61 下関ダンジョン その3
下関ダンジョン攻略2日目の朝。
充電が50%を切っているスマホから鳴るアラームを止め、凝り固まった体を起こしてあくびを1つする。なかなか瞼が持ち上がらないので、近くの湧き水で顔を洗う。適度に冷えている水が少しだけ眠気を緩和してくれる。
「ふああ、やっぱりダンジョンで寝ると体がガチガチになってしまうな」
「あ、起きたんだ、おはよう」
ダンジョン内ということで、起きてすぐステアに挨拶される。自宅では2つの意味で考えられないことだが、くすぐったくも心地よくもある。ただ、その心地よさは長くは続かない。
「ていうか地べたに寝るってレベル12と13のダンジョンでもそうしてたよね」
「まあね。布団持ち込んでもいいけどダンジョンをより感じるにはこっちの方がいいかなって」
「きも。なんでふつうにできないかなぁ」
いつものことになりつつあるステアからの棘言葉に少しだけ打ちのめされる。
「いや、この体の固まり具合がいいっていうか。まるで俺もダンジョンの一部になったみたいっていうか」
「きも」
再びの棘にウッとダメージを受ける。ステアには前から言っているが、どうにも俺のダンジョンとの接し方は理解してくれないようだ。ダンジョンの中で寝泊まりするならこれが個人的に一番良いと思うのだが。別に山みたいに地面が湿っていたり虫がそこかしこにいるってわけでもないのに。
罵ってくるステアになんだかなあと思いながら背伸びをすると、体中からバキバキと体がほぐれる音が鳴る。布団もなしに地べたに睡眠は確かに快適とは言えなかったが、それでもダンジョンを直に感じることができた。
「じゃあ攻略再開か。まずは準備からだな」
俺は手早く朝ご飯を口へ放り込み、身支度を整える。
クレッセントダブルダガーやアイアンバンブージャベリオンを握り、適度な速度で振るう。決まった型はないが、寝起きの体にダンジョン攻略を始めることを伝えるため、大きな動きで全身を動かす。ダンジョン内に滞在していることでステータスアップも感じつつ、素振りの速度を徐々に早くしていく。
「昼過ぎにはダンジョンボスまで行きたいなあ」
「たぶん行けるでしょ。ダンジョンに入った時よりも強くなってるんだからね」
「それもそうだな、ステータスオープン」
ダンジョンの外でも鍛錬をしているおかげか、自分の動きの変化に敏感になっているのが分かる。今の素振りの速度は下関ダンジョンに入ってきたとき以上の速度が出ていそうだ。ついでにステアに言われてちょっと気になったのでステータスも確認してみることにする。ステータスカードを呼び出し中を読んでみると、そこにはもう十分に中級者と言えるようなステータスと新しい防御スキルが書いてあった。
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なまえ:小野寺太郎丸おのでらたろうまる
とし:16
しゅ:ひと
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ついかこうげきりょく:3207(+1522)
ついかぼうぎょりょく:3161(+1515)
まなりょう:2775(+1449)
ついかいどうそくど:3087(+1495)
ついかまほうこうげきりょく:3050(+1469)
ついかまほうぼうぎょりょく:3434(+1591)
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ふれいるすいんぐ
すらむだうん
かうんたーばらんす
すぴんぱりんぐ
ついかこうげきりょく1.1ばい
ついかぼうぎょりょく1.1ばい
ついかいどうそくど+100
ついかまほうぼうぎょりょく1.2ばい
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あじゃすとうぉーく
わーどらんげーじ
すとろんぐあーむ
すてあさーち
ぽいずんれじすと
いれぎゅらーいぐじすと
ふるすとーかー
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さいだいだんじょんれべる:14
だんじょんこうりゃくりれき:『しものせきだんじょん(14):9かい』
『みくちだんじょん(13):16かい』
『さんだだんじょん(12):14かい』
『おおほりこうえんだんじょん(10):10かい』
『すみよしだんじょん(4):2かい』
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「やっぱりダンジョンレベルが上がると滞在時間も伸びるしどんどん強くなるなあ。お、『すぴんぱりんぐ』じゃん!パリィ系統はミスらなきゃ格上にも通用する防御スキルだからありがてえ」
