表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/65

43 石拾い

大遅刻すみません

大腹痛(3敗目)

 大濠公園ダンジョンから自宅に戻り、そのまま電車やバスを乗り継いで那珂川へと到着した。那珂川は福岡県の南西部から博多方面に向かって流れる二級河川であり、ちょうどその中流付近に俺はやってきた。ここは都会ほど川は整備されてなく、そこかしこに石河原が存在する昔ながらの場所だ。


 今日、ここに来たのは2つ理由がある。

 1つは俺の投擲武器となる石を集めること。一応平日にも自宅や学校付近の川に行って投げやすそうな石を集めてはいたが、それほど多くは見つからなかった。しかし、大濠公園ダンジョンに潜って石の投擲の有用性を実感し、今後の魔物の強さや数によってはもっと手数が必要になると判断したので、石を集めることにした。

 そしてもう1つはマジックバッグの限界を知ることだ。当たり前ではあるがマジックバッグは人々の生活と魔石と同じくらい深くかかわっている。見た目以上の物を入れることができ、なおかつ重さも変わらない。初回であれば特定のダンジョンレベルのダンジョンボスからドロップ品として100%手に入ることでも知られている。もちろんだからと言って価格は下がるわけではなく、最低でも数万円はするような品だ。

 話はそれたが、そんなアイテムの限界を知るいい機会になると考えたのが2つ目の理由だ。武器となる石がどのくらい入るのか、それをしっかり調べるつもりだ。


「お、さっそくいい石見つけた」


 俺は川の流れるすぐそばで落ちている石を無造作に探る。握り心地や石の種類、重さを確認しよさそうなものをマジックバッグへと放り入れる。


 1時間ほどあちこちに移動しながら石を探し続け、50個ほど石をマジックバッグへ入れた。重さは変わらず、石程度の大きさならナップザック型の口にも問題なく入る。


「なるほどなるほど。50個程度なら問題ないと。それとここまで入れてもまだ石は詰め込めそうだな」


 マジックバッグの仕組みは解明されていない。しかしダンジョンと同じく異次元や異空間と言った理論すらよくわからないようなものが、見た目以上の容積を生み出しているということになっている。そしてその空間は伸縮するらしく、物を詰め込めようとすると空間が伸び、ちょうど入ったもののすべての容積がそのマジックバックの容積と一致するとのこと。分かりやすい例では、ゴム風船の中に物を入れている感覚に近い。例えば水を入れると風船は大きく膨らみ、「入れた水の量=風船の容積」が成り立つのと同じことだ。

 ただ風船の取りうる最大の容積は存在しそれ以上に物を入れてしまえば破裂する。それとほとんど同様に、マジックバッグは破裂することはないが、最大容積まで物を入れるともう入らなくなるのだ。


「限界まで入れたいよなあ。もうちょい粘るか」


 それから日が暮れるまで石を探し続ける。集めた石の数が200を超え、ちょうど今日1番の石を見つけて辺りが暗くなりかけた頃、不意に後ろから声がかかる。


「君、ちょっといいかな」


「え?」


「今日のお昼過ぎからずっとこの河川敷にいるよね?」


 振り返るとそこに2人の警察官がいた。青を基調としたいかにもな警察服を見に纏い、警察手帳を予め用意してこちらに見せてくる。煌めく星のような紋章に、その手帳は本物だと理解すると同時に、反射的にマジックバッグをギュッと抱く。



「……はい、そうです」


 なんとなく警戒心をむき出しにして返答する。警察官はダンジョン攻略者に対してあまりいい顔をしない。攻略者には多くの荒くれ者がおり、昨今の犯罪者のうち攻略者が占める割合もそこそこ増えてきているせいだ。俺は善良な攻略者であるが、そんなことはお構いなしに警察官はこちらに歩きよってくる。


