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44 まじめな特訓と博多ダンジョン攻略の途中経過

 4/23の日曜日。晴天の空の元、今日はダンジョンには潜らず、特訓と休息、そしてとある番組視聴に充てることにした。


 昨日、大濠公園ダンジョンの攻略と石拾いこと武器集めを終え、すぐにでもダンジョンに向かう準備を整えた。しかし、あいにくとダンジョンレベル11のダンジョンは自宅の周辺にはない。最低でも片道3時間はかかるので、他の予定も相まって自宅で過ごすことに決めたのだった。


 朝早く、庭には二羽雀が餌を求めて地面をチュンチュン歩いているが、危ないからねーと言いながら『アイアンバンブージャベリオン』を振って追い払う。そして誰もいなくなった広い庭の中心に立ち、アイアンバンブージャベリオンを構える。


「はあ!!」


 そして気合を入れ、アイアンバンブージャベリオンを前後左右、あらゆる方向へ向けて振るう。新しい武器ということもあるが、どちらかと言えば今の俺では逆立ちしてでも手に入らないであろう武器を使ってみたいという気持ちの方が強い。触り心地を吐息時確かめつつ、『ふれいるすいんぐ』を発動する気持ちで、全力で振るい続ける。息も切れてくるころには、すでに両手の握力も限界に近く、アイアンバンブージャベリオンを持っているだけで精一杯になる。


「はは、やっぱりステータスは偉大だな。多分もうダンジョン内の動きに近づくのは無理かもしれんな」


 地面に胡坐をかいて座り、ダンジョン内との動きの才を改めて実感する。それでも少し休憩をはさみ、次は大濠公園ダンジョンで『シルバーバルーン』と戦った動きを再現する。


 突きに振り払いに、相手の攻撃を反らす動作を模倣する。そして最後のアイアンバンブージャベリオンの一擲(いってき)だけは地面に向かって放ち、庭にアイアンバンブージャベリオンを突き刺して模倣を終える。刺さったそれはさながら庭に生えた銀色の竹のようだった。

 偶々発生したその状態に少しだけ庭のインテリアとしてありかと思ったが、盗まれたりしたら嫌だなと思い直し、捩じり回しながら引っこ抜く。そしてそのまま再び地面へへたり込んで、呼吸を整える。


「ふう、一通り動いてみたけど、多分ダンジョンの中での動きの1.5倍は時間がかかっているな。どんどん離されていってるのはちょっと悲しいよな。……いやいや、それでもこの特訓には意味があるんだからやらないとな」


 ちょっとナイーブになりかけるも、すぐに頭を振り、午前中いっぱい、休みと訓練をひたすらに繰り返していく。本当に力尽き、昼も少し過ぎたころ、今日の鍛錬はそこまでにすることにした。


 シャワーを浴びてリビングでゴロンと寝転がる。網戸から吹き込む春の風が気持ちよく、つい転寝(うたたね)をしてしまいそうになる。


「危ない危ない。今日は博多ダンジョン攻略の特別番組を見るんだった」


 しかし気合で目を覚まし、本日のもう1つの予定を思い出す。垂れかれたよだれを拭き、テレビの電源を入れる。

 今日は博多ダンジョンの攻略の途中経過とこれまでの振り返りをする番組が生放送されるのだ。事前に分かっているのは日本ダンジョン委員会の副委員長である佐々木愛(ささきあい)が解説者の一人として出演することだけだ。噂では蒼月団の元副団長や首相も出演するなど憶測が飛び交っているが、さすがにそんなことはないだろう。

 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そうして時刻は午後1時を過ぎ、待ちに待った番組が始まる。


『博多ダンジョン攻略の最前線を追え!』とでかでかとテロップが表示され、湾曲した長いテーブルに司会者が座っている様子が映し出される。司会者は笑顔で丁寧に頭を下げ、横に座る出演者たちの紹介をしていき、出演者が次々カメラに抜かれていった。ダンジョン研究者や専門家、事前情報通りのJPDCの副委員長の佐々木愛と名だたる顔ぶれが流れていく中――


『どうも、流川天馬です。どうぞよろしくお願いします』


「うぇええええ!?流川さんじゃん!なんで出てんの!?写真とっとこ」


 そこに昨日まで一緒にいた流川が突如として現れた。スマホでテレビに映る流川を撮りつつ、テレビの音量を少し上げる。本当にあの流川だよなと、まじまじと画面をのぞき込む。


『流川さんは若手攻略者でも大きく注目されている超新星として有名ですよね!今日はお忙しいながお越し下さり、ありがとうございます!』


『いえいえ、僕も所属予定の『宵の明星』クランが博多ダンジョンで頑張っていますから、こうしてクランに近しい者として色々話せたらと思っています』


 それを聞いて俺は納得する。『宵の明星』クランは現在博多ダンジョン攻略組の中でも最も奥まで攻略が進んでいるクランだ。確か20階層も終盤に入っているとかなんとか。解説者や話を聞く相手として流川はこの上なく適任だろう。


