56 どうやら必然だったようですね
結局希少魔物を倒すことができず、トボトボとセーフゾーンまで進む。希少魔物の捜索と最後の追いかけっこで既にフロアマップがほとんど完成しており、いつもより何倍も遅い歩みではあったものの、1時間もすればセーフゾーンへとたどり着くのだった。
「はあああ」
「大きいため息だね」
「そりゃそうじゃん。目の前で横取りされたんだから、ため息でもつきたくなるって。はああああああ」
逃した魚は大きいとはよく言われるが、実際にそんな状況になると海の底まで追いかけていきたい気持ちが湧いてくる。しかしすでにいないのであれば打つ手もなく、気分は沈んでいく一方だ。
「それで、さっき僕が言ったことはわかった?」
凹んでいる俺にまだまだ講師モードのステアは問いかけてくる。そんな気分ではないものの、少しだけ頭を働かせてぶっきらぼうに答える。
「希少魔物は知能があるからこそ、生まれ変わるために逃げるって話だっけ。まあ、なんとなくは」
数学の対偶なんだかに当てはめて考えたら、『逃げないならば生まれ変われない』ということをステアは言っていたのだ。逃げないということは攻略者と戦ってそのまま倒されることであり、そうなってしまうと生まれ変われない。ということならば、逃げて別の魔物に倒された場合は生まれ変わってまたダンジョンで復活できるということがステアが言いたいことなのだろうか。
というか、攻略者以外になら倒されても復活できるとか、なかなかに突拍子がない話だ。確かにこれまでの研究ややなんやらで証明はされてないと思うが、そんなことが本当にあり得るのだろうか。
「まあ、正直よくわからないし、今回ばかりは嘘半分で聞いておくよ。それそうと魔石をそろそろ食べようと思うんだが」
考えすぎて頭が痛くなりそうな気がしたので、それとなく話題を変える。
「そっか。まあすぐに信じることになると思うけどね。で、魔石は今何個あるんだい?」
いつものように意味深なことを言いながらも、ステアはその話題替えに乗っかってきてくれる。
「俺の記憶が正しければ5個だな。新しく特殊スキルを得るには少し心もとないが、今ならちょうど腹も減っているからな。バフポーションを使わずに済みそうだし、ちょうどいいタイミングだ」
マジックバッグをあさり、5個の魔石を手に取る。赤青黄色とカラフルなおもちゃ玉に見えるそれらをまとめて飲み込む。湧き水もごくりと飲み、魔石の摂取が完了する。特殊スキルを得られたらどうか判別がつくまで少しだけ武器の手入れも行っておき、数分ほど時間が過ぎるのを待つ。そしてその後、ステータスカードを確認するとそこには新たな文字が書かれていた。
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なまえ:小野寺太郎丸おのでらたろうまる
とし:16
しゅ:ひと
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ついかこうげきりょく:1685(+420)
ついかぼうぎょりょく:1646(+423)
まなりょう:1326(+406)
ついかいどうそくど:1592(+404)
ついかまほうこうげきりょく:1581(+417)
ついかまほうぼうぎょりょく:1843(+444)
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ふれいるすいんぐ
すらむだうん
かうんたーばらんす
ついかこうげきりょく1.1ばい
ついかぼうぎょりょく1.1ばい
ついかいどうそくど+100
ついかまほうぼうぎょりょく1.2ばい
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あじゃすとうぉーく
わーどらんげーじ
すとろんぐあーむ
すてあさーち
ぽいずんれじすと
いれぎゅらーいぐじすと
ふるすとーかー
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さいだいだんじょんれべる:11
だんじょんこうりゃくりれき:『おおほりこうえんだんじょん(10):10かい』
『すみよしだんじょん(4):2かい』
『かごしまちゅうおうだんじょん(11):14かい』
『おおほりこうえんだんじょん(10):11かい』
『おおたけだんじょん(9):11かい』
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「んー、ステータスだいぶ上がってきたなあ。お?新しい特殊スキルがあるぞ!どれどれ、『ふるすとーかー』?ストーカー?」
「お似合いだね」
「なんでだよ!」
さすがにダンジョンレベル10を超えると増えるステータスがどんどん加速していくのを実感しつつ、新しく特殊スキルが手に入っていることに気づく。しかし、なぜか不名誉な称号っぽくもあるそれに若干不満を覚えてしまう。何だストーカーって?効果の候補はなんとなく思いつくが、それ以上に名前の響きが良くない。
「まぁ、さっきのあれ見てると、ねぇ」
「うっ……そう言われると、確かに……」
心当たりがないと言おうと思うも、その前にステアによって機先を制される。そういえばと、ほんの1時間前の自分の所業を思い出し、世間一般ではストーカーと何ら変わりのないことをしていたと気づく。なんというタイミングだろうか。俺がストーカーみたいことをしている時にこんな特殊スキルを得るなんて。
「みたいじゃなくて、まんまそうだったよ」
「うるさい」
どこかうすら笑いを浮かべているように感じるステアに煽られるも、振り返ってみればまさにその通りで返しにも覇気がこもらない。こういう時はさっさとダンジョンをクリアして頭をすっきりさせた方がいいだろう。
「今日はもうダンジョンボスを倒して終わりだ。さっさと帰って残りのゴールデンウィークを楽しむんだからな」
一度はクリアしたことがある大濠公園ダンジョン。前回同様、14匹のビッグヘッジホッグたちが群れるフロアに足を踏み入れるやいなや、鋭いビッグヘッジホッグの針をステータスカードで片っ端から投げ切り落とし、最後はアイアンバンブージャベリオンを振り回しながら蹂躙するのだった。
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「ありがとうございました。またのご利用お待ちしております」
「ありがとうございました」
あっという間に終わったダンジョンボス戦もそこそこに、ダンジョンから脱出した俺は特に売却するようなドロップアイテムもなかったので、すぐに帰路につこうとする。自動ドアから外に出ると、心地よい夜の風が顔に当たり、戦闘で火照った体が冷めていく。
そして同時に眼もにわかに覚めていき、どうせならと博多駅の駅前モニターで博多ダンジョン攻略中の英雄たちでも見ていくかと、予定を変更する。
数分ほど歩き、博多駅前に着くと、俺のほかにも若い攻略者パーティや地元のやんちゃそうな子供が集まっていた。時間も時間だが、ゴールデンウィークでもあるので、たまには遅い時間までこんなことをするのもありだろう。
モニター前に近づき、流れる映像をぼんやりと眺める。現在博多ダンジョンを攻略しているパーティは以前から変わらず4パーティのまま。こんな夜遅い時間でも2パーティが攻略中のようで、慎重にダンジョンを進んでいる。何か学び舎新しい発見がないかなあと淡い期待を持ながら、その様子をしっかり見学させてもらう。
そうして日付が変わるその時まで、彼らの雄姿を見させてもらい、俺の人生で迎える最後の平和なゴールデンウィークの初日が終わるのだった。




