27 上山田ダンジョン その2
ダンジョン攻略も終盤戦となり、何度かウルフストレイズとスライム・ダブルを倒しながら5階層にあるセーフゾーンに到着した。上山田ダンジョンは全部で6階層であり、次のフロアでダンジョンボスと戦うことになる。武器の手入れとステータスの確認をしていると、ステアが話しかけてきた。
「ちょっといいかな」
「どうした?」
「多分だけど、今の君の適正ダンジョンレベルは5なんかじゃないよ」
あっけらかんと言い放つステア。それに対し、俺も薄々そう感じていたことを思い出す。
「適正なー。まあ確かにもうこのあたりの魔物だと相手にはならないからな」
俺は事実を伝える。正直、特殊スキルがあまりに強力すぎると感じている。特に『すとろんぐあーむ』は今の俺の追加攻撃力が300もないにもかかわらず、ほとんどの魔物を一撃で砕くことができている。もちろん『ついかこうげきりょく1.1ばい』の効果もあるだろうが、適正と言われたらすでにダンジョンレベル10を超えていても不思議ではない。
「よし、それじゃあ君には、少しでも早く上のレベルのダンジョンに行ってもらおうかな」
「?」
「君もいつまでも低いレベルのダンジョンで稼いだり戦ったりするのは嫌だろう?それに今の君ならもっと難しいダンジョンでもクリアできる」
「そうか。やっぱりそういう評価になるんだな。確かに俺だって早く上に行きたい気持ちもあるけど。特特殊スキルみたいなイレギュラーな力も持っているわけだし?」
もしダンジョンの『侵入できるダンジョンのレベルは今まででこうりゃkスタダンジョンのレベルが最も高いもの+1』という理がなければ、おそらく俺は今の状態でもダンジョンレベル10に入っていただろう。ダンジョンレベル6~9を吹っ飛ばし、自分の限界に近いような戦場でひたすら戦闘に身を置く。そしてクリアすれば2つくらいレベルを上げてさらにその先へ。
「……なんとなく考えていることはわかるけど、ダンジョンの理は絶対だからね。今君にできるのは、ただ愚直に最短距離を進むことだけだ。とにかく!今は、攻略できるダンジョンのレベルを上げていこうね。それだけ!」
「あい分かった」
話も終わったようなので、荷物をまとめて6階層へと進む。今回は魔石の摂取はなしだ。最後の食事から12時間は経っていないということと、さすがに無視できない金欠状態のため魔石を売りたいという事情のためだ。なんとも悲しい理由に涙が出てきそうになるも、頭を振って考えないようにする。そして6階層に到着するとともに周囲をすぐに確認する。
「『スライム・ダブル』が7体か。動きも鈍いし問題なし」
上山田ダンジョンのダンジョンボスは対多パターンである。魔物の種類は『スライム・ダブル』であり、もし捕まってしまったらと思うと背筋が凍るような光景だ。ただ攻撃を喰らわない自信があるのであれば、それほど恐れる相手ではない。バッグを置き、大金槌を肩に掲げて戦闘態勢を整える。
「『ふれいるすいんぐ』!『ふれいるすいんぐ』!」
まずは一番近くにいた2匹のスライム・ダブルに攻撃をお見舞いする。一瞬にして潰された2匹のスライム・ダブルは光の粒子となって消える。
「あと5匹!『ふれいるすいんぐ』!」
さらに追加で1匹が破裂音とともに倒される。今の俺にとってスライム・ダブル程度の移動速度なら逃げ回る必要もない、1匹、また1匹と『ふれいるすいんぐ』をヒットさせ、気づけば残り1匹となっていた。
「ラストオオォォ!はああああ!!」
最後は攻撃スキルすら使わず、大金槌を脳天へ叩き込む。ひしゃげた体をもとに戻そうとスライム・ダブルは体を捩るが、奮闘むなしく光の粒子となって消えていった。そして最後の1匹が消えるとともに、1つアイテムがドロップする。『マジックバッグ』である。
余談だが、ダンジョンレベルの下一桁が5のダンジョンボスがドロップするものはすべてのダンジョンで同じ種類の物であると言われている。今回のダンジョンレベル5では、『マジックバッグ』が該当する。ただし、マジックバッグの見た目および機能性は様々な種類があるため、全く同じものがドロップするわけではない。マジックバッグの例では、ポーチやキャリーケース、手提げかばんやスクールバッグなど、地球上でも普通に存在するバッグがこれまでに発見されている。そのため、普段使いできるマジックバッグは町中の至るところで使われていたりする。
