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50 脱出後のひと悶着

モニターに続き、キーボードも壊れました。

変な誤字が増えても悪しからず。

「はああ、大変だった」


 ダンジョンボスの部屋で辺りが暗くなった後、ゆっくりと明転っし、晴れてダンジョン脱出が完了した。ただ、時間も深夜ということもあり、辺りにはほかの攻略者は誰もいない。ダンジョン攻略中であればセーフゾーンや『結界のスクロース』を使い、休息をとっているのだろっし、もしダンジョン攻略を途中棄権するのであれば、終電も残ってい時間に切り上げ終えているはずだ。

 今ここに俺しかいないのは、そういったダンジョンの当たり前を普通に無視したせいなのだ。

 だとしてもその行いに間違いはない。結果としてダンジョンボスをたったの半日で倒すことができたのだから。


「すみませーん!デバイスの返却と買取りをお願いしまーす!」


 静かな施設の中、いつものように受付に声をかけると、奥から一人のお姉さんが出てくる。おそらく夜勤だろうが、俺みたいに変な時間にダンジョンクリアする攻略者からすると本当にありがたい存在だ。なのでちょっと眠そうにしているのは見なかったことにしておく。


「お待たせいたしました。はい、デバイスと攻略者証明書、ありがとうございます。買取りはいかがしましょう?」


「じゃあダンジョンボスのドロップ品の査定をお願いします」


「えっ、あ、はい。それではしばらくお待ちください。査定が終わりましたらお呼びいたします」


 マジックバッグから『眠れる巨人の赤子の角』を渡すと、受付のお姉さんは目を見開く。少し辺りを見回し、俺以外に攻略者がいないことを確認したのか、さらに目を見開く。どうやら俺が1人でこのドロップ品を持ってきたことに驚いているようだ。普通ならばパーティで挑むような相手から得られるものだから無理もないだろう。おかげで先ほどまでの眠気も吹っ飛んだようで何よりである。


 これで変な査定をしてしまうこともないだろうと、一安心し、受付から離れ、ダンジョン情報をあさろうとする。若干体中からさっさと休ませろという痛みのシグナルが発せられている気がするが、それよりも情報だ。ついさっき倒した『スリーピージャイアントベイビー』の情報を中心に調べ物をする。


「うわ、ホントじゃん。海外の攻略者が検証してるじゃん。『スリーピージャイアントベイビー』は目への攻撃以外でも立ち上がり、狂乱状態になるって。知らんかったわあ」


 これから攻略するダンジョンのレベルが上がるごとに、こういったことは増えていくだろう。もしかすれば、調べても出てこないような場面にも遭遇するかもしれない。

 今回のスリーピージャイアントベイビー戦では、力及ばずとも技でも優位に立てたが、今後はそれも危うくなる可能性がある。事前に調べる量を増やそうかと思案に耽っていると、受付の方から声がかかる。


「小野寺さん!査定が終わりました。受付までお越しください!」


 どうやら査定が終わったようなので考え事をやめ、そそくさと受付へ向かう。


「『眠れる巨人の赤子の角』の査定結果ですが、20,000円となります。こちらでよろしいでしょうか」


「はい、それでお願いしsます」


 諭吉を2枚受け取り、財布へと収める。内心では大金の獲得に大盛り上がりだ。これだけで自宅からこのダンジョンまでの往復料金をほとんど賄える。明日もこのダンジョンに潜れば、ここまで遠出をしたにもかかわらずおそらく収支をプラスで終えられるだろう。


「はい、それではお疲れさまでした。ダンジョンの開場は午前9時となりますので、再入場したい場合はまたお越しください」


「はい、わかりました」


 ただ、そんな喜びを毛ほども出さずにいると、追加で案内をされた。そういえばと、ちらりと昼頃入場っした門の方を見ると、いつもは開いているダンジョンへの入り口が閉まっている。あの不気味な文様が夜間はいつでも見られるということだろう。

 久しぶりに生でダンジョンの入り口を見て少し見入ってしまいそうになるも、入ることはできないので、このあたりで切り上げることにする。それじゃあこの時間でも受け入れてもらえそうなネカフェを探そうか、そう思った時、


「あ、生きてたんですね!」


「こらっ!なんて言い方しているんですか!」


 聞こえたその声は、このダンジョンに入る前に俺が1人であることを心配してきた受付の人だった。片方の頬を赤くしており、仮眠でもしていたであろうその人は、ほっとした表情で話しかけてくる。隣のお姉さんはあきれた様子でため息をついて注意をする。