『それではさっそく、今日の放送予定を紹介いたします!まずは博多ダンジョン攻略の今について、です!』


 流川のインパクトに俺は本題を忘れかけていたが、どうやら番組は最初に『博多ダンジョン』攻略の最新情報をお届けしてくれるようだ。ふむふむと話を聞き、知っていることも多かったが、中には見落としている情報もあったりしたので、意外と有意義な時間となる。


 要約するとこんな感じだ。


 博多ダンジョン攻略中のパーティは残り4パーティとなっているらしい。ここ最近になって、罠ギミックに対処できるスクロース切れによる脱落が相次いでいるそうだ。変に階段が見つからないとそれだけ安全のために消費されるスクロースが増える。その結果として心身ともに元気でもそれ以上は即死の罠を恐れて進めなくなってしまったということだ。

 つまり今残っているクランは階段運がある程度良く、さらに戦力的にも問題ないようなクランというわけだ。残るクランは先頭の20階層を行く『宵の明星』クラン、次点で19階層攻略中の『夜叉天クラン』、少し間があり16階層を行く『黒鉄』クランと『恒河沙』クランである。どのクランも奮闘中とのことだった。どのクランもまだ十分物資を持っていたり力を温存していたりと、定期的にダンジョン内から通信されてくる情報を聞く限り、まだまだ大丈夫そうな印象を受ける。


『博多ダンジョンはおよそ30階層まで続いているという話ですが、この調子だとダンジョンボスを倒すrのはいつ頃になるのでしょうか?』


『そうですね。どのパーティも長期戦の体勢を整え始めています。ですので、6月上旬と予想されています』


『攻略者と言えど人間ですからね。ダンジョンのような閉鎖空間に長いこと居れば、並大抵の精神力でないと身も心も壊れてしまいます。その辺りも注意してもらいたいところです』


 有識者の見解を聞き、俺も同意する。だからこそ、もうこれ以上脱落者を出さず全クランがクリアしてほしい。残りの4クランすべてがダンジョン攻略を達成すれば、それだけで日本のダンジョン熱も上がってくるだろう。


『それでは次は各クランの紹介に移りましょう!早速ですが、『宵の明星』クランから参ります。『宵の明星』クランの設立は4年前で、それまでは自警団としてダンジョン関連で荒れていた九州地方を広く支えていたという話です。流川さん、いずれ所属するクランですが、そういった話についてどうお考えですか?』


『はい、とても立派なことだと思います。ダンジョンという未知が本当の未知として人々を不安にし、各地でダンジョン関連の事件が増えていた中、警察以外にも頼れる組織として行動していたのは、非常に素晴らしいと思っています。だから僕もこのクランに入りたいって思っています』


 ちょっと気になったのだが、流川の口調がいつもと違うようだ。テレビで話すので普通っぽくしているのだろうか。まあテレビ出演なんて俺には関係ない話なので、どうでもいいことは置いておいて、番組の内容に集中する。


『組織としての連弩も高く、博多ダンジョン攻略中も声を掛け合っているのが印象的ですね。いつか僕もその一員として活躍したいと思っています』


『流川さん、ありがとうございます。そうですよねえ、皆さん和気あいあいと言いますか、ダンジョンの中とは思えないくらい和やかな雰囲気ですよね。撮影ドローンを通しても伝わってきます!それでは次のクランに行く前にいったんCMです』


『最新自動撮影ドローン!!今なら税込み200万円!!博多ダンジョン攻略中のクラン愛用のこのドローンは、世界最先端の――』


 CMが始まり、いったん休憩にトイレに向かう。


「確かに『宵の明星』クランは明るい雰囲気だよな。パーティか……、俺もそろそろちゃんと考える時が来るかもな」


 便器に座り、さっきテレビで見た流川、ひいては流川パーティについても考える。確かにあの誘いは魅力的だったが、俺はやはりソロの方が向いているだろう。特殊スキルの存在そのものも重要事項であるし、なによりダンジョンを常に走って移動する力もある。おそらくその点に関して言えば、パーティ攻略は致命的に合わないだろう。もし俺が博多ダンジョンに入れたとし、なおかつ罠に引っかからないとすれば1日で複数階層の攻略が可能だろう。1週間もあれば最深まで行けるかもしれない。


「……そう考えるとやっぱりソロになっちゃうよなあ。ただこのまま行ってもダンジョンレベル30の罠ギミックで詰むか……。まあそんなことはもっと差し迫ってから考えるか。生放送の続き見よ」


 少し思案顔になってしまったが、不安になるkとを考えるのはやめ、再び生放送のダンジョン特番を見ることにした。各クランの特徴や今後の予想、いずれ来るより高いレベルのダンジョン攻略に向けたJPDCの準備など、面白い話題満載の中、3時間にも渡る生放送は終了した。


「来週はダンジョンレベル11か、やってやろうじゃねえか」


 生放送から得た湧き立つダンジョン熱を感じつつ、こうして休みの日が終わっていった。

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