閑話休題。
何にせよ、夢にまで見たマジックバッグである。二階堂のせいで攻略者になるための準備時には買えなかったのは今やいい思い出……などでは決してないが、大きなバッグを毎回運ぶのは今日で終わりとなる。気分上々でドロップしたマジックバッグを確認する。
「これは、ナップザックか?」
拾ってみるとそれは厚めの布が袋になっており、肩にかける用の太い紐が結われているタイプのナップザックであるとわかる。柄は特になく、無地の白色がやけに明るく感じるマジックバッグだ。試しに今背負ってみると非常に軽く感じ、移動中も戦闘中も気になることはなさそうだ。大金槌を中に押し込むように入れてみるとすっぽり収納できた。
「おお、本当にマジックバッグだ……!なんか感動するなあ」
「ようやくマジックバッグが手に入ったね。これでもっと身軽になるから攻略も捗りそうだね」
「これからどんどん攻略速度上げていくって約束したからな。確かにステアの言う通り、敵も簡単に倒せるし、早くもっと高いレベルのダンジョンに行きたいわ。……そうだ、ステータスはどうなったか?ステータスオープン」
マジックバッグの効果を試しつつ、ダンジョン脱出前にステータスの確認もしておく。
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なまえ:小野寺太郎丸おのでらたろうまる
とし:16
しゅ:ひと
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ついかこうげきりょく:270(+9)
ついかぼうぎょりょく:245(+5)
まなりょう:157(+4)
ついかいどうそくど:215(+8)
ついかまほうこうげきりょく:204(+8)
ついかまほうぼうぎょりょく:327(+8)
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ふれいるすいんぐ
すらむだうん
ついかこうげきりょく1.1ばい
ついかぼうぎょりょく1.1ばい
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あじゃすとうぉーく
わーどらんげーじ
すとろんぐあーむ
すてあさーち
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さいだいだんじょんれべる:5
だんじょんこうりゃくりれき:『かみやまだだんじょん(5):6かい』
『すみよしだんじょん(4):6かい』
『すみよしだんじょん(4):5かい』
『こくらえきまえだんじょん(3):4かい』
『こくらえきまえだんじょん(3):5かい』
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「おお、『すらむだうん』か。確か振り下ろし系の攻撃スキルだったよな」
「そろそろ脱出だね。次はダンジョンレベル6で会えるのを待ってるからね」
「はいはい、明日の午前中には開始するからな」
新しく攻撃スキルが増えているのを確認しつつ、明日の予定を一応ステアに共有しておく。ステアのことなので言わなくてもわかっていそうではあるが、念のためだ。
そして辺りは明るくなり、少し狭い脱出用の施設に出る。
「あれ、もうお戻りでしたか」
すると奥のトイレから一人の男性がやってくる。俺がダンジョンに入る時に受付をしてくれた人だ。
「はい、攻略者証明書とデバイスです。あ、あと魔石の買取りもお願いします」
「承知しました。受付までお願いします」
魔石はこれまで食べてばかりだったので慣れない売却を忘れかけるも何とか思い出して売りに出す。今回はダンジョンレベル5の2つの魔石なので、相場は合わせて1,000円くらいだろうか。受付に魔石も併せて攻略者証明書とデバイスを手渡す。
「ダンジョン攻略はいかがでしたか?」
「えっ?」
査定をしてもらうので端で待っていようとすると、受付の人が話しかけてくる。少し戸惑うも、他に人もいないしフランクな感じだったので答える。
