53 住吉ダンジョン攻略の同伴 その2
「ゴブリン2体と単眼コウモリ1匹だ。単眼コウモリはすでに19回鳴いている。増援が来るまでにゴブリンは絶対に倒し切るんだぞ」
「「はい、小野寺さん!」」
「やりゃあいいんだろ、やりゃあ」
現在、持林達3人と俺の4人組パーティは住吉ダンジョン2階層を攻略していた。
俺にしか見えない矢印には従わず、持林、芳井、織田の3人に進む方向は任せながらの攻略だ。1階層は最初の『ウルフストレイズ』以外の魔物とは運よく出会わず抜けられた。ただ2階層はそうもいかず、こうしてさっそく会敵しているのだった。それに単眼コウモリもすでに仲間呼びは終わっている状況だ。もたもたしていると相手の増援を含めた計22体の魔物を相手にしなければならなくなる。
その事実を正しく認識しているかは分からないが、少なくとも、持林達3人には敵の増援が来るまでに是非とも目の前の敵をせん滅しておいてほしいところである。
仲間を呼び終わった単眼コウモリと2匹のゴブリンが3人に襲い掛かる。隊列は互いに横1列に並び、それぞれ眼前の敵へと攻撃の打ち合いを始める。
「『一閃』!」
「ギャッ!?」
最初に均衡が崩れたのは持林とゴブリンの一騎打ちの戦闘だった。すでにもっとレベルの高いダンジョンをクリアしていただけあり、棍棒をやみくもに振るうゴブリンの攻撃後の隙を狙い、首へ素早く攻撃スキルを放つ技術を披露してくれた。その攻撃は見事に通り、ゴブリンを光の粒子へと変える。
「ギャ……」
「よし」
「キィ……」
「ちっ、何も落とさないか」
そして間もなく芳井と織田も、自らの相手だったゴブリンと単眼コウモリを倒し切る。時間にしておよそ1分弱と手早く敵をせん滅できたようだ。
まあ持林や芳井といったダンジョンレベル4攻略済みの攻略者もいるので、これくらいはできていないと困る。ドロップ品が何も出ず、悪態をつく織田と未だ戦闘態勢を崩さない持林と芳井を見ながら。俺は手短に今の一連の戦闘について総評する。
「戦いに関しては全然問題ないと感じた。ただ、織田だけ最後の残心が良くない」
「ああ!?なんで俺だけなんだよ?お前適当言っていると――」
しかし織田がすぐに反抗しようとしてくるが、それを手で制して先に俺の意見をぶつける。
「すぐまた戦闘になる。単眼コウモリの最初の行動の意味、分かっていないだろ?」
「……増援が来るんだろ。知ってるんだが?あんな雑魚なら問題はない」
捻くれた態度で俺の話を聞きつつも、少し反抗の態度を示す織田。仮に増援が1匹ならば、個人的に好ましくはないが、あのような残心でも大きな問題はないだろう。ただし今回の援軍は桁が違う。
「芳井。何匹の単眼コウモリが来るか分かるか?」
「19匹です」
「なっ……!」
「分かっただろ。織田、お前は単眼コウモリ1匹倒すのでさえ他2人より時間がかかっている。そんな状況なのに戦闘態勢を解いている余裕はあるのか?」
『キイイイイィィィィ!!!』
遠くから単眼コウモリの鳴き声が合唱のように重なって聞こえる。その数総勢19匹であり、そのすべてが怒気に満ちている。
織田はその声に対して呆気に取られ、持林と芳井は剣を強く握り、迎え撃つ体制をとる。
「いいか織田。別にダンジョン内では常に集中しなければならないというわけではない。俺だって気を抜くことはある。ただそういったことは本当に安全であるかを確認してからだ。『単眼コウモリは仲間を呼ぶ』ということ知っていれば、決して油断はできないはずだ。持林と芳井のようにな」
そうは言いつつも、遠くに見える単眼コウモリの群れを観察し、さすがに19匹をすべて3人に任せるには多すぎると判断する。おそらく俺がこのパーティにいるせいで、持林達3人だけのパーティの時よりも援軍の数が多くなっているのだろう。さすがにそのせいで彼らが苦戦を強いられるのは諸々と良くないので、何匹か減らさせてもらおう。
「ステータスオープン、ステータスオープン、……」
「えっ!?」
「速すぎて何してるか見えない……」
こちらに向かってくる単眼コウモリに向け、俺は素早くステータスカードの召喚と射出を繰り返す。都合10回の攻撃を数秒で終え、飛んでくる単眼コウモリを9匹にまで減らした。ステータスカードに斬られた単眼コウモリは1匹残らず光の粒子と化していた。
「敵は減らした。これくらいは倒してくれよ」
「「は、はい!」」
「ッ!なんなんだよ、アイツは!」
持林と芳井は力強く返事をし、武器を振るって3匹ずつ単眼コウモリを相手取る。残る織田は俺に悪態をつきながらも、必死に単眼コウモリの連携攻撃を避けていく。そんな彼らの動きを観察し、戦闘状況を適切に見極めていく。
