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41 大濠公園ダンジョン その3

 ダンジョン攻略を進めて行き、ダンジョンに入ってから全体を通しておよそ6時間近くが過ぎた。

 俺はダンジョンボスのいるフロアの一歩手前のセーフゾーンで一息ついていた。


「ようやくここまで来たな。やっぱりフロアが広くなってるし、時間かかるなあ。それでも本来より何倍も早いけど」


 武器の手入れをしつつ感想を漏らす。今後さらにダンジョンレベルが上がることを思うとよりいそう気合を入れねばという気持ちになる。


「ねぇ、魔石はどうするの?」


 そんなことを思ってるとステアから魔石摂取の質問が飛んでくる。俺はマジックバッグから魔石とバフポーションを取り出してステアに見せる。


「ちょうど今から食べようとしていたところだ。その前にバフポーションで腹を空かせるけど」


 試験管のような見た目のバフポーションの蓋を取り、一気に飲み干す。無味無臭でまずくはなく、飲み干してからすぐにその効果が出てきた。ぐううと腹が鳴り、同時に空腹感に襲われる。胃が何か食べ物を欲しているのだ。


「おお、思ったより効果が速いな。めっちゃ腹が空いた。こりゃ早く魔石を食べてそのあと軽食を取った方がいいな」


「魔石もう食べるの?」


「何言ってんだ?今食べるっていっただろ?ほら、今回は6つもあるから手早くしないと――」


 その時、俺は違和感を覚える。ステアは何故今そんな確認をしたのだろうか。それに、俺自身も自分の行動に何か見落としがあるような気がしてくる。


「ちょっと待てよ。えーとなんかダメな気がしてきた。このままだとまた腹痛に襲われそうな予感がする」


「じゃあどうするの?」


「ちょっと考える」


 多分だが、今の俺は特殊スキルを得るための条件の何かを守れていない。一回自分で導いた条件を思い出す。


「えーと、魔石はちゃんと取れたてを用意してある。湧き水もすぐそこになる。今朝は朝ご飯を食べたけど、今はバフポーションでおなかをちゃんと空かせている。ここはダンジョンの中だし、何も問題はないはず。……いや、分かったぞ、ステータスオープン」


 俺は今の自分のステータスを確認する。


 ===============

 なまえ:小野寺太郎丸おのでらたろうまる

 とし:16

 しゅ:ひと(ついかこうげきりょく1.2ばい)

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 ついかこうげきりょく:643(+222)

 ついかぼうぎょりょく:615(+212)

 まなりょう:486(+201)

 ついかいどうそくど:596(+228)

 ついかまほうこうげきりょく:566(+218)

 ついかまほうぼうぎょりょく:743(+255)

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 ふれいるすいんぐ

 すらむだうん

 かうんたーばらんす

 ついかこうげきりょく1.1ばい

 ついかぼうぎょりょく1.1ばい

 ついかいどうそくど+100

 ついかまほうぼうぎょりょく1.2ばい

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 あじゃすとうぉーく

 わーどらんげーじ

 すとろんぐあーむ

 すてあさーち

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 さいだいだんじょんれべる:10

 だんじょんこうりゃくりれき:『おおほりこうえんだんじょん(10):11かい』

『おおたけだんじょん(9):11かい』

『させぼだんじょん(8):11かい』

『あしきただんじょん(7):9かい』

『やまがだんじょん(6):7かい』

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 ===============


 ステータスの「しゅ」という項目の表示がいつもと変わっている。追加攻撃力が1.2倍になることを示す文言が追加されており、バフポーションの効果がしっかり出ているのが確認できる。


「バフポーションの効果が出ている間は表示されるんだったな。つまりこれは実質バフポーションが俺の体で効果を発揮していることを示している。それすなわち俺の胃の中にバフポーションが残っていると解釈していいのか?(チラ)」


「……何こっち見てるの?」


「もうちょっとヒント欲しいなあって」


「ヒントなんて知らなぁい」


「ぶーぶー」


「可愛くないからやめて」


「はい」


 ステアに縋ろうとするが取り付く島もない。バフポーションに関する研究はまだそれほど進んでいない。飲んで効果が発揮すること、その継続時間、発生する副作用くらいしかまだわかっていない。魔石の研究に多くの研究者が集中しているのもバフポーションに関する研究が進んでいない要因だったりする。


閑話休題。


「んー。上手く言えないけど、魔石による特殊スキル摂取が空腹、もとい胃と関係しているながバフポーションも胃からの摂取に関連してると思ったけど。で、もしそうならパフポーションによってステータス強化中は『腹の中が純粋に空』っていう条件満たさないかもしれないし」


 考察を進め、とりあえずバフ効果が切れるのを待つことにする。要するにバフポーションの液体が胃に残っていてそれが異物判定され、結果的に魔石摂取が無駄になることは避けたい、ということだ。


「この空腹で1時間も待つのか。死にはしないだろうけどしんどいなあ」


 とはいえ、ここは安牌を選ぶことにし、それからバフ効果が切れるまで1時間ほど待つのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お、ようやく切れたな。長かったなあ、1時間」


