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51 ダンジョン攻略のお誘い

 翌日の4/30は昨日決めた通りに、鹿児島中央ダンジョンではなく、別のレベル9のダンジョンを攻略した。やはりダンジョンレベル11と比較すると、簡単に攻略できてしまうが、それでも油断はしない。基本的に遠隔攻撃での即討伐を心掛け、完全なる安全マージンを確保しつつ、1日で3周を達成する。

 ただ、俺はすでに別のレベル9のダンジョンを攻略済みなので、ダンジョンボスを倒しても何もドロップはしない。そのため、道中の魔物から手に入る魔石や1つだけ手に入った『脱出のスクロース』を売り払うことで稼ぎを生んでいく。受付の人から見れば1日に何度も魔石を売りに来る不審者に見えていたことだろう。

 まあそれは仕方ない。1日中こもりきりで魔物を倒し続けようとしたらステアが「ダンジョンボス怖いの?」とか言ってくるから俺の雄姿を見せつけるためにダンジョンシャトルランをしようと決めたのだから。結果的にクリアごとに魔石を持っていくことになったのだ。


 閑話休題。


 まあ何はともあれ、この土日での目的であった『ダンジョンレベル11の攻略』は達成でき、ついでに移動費もこの2日間の稼ぎでまかなえた。さらに『いれぎゅらーいぐじすと』の取得と希少魔物の討伐まで成し遂げられたので、満点と言ってもよい遠征だった。

 経験も十分得られ、近々始めrうゴールデンウィークに想いを馳せつつ、そんな感じで4/30の夜に自宅に帰るのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そして少しだけ時は過ぎ、5/2の昼下がり。1人で過ごす高校生活にも慣れたころ、俺はいつかのごとく、昼休憩の時間に校舎裏へと呼び出されていた。


 相手はもちろんあいつらだった。


「小野寺さん!明日、ぜひ俺らとダンジョンに潜ってください!」


「お願いします!あの流川パーティと一緒に攻略したその力を見せてください!」


「何なのお前ら……?こいつはあのがり勉野郎だろ?何言ってんだ?」


 発現順に持林、芳井、織田が俺にそう話しかけてくる。いや、織田は他の2人に言ってるな、これ。頭を深々と下げている持林と芳井に対し、織田は理解できない表情で2人と俺を見ている。そういえば織田は俺の実力について何も知らないはずなので、そういう態度もうなづける。


 織田は、つい最近まで病院にいた。推定、コマンドラビットによる攻撃で怪我をしてしまい、その回復に努めていたはずだ。しかし今はギプスすらつけておらず、はたから見ればけがは関知しているように思う。もうダンジョンに行こうと思えばいつでも行けそうだ。

 なんて思いつつも、いつまでたっても頭をあげない2人に声をかけることにする。あくまで冷静に諭すような感じで。


「いやいや、最近は2人とも同じダンジョンコースを受けてた皆と仲良くやってるって聞いてるよ。2人とも前と比べてすごい接しやすくなった言ってたし、俺なんかよりもその人たちとパーティを組んだ方がいいって」


 作った笑みを顔に張り付け、噂で聞いたことを針小棒大に伝える。本当は(二階堂がいなくなって変なことをしてこなくなり)接するのが(前より)怖くなくなったらしいのだが、そこまで伝えることもないだろう。


「そうだぞ、お前ら。こいつなんかよりもほかの奴の方がいいだろうが。さっさと強くなってあの二階堂を超えるんじゃなかったのか?」


 すると織田が俺の説得をアシストしてくる。ただ、自分で言いはしたが、悪びれもせずこうも過小評価されるとせっかくの笑顔が引きつってしまう。だがそれでいい。もともと彼らが元ダンジョンコースの受講者と仲良くしろと言ったのは俺なのだ。その方向にもっていくのならばいくらでも耐えてやろう。


「織田さあ、俺たちの話を聞いてなかったのか?小野寺さんは俺等よりも強いって言っただろ?」


「しかも織田がやられたコマンドラビットも1人で倒してたんだぜ?」


「ぐう……、だとしてもだ!俺はこいつとなんて組まねえ!」


 何やら言い合いをしている元取り巻き達。若干俺の思惑通りに進まなさそうな雰囲気を感じ取り、俺は教室に戻らせてもらうと踵を返す。すると、それに気づいた持林が俺に縋りついてきた。くそっ、攻略者をしているだけあって目ざといな!


