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58 ゴールデンウィーク明けのダイアログ

 ゴールデンウィークも明け、長い休みとはしばらくお別れとなってしまった本日5/8のこと。

 俺は若干のダンジョンロスによって軽い鬱になりながらも、北南高校へ登校していつもの1人生活を送っていた。周りを見ると夏前にもかかわらず、日に焼けた生徒がちらほら目に入る。高校生活の青春とは本来ああいうものなんだろうなと、哀愁に満ちながらも、彼らがプールやビーチに繰り出す姿を想像してうらやましさも感じる今日この頃。

 まあそのうち俺もダンジョンのために海に行くことにはなるだろうが、なんとなしにうらやましく感じてしまう。


 なんて鑑賞に浸っていると、いつの間にか昼休みの時間になっていた。一際にぎやかになる教室をしり目に、いつもの図書室の特別スペースでダンジョンコースの演習を眺める。流川がダンジョン攻略に繰り出しているため、別の講師が剣の扱い方を教えている様子が見える。どうやら両刃の剣の扱い方を中心に扱っているようで、どう振るえば諸刃の剣にならない戦闘となるかを熱心に実演している。


「やっぱり先生は武器の扱い上手いよなあ。俺なんか自滅が怖くて最初の武器の選択肢から外したのに」


 さすが講師という立場だけあり、名も知らぬその男性は、流れるような動作で危なげなく剣を振るい続ける。一応俺でも、一歳の安全性を無視すれば見様見真似で似た動きはできる。つまり、実際に訓練したとしても本番(ダンジョン)であんな危ない武器を使えるような人間は、ただの天才か身の程知らずのどちらかである。天才ではなく努力家だと俺は自分を理解しているので、人生初のダンジョン攻略にもっていった武器は大金槌だったし。だが、そろそろステータスもダンジョン攻略経験も伸びてきたことだし、剣も武器の候補に入れてもいいかもしれない。


「ふあああ」


「あっ、小野寺さん、お久しぶりです!やっぱりここにいたんですか、探しましたよ」


 春の陽気にあくびをしながら講師の剣筋を眺めながらそんなことを思っていると、後ろから声がかかる。


「すみません、さっきまでダンジョン攻略中で全然連絡取れなくて」


「そもそもこいつの連絡先なんて誰も知らねえだろ」


 最初は持林、続いて芳井と織田が姿を現してきた。3人ともどこか晴れやかな表情で、以前までの力みや不安定さは少しもうかがえない。織田でされ、言いぐさは相変わらずだが、憑き物が落ちように笑っている。男児三日会わざればなんとやら、どうやら彼らはまっとうな攻略者に生まれ変わることができたようだ。


「3人そろってどうしたんだ?」


「あ、そっちの話し方にするんですね」


 少し気が抜けていたのか、何も考えず素の話し方で喋ってしまう。ただもうこの3人には取り繕うようなものはないもないだろう。


「もう面倒くさいからな。俺のこと知っている人にわざわざ丁寧に話すの。それで何かあったのか?」


「実は俺たち、ダンジョンレベル5までクリアしたんですよ!なあ!」


「住吉ダンジョン攻略した後、そのまま、えーとなんとか山田ダンジョンに行ったんですよ」


「上山田な。ウルフストレイズが出てくるからちょうどいいってことで」


 3人がそれぞれ好きに話してくる。どうやら彼らはゴールデンウィーク中にダンジョンレベル4の住吉ダンジョンだけでなく、ダンジョンレベル5の上山田ダンジョンを攻略したらしい。どちらにも共通してウルフストレイズが出現するので、住吉ダンジョン攻略の経験が生かしやすいとのことだ。意外と攻略するダンジョンを理詰めで決めたのかと感心する。

 俺も攻略した上山田ダンジョンはそもそも田舎のダンジョンであんまり攻略者がいかない。ただ、多くの攻略者が集う住吉ダンジョンと同種の魔物が出現するため、それを考慮して挑む攻略者は意外と少ない。ダンジョンレベルが低いうちは、こういう次を見据えて動こうとしている攻略者が限られているのだ。


「それもこれも全部小野寺さんのおかげです!色々教えてもらって、ホント感謝しかないです!これからもっと頑張っていくんで見ていてください!」


「あーうん。まあ頑張れよ。俺も抜かれないよう頑張るから」


 頭を深々と下げている持林と芳井に若干の居心地の悪さを感じながら、俺も適当に返答する。3人がにぎやかに話しかけてくると、そろそろ図書係の人から静かにしてほしそうな目線が来そうだ。できればなるべく早めに切り上げたい。


「そう言えば小野寺さん。もしよければなんですが、俺たちのパーティに正式に入ってくれませんか?」


「ええ?」


 しかしそうは問屋が卸さない。3人を代表して持林が俺にパーティの勧誘をしてくる。何だろう、最近凄い勧誘されているが、もしかしてどれかに入らないといけない運命でもあるのだろうか。ただ、取り巻き改め改心組パーティには入るつもりはない。流川パーティを断った手前、入るとしてもそれ以上を目指したい。最近『博多ダンジョン』の攻略に触発されてか、様々な有名クランが攻略者選抜試験を始めているらしいし。

 そう言ったことから総合的に判断し、申し訳ないがここはお断りさせてもらおう。


「ごめんけど、俺はまだしばらくは1人で潜るから」


「まあそうですよね。ダメでもともとだったんですが」


「だから言っただろ?こいつはソロ専門なんだって」


 思っていた以上の俺を理解されていたのか、幸いなことにそこまで縋りつかれることもなく身を引いてくれる3人。正直助かるが、意外とさっぱりしているというか、少しだけオイオイもうちょいないんか、と心の中で思ってしまう。


「しょうがないですね。じゃあ小野寺さんはそのまま孤高の攻略者として頑張ってくだいね!俺たち応援してますんで!」


「え、別にずっとそうだって決まっているわけじゃあ……」


「また今度ダンジョン攻略を教えてもらったりするかもですが。それじゃあ俺たちもう行きますね!しばらく学校に来ずにダンジョン攻略に専念するので」


 とか思っていると、なぜか孤独の宿命を押し付けられそうな気がしてくる。たまらず口を挟もうとするも、その前に3人ともスタコラサッサと図書室から出ていく。図書係の人からまたこの人たちかという目線を受け流しながらとそのまま走り去っていった。


「あっ、人の話は最後まで聞けよ。まったく」


 眉間にしわを寄せてボソッと愚痴る。ただ、あの奔放さや高校をさぼってでもダンジョンに向かう克己心は見習いたいものだ。一応ダンジョンコースは別として、普通に高校へ通う分の学費は親に払ってももらってはいる。だから、あまり高校をないがしろにするつもりはない。が、それを無視してでもダンジョンに行きたい気持ちは少なからず俺にもあるのだ。


「まあ、いつかその時になったら考えるか。しばらくは1週間に1ダンジョン生活だしな」


 とはいえ、さすがに1つのダンジョンを攻略するのにもかなり時間を費やさなければならなくなってきている。先日のダンジョンレベル12と13もそうだったが、どんなに早くても平均で1.5日はかかる(それでも普通の何倍も速いのは間違いないが)。日々のトレーニングや休息のことも考えると、もしかしたら今の攻略スタイルが良いのかもしれない。

 誰に言うでもなく小さく一息こぼし、俺は予鈴のチャイムを聞きながら教室に戻るのだった。

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