「それじゃあ少し質問に答えてくれるかな」


 若干警戒色のある警察官は職務質問を始めた。俺はどうにか角を立たせないよう、質問には正直に答える。身分証の提示にもダンジョン攻略者である証拠の攻略者証明書を渡すことで応じる。


「ふむ、やっぱり君は攻略者なんだね。それで武器となる石をこの河原で集めていたと」


「はい、そうです」


「まあ河原の石を拾うのは別に犯罪でないが、攻略のための武器というのなら……」


 警察官は2人とも難しい顔をする。

 攻略者に関する法律はまだ発展途上度あるが、俺が石を武器として使うと明言した以上何事もなく放っておくことはできないだろう。

 これなら綺麗な石を拾いに来たと言っておけばよかった。

 しかしそんなことはできないので、どうにかして言い訳をする必要がある。



「違うんです。決して人に向けて投げるつもりはありません」


「うーん、そうは言ってもやはりね。確かに君は攻略者だろうが、200個近くも石を持っていると、うん」


 至極真っ当な正論だ。1つ2つ石を持ち帰るならまだしも、手荷物検査で逆さにされた俺のマジックバッグからは次々と手頃な石が落ちてくる。


 俺がただの一般人だとしても何人かは確実に人を害することができるだろう。だからこそ警察もこのような反応なのだろう。逮捕まではいかずとも警戒されてもおかしくない。

 ただ、面倒ごとにはしたくないので何とか穏便にできないか交渉する。対二階堂で磨いた俺の対話能力を発揮するときだ。


「僕、投擲頑張ったんです。どんなに小さな的でも当てられるよう練習して、今ではどんな魔物でも一発で倒せます!」


 ここは健気に自分の力をアピールする。純粋な気持ちを示せば懐疑心に満ちた警察官の心も懐柔できるだろう。必死にうるんだ瞳(当社比)で訴えかけると、目論見通り警察官は顔を見合わせ、どうするか悩み始める。どうやら俺の見逃すための条件を考えているようだ。


「じゃああの川の中にある岩が見えるか?あれに一発で石を当てられたらもう帰っていいぞ」


 そうして条件を考え付いたのか、1人の警察官が50メートルは離れた位置にある川の中央にたたずむ岩wを指差した。軽自動車くらいの大きさで、川の水しぶきを受けているのが見える。状況を理解し、あの程度、造作もないと心の中でひっそりと笑う。


「分かりました!1発と言わず、2発当てるので見逃してください!」


 俺はその場に落ちている無格好な石を2つ拾い上げる。1つは右手に、もう1つは左手に収め、まずは左足を大きく上げて右手の石を投げる。大きな放物線を描き、目測では目標の大岩に当たりそうな軌道をなぞっていく。


「もう一丁!」


 次は右足をコンパクトに上げ、体を回転させながら左手の石を低い弾道で投げる。速度もなかなかのもので、投げた直後から目標の大岩にあたることが予想できそうな軌道を進む。

 そしてそれから1秒もたたず、その2つの石は大岩にあたると同時に互いにぶつかり合い、綺麗に粉々に割れる。距離があったせいでコンマ数秒遅れて石同士の激突音が俺や警察官のいた場所に届く。


「これでよいでしょうか!」


 急に見せられた曲芸に警察官たちは唖然している。しかし我を取り戻し、すぐに一言二tこと躱すと俺に話しかけてくる。


「あ、ああ……いい腕してるな坊主」


「引き留めて悪かったな」


 俺の美技に酔いしれたのか、2人の警察官は何かそわそわとしながらその場を離れていった。ともかくこれで、俺は晴れて普通の攻略者になれたのだ。石探しに戻り、ひっくり返された石をマジックバッグへと戻す。その後、石拾いを続け、マジックバッグに詰めた石が累計300個に達する頃、マジックバッグの要領がいっぱいになったので、目的達成とともにその日は自宅に帰るのだった。

???

「やっぱりあいつは当たりかもな」


「そうと決まればさっそくお嬢へ連絡だ。見たことすべて正確に伝えるぞ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