()()

あいつに、すべてをかっさらわれた。


実技試験の最中、俺様の攻撃はすべてかわされ、まともにダメージすら与えられなかった。

終いには、「まだまだだね」とか、ニヤつきながら言いやがったんだよ。


……あの時の感情は、今でもうまく言葉にできねぇ。


結局、合格したのはあいつだけで、俺様は落ちた。

推薦試験で不合格ってのは、一流の親父たちから見ればもう見込みなしの烙印だ。


あれ以降、親父も兄貴も姉貴も、俺様にほとんど話しかけることすらしなくなった。

口を開けば命令、あとは無言。こんなぞんざいな扱い、ひどすぎるだろ。


そんな俺の気持ちなど眼中にないのか、家族は相変わらずダンジョン漬け。ダンジョンを攻略していない合間すらインタビューだのなんだのに呼ばれて、家にいる時間もねぇ。

残された俺様は、最低限の生活費だけ渡されて、ただの厄介者扱い。


それでも、俺様は諦めなかった。

ダンジョンコースのある高校に入り、そこで力を磨くことにしたんだ。


けどな、そんな殊勝な思いは落胆と共に失せていった。


なぜかって?

ダンジョンコースの同級生たちは、戦闘のセの字も知らねぇ平和ボケのガキばっかだからだ。

教師どもも教科書片手に「戦術理解が~」とか言いながら、ぬるい授業ばかり。


ハッキリ言って、アホかと思ったね。

敵と鉢合わせたら、考えるより先に殴れ。それが基本だろうが。

机上の空論なんざ、現場じゃ役に立たねぇっての。


そんな中、だったら他の連中から金を巻き上げる場としてダンジョンコースを利用した方が効率的だと気付いた。親の支援にも限界があるしな。

どうせ一生、低レベルのダンジョンでヒィヒィ言ってるような奴らだし、心も痛まねえ。


それから、それなりに戦えるやつを数人まとめて、他の連中から金や物資を調達するようになった。

そのおかげで、俺様の装備は格段に整った。

ついでに知識テストみたいなめんどくさいものは適当にカンニングでパスした。

頭数さえそろえばどうってことなかったな。


そして、最終試験という名の実践が迫ってきた頃、ちょっとした事件が起きた。


自宅の洗濯機が壊れた。

原因は、洗濯物の中に石が混ざっていたせいらしい。


俺様には、全く心当たりはねぇ。

だけど、何故か親父に説教された。久々に話しかけられたと思ったら、それかよ。

俺様は悪くねえのに叱るとか、マジであり得ねえ。

売り言葉に買い言葉、親父と喧嘩して、むしゃくしゃしたまま眠りにつくこととなった。


で、迎えた最終試験当日。


若干調子が狂ってたが、俺様の実力なら、それでもダンジョンレベル10くらいは余裕で突破できる状態。

今回の試験はたったのレベル1。


ダンジョン側のシステムの都合で、最初はレベル1のダンジョンにしか入れねえとか言ってたが、そんなん、無理矢理でも突破させろって話だろ。

俺様がレベル100のダンジョンを突破したら、その時には神にでも直談判してこの制度ごとぶっ壊してやるよ。


ただ今時点ではホントーにどうしようもないらしく、仕方なく俺様はレベル1のダンジョンに行くことに同意した。

試験は人数合せのためにがり勉野郎を入れたパーティを組む形でスタートした。

ダンジョン内は想定通り、雑魚モンスターばっかり。マジで拍子抜けした。


これを楽勝と呼んで、何が悪い? 

それでも試験官は面談の時に「戦闘だけじゃない」とか「周囲を見る力が必要」とか、やたら講釈を垂れてきやがった。


あのなぁ。

俺様が無傷で、ここまで連れてきてやったんだぞ?

なのに「配慮が足りない」だぁ?

……ふざけんな。そっちが見えてねぇだけだろ。


けど、その程度のイラつきなんかどうでもよくなる出来事が起きた。


俺のマジックバッグが、消えた。

それも、がり勉野郎のせいで。


最初は何が起こってんのか分からなかった。けど、周りの奴らの説明を聞いて、すぐに理解した。


……あれは、親父が俺に唯一くれたプレゼントだった。

最初で最後の、うれしかった贈り物。


たとえ表面的でも、あの時だけは俺を見てくれていた気がした。

それだけに、大事にしてたんだ。ずっと。


それをアイツは、消しやがった。


キレるなってほうが無理だろ。


俺はがり勉野郎を殴った。何発も。

あいつは無抵抗だった。自分のやったことの重さ、分かってたんだろうな。


荷物から使えそうなもんは全部奪って、ついでに魔石も口に詰めてやった。

途中で試験官が戻ってきたから手は止めたけど、正直、まだ足りねぇって思ってたよ。


……けどな、その後のボス戦前で状況が変わった。


ちらっとステータスカードを見たんだが、その時俺様に、『大一閃』ってスキルが発現してたんだ。


優れた攻略者(英雄)ってのは、最初のダンジョンでスキル発現するもんらしいしな。

しかもボスを倒す前だぜ?

これはもう、選ばれた存在ってことだろ。


がり勉野郎?マジックバッグを消した罪は許せねえがもうどうでもいい。

二度と俺様の前に現れなきゃ、それでいい。いや、むしろ現れんな。


これから俺様は、ダンジョンの最前線に立つ。

推薦試験で俺様を落としたやつも、俺様を見限った家族も


全員、見返してやる。


絶対にな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