 何とか空腹に耐えきり、ステータスを確認しても『(ついかこうげきりょく1.2ばい)』の文字が消えている。これでようやく魔石の摂取を行える。


 久しぶりの魔石の一気飲みと腹の違和感。そして湧き水を飲み、腹を水で満たす。


「頼むぞ~。これでだめだったらまたあの辛い日々が来てしまうからな」


 それからさらに数分経ち、ステータスカードを確認するとそこには新ら特殊スキルが出現していた。


 ===============

 なまえ:小野寺太郎丸おのでらたろうまる

 とし:16

 しゅ:ひと

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 ついかこうげきりょく:678(+35)

 ついかぼうぎょりょく:649(+34)

 まなりょう:517(+31)

 ついかいどうそくど:628(+32)

 ついかまほうこうげきりょく:600(+34)

 ついかまほうぼうぎょりょく:778(+35)

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 ふれいるすいんぐ

 すらむだうん

 かうんたーばらんす

 ついかこうげきりょく1.1ばい

 ついかぼうぎょりょく1.1ばい

 ついかいどうそくど+100

 ついかまほうぼうぎょりょく1.2ばい

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 あじゃすとうぉーく

 わーどらんげーじ

 すとろんぐあーむ

 すてあさーち

 ぽいずんれじすと

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 さいだいだんじょんれべる:10

 だんじょんこうりゃくりれき:『おおほりこうえんだんじょん(10):11かい』

『おおたけだんじょん(9):11かい』

『させぼだんじょん(8):11かい』

『あしきただんじょん(7):9かい』

『やまがだんじょん(6):7かい』

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 ===============


「おお!『ぽいずんれじすと』が手に入っている!すごい!名前だけでどんな効果があるか分かる!」


 ダンジョンには毒を扱う魔物やトラップが出現する。それこそ、高いダンジョンレベルになるほど、現代の医療では治療どころか対症療法すらも不可能な毒が存在する。ダンジョンから脱出できれば毒はきれいさっぱり効果を失うらしいが、脱出される前に毒で死亡してしまうということもある。

 今回手に入れた特殊スキルはそれを防ぐ効果がありそうだと名前から推察する。


「ただ、試すのは少し難しいよな。俺からわざわざ毒を喰らうような真似はしたくないし、万が一があっと時の保険として、っていう認識が良いだろうな」


『ぽいずんれじすと』の効果やどういうものとして扱うかを自分の中でまとめつつ、荷物をまとめる。

 とにかく、今回の魔石摂取は成功した。腹痛に苦しむこともないと安心し、12階層のダンジョンフロアへと進んでいく。


「『ぽいずんれじすと』の獲得おめでとう。その調子でダンジョンボスも頑張ってねぇ」


「あんな態度だったけどやっぱりヒントくれてたんだな。『もう食べるの?』って聞いてくれて違和感に気づくことができた、ありがとう」


「さぁね、そんなこと覚えてないよ。いいから早くボスを倒しちゃってよ」


「はいはい」


 お礼を伝えるも、知らんふりをするステア。まあ白を切りたいならそうさせておこう。俺は階段を登りきり、アイアンバンブージャベリオンを構える。


「「「「「チュウウウウ!!」」」」」


「速攻で終わらしてやるよ!ステータスオープン!」


 大濠公園ダンジョンのダンジョンボスは『ビッグヘッジホッグ』が14体。物理的に針のむしろになっているが、今の俺からすればそんな苦痛は感じない。手早くステータスカードを召喚し、回転に力を入れてビッグヘッジホッグの集団の中へ投げ込む。

 すると、ビッグヘッジホッグご自慢の針はステータスカードによってへし折られて行く。1回の投げで数匹のビッグヘッジホッグの一部の針を排除する。


「さすが不壊と言われるステータスカード。針みたいな細い物体なら力でどうにでもなる」


 そこからは走って逃げながら全ビッグヘッジホッグの針を折り切るだけだ。

 ビッグヘッジホッグは何とかして俺に針を刺そうとするも、走っても疲れない俺に追いつけないままでいる。

 一投、また一投と放るごとに、ビッグヘッジホッグたちの針はどんどん短くなる。最後には普通のハリネズミのようにこじんまりとした風貌へと変わっていた。


「あとはこいつで殴るだけだ!『ふれいるすいんぐ』!『ふれいるすいんぐ』!!『ふれいるすいんぐ』うう!!」


 自慢の武器を失ってもなおこちらに迫るビッグヘッジホッグに攻撃スキルを叩き込み、1匹ずつ光の粒子に変えていく。そして最後の1匹を倒し、ダンジョンをクリアする。


「よし、やっぱり対多にはこの戦い方が有効だな。しかも残弾を気にしないステータスカードで針を折れるのもありがたかった」


 自信の戦いぶりに自画自賛しつつ、ビッグヘッジホッグの魔物の装備品ドロップである『大針鼠の若針』を14本、何とか急いで回収する。最後の1本を拾い終わるのとほぼ同時に暗転し、ダンジョンクリアによる脱出が始まった。

 こうしてダンジョンの難易度が変わると言われる境目の一つ、ダンジョンレベル10を俺はクリアしたのだった。

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