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21 住吉ダンジョン その2

申し訳ありません。

腹痛にて投稿遅れました。(2敗目)

「あ、先にセーフゾーン見つけちゃったかあ」


 ウルフストレイズに見つかりながらも景気よく走り続けていると、あっさりと3階層へ続く階段を見つけてしまった。


「ここで休憩して先に進むは簡単だが、どうしたもんか」


 こういう時パーティで攻略していれば全員の意見を聞いたり多数決したりできるが、1人パーティの俺はすべての判断を俺一人でしなくてはならない。少しだけ逡巡し、やはり戦闘経験は詰めるときに積むべきと判断。セーフゾーンに荷物だけ置いておき、少し離れたところで待機する。万が一危なくなったらセーフゾーンに逃げ込めるよう保険をかけておく。


「「ガウガウ!」」


「お出ましか。2匹なら問題ないか?」


 その場で待ち構えること数分。ほんの数メートル先にまでウルフストレイズがやってきた。大金槌を構え、ウルフストレイズの動きにいつでも反応できるようにする。片方のウルフストレイズはじっとしており、もう一方は頻りに前足で地面を擦っている。先に動き出すとしたら後者の方だろうか。だとするなら――


「先に仕掛ける!ステータスオープン!」


「ガウ!?」


 先んじて動くことにした俺の発声に、身を強張らせる2匹のウルフストレイズ。その間にステータスカードの召還から発射まで最短で行う。その甲斐あってか、じっとしていた方のウルフストレイズの片目をつぶすことに成功する。短く呻くそのウルフストレイズに対し、もう一方のウルフストレイズは一気にこちらに向かってくる。


「ッ!速い!」


「ガアア!!」


 牙をむき出しに襲い掛かってくるウルフストレイズの口に大金槌の柄を横向きで持ちながら押し当てる。力圧し勝負となるも、負けじと押し返す。


「なめるなよ、こちとらスキルで強化されてんだ!」


 ウルフストレイズを押しのけ、わずかだが距離を取らせる。その間にナイフを持ち、狙いはほとんどつけずにとにかく当たれと念じながら放る。ただ、その結果はすぐには見られなかった。


「ガアアウアア!」


「ぐっ!」


 片目をつぶしたウルフストレイズがすでにこちらに飛びついて来たからだ。間一髪頭を傾けて噛みつき攻撃はよけられたが、突進の威力を全身で受けてしまい、ウルフストレイズにのしかかられる形倒れてしまう。その拍子に大金槌も俺とウルフストレイズの間に挟まれてしまい、簡単には動かすことができなくなる。何とかウルフストレイズの頭だけは両手で押さえつけるが、激しい引っ掻きに皮鎧が削られている音と振動が体に響く。


「負けるかああああ!」


 一瞬だけ右手のみでウルフストレイズの鼻先をきつく握り、左手でもう一つのナイフを取り出す。そしてそのまま腹の横に一気に突き刺す。


「ガアアア!」


「今だ!」


 体が浮いたウルフストレイズの隙を見逃さず、その下から抜け出し、ナイフで雑にめった刺しにする。動きが鈍ったところで、とどめを刺すチャンスかと思ったが、先に大金槌を拾って一旦距離を取る。そうしたのはもう一方のウルフストレイズがいつ襲ってくるかわからないからだ。案の定俺がいたところにもう一方のウルフストレイズが飛び込んできた。2匹のウルフストレイズを視界に収め、大金槌を水平に構える。


「まとめてかかって来いやああああ!」


「「ガウガウ!!」」


「『ふれいるすいんぐ』うううう!!!」


 俺の声に呼応するかのように同時にとびかかってくる手負いのウルフストレイズ。やや低めの掬い上げるようなスイングが1匹目のウルフストレイズに当たる。確かな手ごたえを感じつつ、さらに振り抜く。2匹目のウルフストレイズも追加され、2匹分の重さが腕にのしかかる。