「随分とステータス伸びたね。まだまだこれからだけど」
「見てろよ?このペースなら夏くらいにはダンジョンレベル20も夢じゃないからな?」
「はいはい、がんばれがんばれ」
「今日冷たくない?」
一体何がステアをそんな塩対応な感じにしたのか皆目見当もつかないが、それよりも今はダンジョン攻略だ。新しいスキルも試しつつ、これまで以上の速さでダンジョンを駆けていくのだった。
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「……えーというわけでダンジョンボス、倒しました」
「君、そんなおっちょこちょいなことするんだ」
そして今、俺はダンジョンボスだった100体のボンボーンズをなぎ倒し、辺り一面に散らばっている『魔物の装備品』ドロップの骨を一心不乱に拾っていた。
……まさか自分のいる階層を勘違いし、まだダンジョンが続くと思いながら18階層のボス部屋に踏み込むとは。恥ずかしいったらありゃしない事態だ。17階層だと思って進んだら18階層で数えるのも嫌になるほどのボンボーンズがなだれ込んできたのだ。もし『あじゃすとうぉーく』がなければ早々に逃げ回りながら他多うことに疲れ、この世から去っていただろう。
しかし今はそんな仮の話に集中している暇はない。
ダンジョンから脱出まで残り20秒。100本の骨をすべて拾うのは現実的ではなく、どうあがいても準備不足が露呈していた。幸いにもドロップしている骨の形状がすべてありきたりな形の物で助かるが、それでも半分拾えれば御の字だろうか。
「……くっ、笑いたければ笑えよ」
「え……。あ、あははは」
「……気を使わせてごめん」
「……うん」
最後は気まずい雰囲気の中、何とか50本ほどマジックバッグに入れて、ダンジョンを脱出するのだった。
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「買取りをお願いします。あ、デバイス返却もお願いします」
「はい、承知いたしました。ダンジョンボスの初回討伐は達成されましたか?」
「はい。50本くらいはドロップアイテムがあると思います」
ダンジョン脱出後、ダンジョン内で犯した失態にきおころの中で悶えながら俺は受付に向かった。時刻は午後3時過ぎでほかの攻略者はちらほらと見かける程度だ。そもそもダンジョンレベル10も超えると2日でダンジョンをクリアするのはかなり運頼みだ。次のフロアへの階段を1時間に1つは見つけなければならない。
そのため、ダンジョンレベルが低いときのように土日に攻略者が集まることは減り、各パーティが数日かけてが自分たちのペースで攻略するのが普通だ。だから、日曜だからと言って脱出用の施設に人が集中することもほとんどないのである。
閑話休題。
「ではこちらにお願いいたします」
受付のお姉さんに案内され、ビニールシートのひかれた一際広いスペースに通される。ここのダンジョンボスのドロップの性質上、他のダンジョンより買取りが大変になるのは容易に想像がつく。そのため、大量のドロップされた骨『魔物の骨』を並べられるよう、あらかじめ準備してあるのだ。
俺はすべての骨をマジックバッグから取り出し、受付のお姉さんと一緒に黙々と骨を並べていく。なんとなく警察の押収物を並べるアレを思い出しながら数分で並び終える。
「——それでは全部で53本ですね。1本500円ですので、26,500円の買取りとなります。ほかに売りたいものはありますか?」
「あ、じゃあ魔石もお願いします」
売却額を聞き、骨を全部拾えていたら5万円だったのにと残念がる。ただ、他にも買い取るものを聞かれたので追加で魔石も売ることにする。ダンジョンボス前に食べようとしていたが、その機会を逃したのでどうせもう食べることもできない。どうせならこの悔しさの分を穴埋めしてもらおう。
結局この2日間で3万円と少しの収入となった。まあまあの大金であることと下関まで来たことを思い出し、どうせならどこかフグ料理でも食べて帰ろうかと、ふと思った。
俺は他の攻略者の邪魔にならないようダンジョン管理施設の隅でおいしいフグ料理屋をスマホで探すのだった。
『魔物の骨』
主に骨から成る魔物の『魔物の装備品』ドロップとして手に入る。
骨粉にすることで高栄養な肥料となり、農作物の品質を大きく向上させる。
また、ドロップ元の魔物によって形状や強度が異なるため、物によっては棍棒や短槍などに加工して武器として利用することも可能である。