「ああ!待ってくださいよ、おj野寺さん!俺たちは織田を待ってたんです!怪我してダンジョンに潜れなくなって、知らないうちに二階堂のパーティからは追放された織田も含めて、俺たちは強くなるって決めえたんです!」


 肩を掴まれ、帰らせまいと訴えかけてくる持林に続き、今度は芳井が腕をつかんでさらに訴えかけてくる。


「それに、俺たちはダンジョンコース中、全く勉強なんてしてませんでした。ダンジョンコースの皆と一緒にダンジョン攻略するには、強くなるだけじゃなく、学びも1から始めないとって思ったんです!小野寺さんは座学は特に熱心だったし、実力もあります!どうかお願いします!」


「ぐぅ……」


 そこまで必死になられっると、何も悪くないはずなのに、なぜか俺が悪いんじゃないかという気分にさせられる。コミュ力無しなだけではなく人に冷たい人間になっているのではないかと頭が混乱してくる。俺はそんな非常な人間だったのかと、胸までも痛くなってくる。

 揺られ揺すられ、正常な判断ができなくなった俺は、あーあー!と叫び、一旦2人を引き離す。そして長いため息を吐き、両手をあげて降参の合図を出した。


「分かった!分かったから、離れてくれ!もういいよ、じゃあ。えーと、ゴールデンウィークだっけ?何回かだけ一緒のダンジョンを潜る、これでいいか!?」


「やった!ありがとう、小野寺さん!」


 無邪気案子供みたいにはしゃぐ2人。そしてそれをよそに、嫌悪感をますますあらわにする織田。


「何してんだよ、お前ら!いいか、俺は絶対にそいつとダンジョンになんていかねえからなあ!」


 そしてそのままどこかへと去っていく。その後ろ姿を見た持林と芳井は、顔を見合わせ何かを覚悟したような顔つきで、織田について話し始めた。


「あいつはさ、一番初めに二階堂の仲間になったんです。そのあと俺や芳井も二階堂のもとで好き勝手やり始めました。ダンジョンコースも座学なんてまともに受けず、戦闘訓練の時間だけもともとの力の強さを誇示する、まるで自由人にでもなった気分でした」


「それに二階堂のおかげで、何不自由なく攻略者としてスタートできました。唯一、二階堂のマジックバッグを焼失させえたことだけが気がかりだったんですが。それも全部小野寺さんのせいにして。よく考えればどこかで止まれたはずでした。こんなことしてたらいつか手痛いしっぺ返しを食らうって」


「それがまさか二階堂からの制裁だなんて思わなかったですけど。ただ、1度やられる側になり、小野寺さんや流川さんにもいいようにやられてようやく気付いたんです。俺たちがどういう人間だったのか」


「多分織田も心の中では分かってます。あんなに悪いことをした俺たちは、今更だけどダンジョンコースの皆に償わないといけないんだと。だからこそ、小野寺さんとのダンジョン攻略は絶対に行かせたいんです。本当のダンジョン攻略を知り、攻略者という命がけの職業を知り、そして力だけは強い俺たちがダンジョンコースの皆の役に立たないとって」


「だから俺たちはダンジョンレベル4の攻略から、織田と一緒に再開するんです。それが償うために第一歩な気がしてます。3人とも同じところからリスタートして、同時にゴールするために!」


「それに最終的には……いや、これは今言うことじゃねえか。とにかく!何が何でも織田は連れていきます。だからさ明後日の5/3の朝9時に『住吉ダンジョン』で待っててください!」


「お願いします!それじゃあ織田をおいかけるんで俺たちはこれで!」


 あっという間に去っていく2人。最後に好きかって言いたいことを言っていたのだが、要は彼らなりの罪滅ぼしだろう。俺と2人の間で起こった攻略者同士でのもめ事をなかったことにし、わざわざ攻略者としての立ち位置を残したのが良いほうに動いていそうだった。

 我ながら悪くない行いだったなと自画自賛しつつ、同時に、ほんの少しだけ友達という存在に尊さを感じたのだった。

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