 そりゃ一応仕事中なのだから、あまり砕けた話はしないほうがいいだろうな。だか、肝心の彼女はそうは思っていないらしく、五月雨に言葉を続けてくる。


「ずっと怖かったんですから。1人でレベル11の鹿児島中央ダンジョンに行く人なんていませんでしたし、何日も迷う前に戻ってきてくれてうれしいです!」


「あーえっと」


 なかなか強烈な方だ。今朝もそうだったが、思い込みがかなり激しいほうなのだろうか。言っていることは十分全うな分、ピュアで反応しにくい部分があり、俺は言葉に詰まる。あと俺が危なくなる前に逃げ帰ってきたと思っていそうだ。俺がなんて返そうか迷っていると、もう一人のお姉さんが、先ほど買い取ってもらった『眠れる巨人の赤子の角』をわざわざ納品箱から取り出してくる。


「ちょっと小谷ちゃん。小野寺さんはちゃんとダンジョンをクリアして戻ってきたのよ」


 ナイスアシストと言いたくなるが、一応他人ではあるので、どや顔をするだけにとどめておく。そんな俺と『眠れる巨人の赤子の角』を交互に見て、小谷と呼ばれたその人は口をあんぐりと開ける。どうやら俺がダンジョンクリアしたと気づいたようだ。

 たっぷり10秒、そのまま固まった小谷は急に態度を変え、手の平同士をすりすりとこすり合わせて受付から出てくる。


「おにいさんお強いですね~。てっきりダンジョンを舐めている若手冒険者かと思いましたが、意外に実力はなんですね~」


 急にぶりっ子みたく声音を変えてくる小谷に対し、俺は身の毛もよだつ悪寒を感じる。これはあれだ。女性に免疫がないのと、持林や芳井に慕われた時の厄介さを同時に感じているせいだ。コミュ力ない人間として痛いところを突かれた!と勝手にドツボにはまっていく。


「あ、あはは、そ、そんなことないですよ」


 俺は一歩後ずさりつつ、苦笑いを返す。知らない人に絡まれた時の対処方法など俺は知らない。もう一人の受付のお姉さんに目配せしてみるが、あちゃーという表情しかしておらず助力はいただけそうにない。くそお、あんたこの小谷とかいう人の上司だろ。と声をあげたくなるが、俺のコミュ力がそれを妨げる。結局俺にできるのは雑に煙に巻くことだけだ。


「あっ!もう時間も遅いので失礼しますね。ありがとうございました」


「あ、ちょっと~」


 攻略者の足の鍛え方をなめるなよと言わんばかりに、その場から足早に去っていく。どうせ労働中ならば俺を追いかけてくることもできまいと、さっさと夜の鹿児島の街へと逃げていく。これでもう絡まれることもないだろう。

 戦闘の疲労とコミュニケーションの疲労を抱え、近くのネカフェへ駆け込んでいく。起きたらもう一度ダンジョンに行くため、毛布にくるまり、疲れた体を癒すように何とか寝るのだった。


「コミュニケーション能力は、うん、ちゃんと鍛えないといけないな」


 そんなことを寝る前に思いながら。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「もう、小谷ちゃん、攻略者相手にフランクすぎるよ」


「ごめんなさい、でも1人でこのダンジョンを攻略するなんて思っていなくて」


「たしかにそうだけどさあ」


「それにあの人、昨日のお昼くらいにダンジョンに入ったんですよ。攻略速度早くないですか?」


「昨日?じゃあ40時間くらい?まあ早いかもね。私が前回ここに来たのは3日くらい前だから、あの攻略者を見てはいないけど」


「そうじゃないです!もう日付過ぎてますから!あの人はたったの半日でクリアしたんですよ!」


「ええ!?それホント?いくら何でも早すぎるんじゃないの?」


「本当です!だったら今の人のデバイスから確認しましょう!きっと14時間とかその位ですから」


「そんなに言うなら……って、何言ってるんだい。ここ見てみなよ。デバイスで攻略時間を計測してから『38時間』ってなっているじゃない。もう、本当何言ってるのよ」


「え?そんなはずは……?あれ?なんで?どうして?」


「きっと寝ぼけてるんだよ。小谷ちゃん、あんた今日は午前中から働いていたんだろう?ほら、もう少し横になりなさい。もう攻略者なんて出てこないから安心して寝ていいわよ」


「ええ~?いったいどうなっているんですかあ~」


「ははは、あわてんぼうだねえ。もしそんな攻略者がいたら世界ひっくり返っちゃうから!ほら、早く早く」


「うええん、ちょっと寝てきます~」

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