「持林と芳井は1匹ずつ敵を減らそうとしているな。ただ、織田は防戦一方だな」
俺はナイフを構え、織田にまとわりつこうとする単眼コウモリを1匹減らそうと構える。さすがに病み上がりの人間に1対3は厳しかったかと俺は反省し、織田を狙う単眼コウモリの中で最も織田から離れている個体に狙いを定める。しかし、その瞬間、声が上がる。
「『一閃』!!織田あああ!シャキッとしろおおおお!」
それは3体の単眼コウモリを背負いつつも、織田を狙う単眼コウモリへ攻撃スキルを放る持林の声だった。その攻撃は見事単眼コウモリを真っ二つに裂き、光の粒子へと変える。
「持林!後ろ来てるぞ!!」
「ナイス芳井!」
それと同時に持林は背後から襲い掛かってくる単眼コウモリに反応し、武器を横に持って確実に受けきった。芳井の咄嗟の声掛けと持林がその声に正しく反応した結果である。
「織田!強くなれ!俺も、強くなるからなあああ!」
持林はそのままの状態で壁へと突進し、武器にしがみついてくる単眼コウモリを壁と武器で圧する。
俺は余計なお世話をするところだったと、ナイフを腰に戻し、その後の戦闘を見守った。
持林のファインプレーで流れをつかんだのか、3人とも怪我することなく、単眼コウモリ9匹のうち、4匹を持林が、3匹を芳井が、2匹を織田が倒すことで決着した。その場に魔石が3つと、離れた場所で魔石が2つ落ちており、それらを拾いつつ、改めて3人に声をかける。
「連戦はどうだったか」
「結構しんどいです」
「複数の魔物を相手にするのは集中力が削られます」
「……持林に助けられなかったら、どうなったか分からなかった」
ここにきて初めて織田からちゃんとした言葉を聞けた気がする。それに各々自分のことが見えているような発言をする。なんだなんだ、ちゃんとすれば己を顧みたり、成長のための道筋を見つけたりできるじゃないか、と感心してしまう。やはり彼らがあれだけ横暴になっていたのは二階堂の近くにいたせいなのだろう。攻略者としてのポテンシャルまでないわけではないようだ。
「思っている以上に攻略者としての心構えをわかっているように思う。それに途中で持林が織田を助けたように、時には互いに助けを出しあうような行動はパーティとして絶対にしなければならないものだ。1人でも倒れたら、それはもうパーティじゃない。ただの個人の集まりだ。その状況に陥らないように考え行動し、時には仲間同士で声をかける。それこそがダンジョンに挑むべき攻略者の姿だ」
いつの間にか3人ともまじめな顔で俺の言葉に耳を傾けてくれている。先の一戦で思うことがあったのか織田も黙って俺の話を聞いている。
「ちなみにこの言葉はダンジョンコースの最終試験前の講義で習ったものだ。もちろん覚えていないともうけど」
ここで3人とも苦虫を噛み潰したような表情になる。後悔、あるいは反省かもしれないが、その表情が見れただけで俺は少しだけ安堵の気持ちになる。
「だが、先ほどの戦いではそれを見事に体現していたと思う。攻略者パ-ティはかくあるべきだ。それさえ知ってもらえたら、あとは各々が考え、努力し、強くなるだけだ。あとは頑張れよ」
「「はい!!ありがとうございます!!」」
「……分かってるよ」
元気な持林と芳井、そしてぶっきらぼうながらも何かが変わった織田。そんな3人の姿を見て、俺は何とか講師らしいことができたかなと満足する。ここまですればあとはもう大丈夫だろう。
「じゃあ俺はここまででいいな」
俺はマジックバッグから『脱出のスクロース』を取り出す。いつぞやの流川と同じように『脱出のスクロース』を破り、ダンジョンから脱出するのを待つ。流れるような動きに3人とも一瞬何が起こったか分からないようだが、俺が脱出するから離れていろと伝えると、すぐに俺から離れ、脱出する俺を見守ろうとしてくる。
「小野寺さん、ありがとうございました!俺たち、きっと立派な攻略者になります」
「もしかしたらまたお力を借りたい時があるかもしれませんが、その時はまたお願いします!」
「……少しはお前の言うことやってやるよ。二度と負けねえためにな」
3人とも各々抱負を語り、その姿を見ると少しだけ優しい気持ちになる。そのまま正しい攻略者になってくれることを願いつつ、俺はダンジョンを脱出するのだった。
主人公
「思っている以上に攻略者としての心構えをわかっているように思う。それに途中で持林が織田を助けた行動はパーティとして絶対にしなければならないものだ。1人でも倒れたら、それはもうパーティじゃない。ただの個人の集まりだ。その状況に陥らないように考え行動し、時には仲間同士で声をかける。それこそがダンジョンに挑むべき攻略者の姿だ」
3人
(((小野寺は1人で攻略者してなかったか?)))