「何とか攻略できましたよ。スライム・ダブル7匹、全部しっかり倒せました」
「え、ダンジョンクリアしたんですか?てっきり『脱出のスクロース』で帰還されたものだとばかり……。これは失礼いたしました」
「あっ、えーと。なんか階段がものすごくスムーズに見つかったんですよね。階段を上がるともうすぐそこに階段があって、みたいな?」
慌てて口八丁手八丁でつらつらと嘘を連ねる。あまりにいつも通りの攻略で忘れかけていたが、本来6階層もあるダンジョンは5時間以上かかることだってある。なのにこの短時間で攻略できたと言われたら、受付の人のような反応になるのは当たり前だ。
「なるほど。そういう時ってたまにありますよね。だから1時間もせず攻略できたんですね」
「まあ、そうですね」
何とかごまかせたようだ。さすがに『すてあさーち』っていう特殊スキルが階段の場所を教えてくれました、なんて言えないからな。それはそうと少し気になることを受付の人は言っていた。俺の体感では1時間過ぎてそうな気がしたが、今はっきりと1時間を切っていたと言った。ちょっと気になるし、この受付の人口が軽そうなので詳しく聞いてみる。
「そういえば、今1時間を切っていたって言ってましたが、もしかして時間測ってらっしゃったんですか?」
「いえ、デバイスの情報ですよ。貸し出している間は時間が計測されているのです。今回は57分53秒ですね。……あっ、これオフレコでお願いします!」
計画通り。思いっきり重要そうな情報を吐いてくれた。何その機能、知らなかったんですけど。でも考えてみればそういう機能があってもおかしくないよな。攻略者の身の安全に関する情報にもなり得るもんな。
「もちろんです。でもそのような機能があるなんて知りませんでしたよ」
「一応公開はしてない情報ですので。ただ攻略者歴が長い人の中には知っている人もいると思いますが」
「そうなんですね。もしかして他にも一般には知られていない機能が合ったりするんですか?」
「結構ありますよ。例えば、……っとさすがにこれ以上は言えませんね。まあもし売れば1つ30万円はいくと思いますよ。それだけ貴重なものですから」
ちょっとがめつく行き過ぎたようだ。これ以上情報はもらえそうにない。ただそういった裏の事情も面白いので後々個人的に調べてみようかな。
「それもそうですね。まあ僕は人に言いふらしたりはしないので。それじゃあ魔石の精算をお願いします」
「いやあ助かります。自分口が結構軽いので。……はい、魔石買取額は1,000円ですね」
「ありがとうございます」
そうして野口1枚を受け取り、そのまま施設を出る。スマホで近くの止まれそうなところを調べ、運よく民宿が1か所あったのでそこに泊まることにした。値段は少々お高かったが、明日明後日で長距離移動とダンジョン攻略をするための英気を養うには、十分すぎるほど快適な寝室とおいしいご飯を食べることができた。
「寝る前に『博多ダンジョン』の情報でも調べるかあ。今一番進んでいるのはどこかな……え?」
そして日課のダンジョン情報収集をしようとスマホを宿のWi-Fiにつなげると同時に、衝撃的なニュースが飛び込んでくる。
『【悲報】蒼月団団長、消滅トラップに引っかかり死亡。残る団員は撤退を決断』
「まじかよ……」
今回の『博多ダンジョン攻略計画』に参加したクランの中で最も新進気鋭だった『蒼月団』が撤退したようだった。罠対策用のスクロースが用意されているにもかかわらずの事態である。しかも寄りにもよって『消滅トラップ』か。
『消滅トラップ』は未だにどういう原理かわかっていない罠の1つであり、かかるとその場で光の粒子になってしまうという凶悪なトラップである。
「これで1パーティ脱落か。やっぱりダンジョンは恐ろしいところだな」
心の中で蒼月団団長の冥福を祈りながら、自分はそうならないよう気を付けようと念じながら、俺は眠りについたのだった。
???「はい、可能性はあります。ただ、デバイスだけの情報からでは何とも言い難く、攻略中の心拍はほとんど穏やかでして。はい、そうですね、今回偶々階段運が良かっただけの可能性もあります。はい、情報をお渡しするので、そちらでも確認してみてください。はい、それでは」