「おおおおおお!!」


 ありったけの力を振り絞り、大金槌を振り抜く。重い音とともに2匹のウルフストレイズが壁際まで吹き飛び、1匹が光の粒子となった。


「ま、だだ!」


「ガ、ガア……」


 2匹目のウルフストレイズがまだ倒れていない、必死に立ち上がろうとしている。しかしそんなことはさせない。一刻も早く倒してやるという気持ちが前に出てくる。そのせいだろうか。なぜかその時()()()()()を使おうとしたのだ。ただ、無我夢中でとっさに出ただけかもしれない。しかし、それは俺が強くなるためには必ず通らなければならなかった道だった。


「『フレイルスイング』!」


 さっきも使った攻撃スキルを再び使う。しかし普通に振っても距離があるから当たらない。端から見れば同家にしか見えないだろう。


ならば、投げればいい。


 スキルが終わるタイミングで角度と方向を調整。一見手から武器がすっぽ抜けたようにしか見えないその攻撃は、的確にウルフストレイズの頭を砕いたのだった。


「はあ、はあ……。まだ、ダンジョン、復帰は、早かったか……」


 『あじゃすとうぉーく』の効果の発揮しない激しい戦闘を行ってようやく気付いた。自分はまだ万全じゃないと。今のステータスならばそこまで苦戦しなかったであろう敵。しかし体の不調は何も力の面だけに現れるものではない。集中力、注意力、咄嗟の反応。それらがなければ不意を突かれ、余計なダメージを負ってしまう。


「全身が軋んでいる。セーフゾーンで休まないと」


 セーフゾーンの近くで助かった。散らかっている武器を集め、湧き水近くに腰を下ろす。ゆっくり水を飲みながらバッグを枕に横になる。


「少し、少しだけ寝よう。今日は朝も早かったし。ダンジョンで寝るのもどうせいつかすることになるから、ここで経験で来てもはやラッキーまで、ある、し……」


 そこで体は限界を迎え、意識が無くなっていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 水の音が耳に入り、ゆっくり目を開けると茶色の岩肌が視界に入ってきた。体を起こすと肩や腕がズキリと痛む。そこでようやく自分は今ダンジョンの中にいるのを思い出した。スマホの電源をつけるとそこには19:15の数字が映っている。ダンジョンの外はもう夜になっており、いかに自分が長いこと眠っていたのかを実感する。


「くそ、手当てしてから寝ればよかった」


 バッグをあさり、応急手当キットを取り出す。皮鎧や服を脱ぎ、自分の体をくまなく検査する。すでに肌が青くなりかけている箇所やウルフストレイズの引っ掻き傷がいくつもある。幸い筋肉断裂や骨折など、動くこともままならないような怪我は負っていないようだった。湧き水で体を拭き、湿布や絆創膏を張って簡単な手当てを終わらせる。

 少しだけ湧き水を飲んで一息つき、先ほどの死闘を思い出す。戦闘の中盤以降、俺は明らかに劣勢だった。しかし、最終的には攻撃スキルを駆使し、ウルフストレイズを2匹とも一人で倒し切った。それに最後に出したあの技——『ふれいるすいんぐ』の終わり際に大金槌の投擲に切り替えた攻撃——についてだ。俺の感触とウルフストレイズへのダメージを見ると、『ふれいるすいんぐ』によって得られた加速や威力をそのまま投擲に乗せることができていた。

 つまり、攻撃スキルを通して別の攻撃スキルのような何かを繰り出すことに成功したことになる。こんな話、正直言って聞いたことがない。攻撃スキルとはそのスキルで完結するものという認識だった。まれに複数の攻撃スキルの相乗効果で威力が上がるなんて話はあるが、単一スキルで別の技に昇華させることができるとは寝耳に水だ。それに『ふれいるすいんぐ』にそんな効果があるなんて話もない。


「『すとろんぐあーむ』、お前の仕業だろうなあ」


 なんとなく気づいたことを口に出す。勝手に『すとろんぐあーむ』は手が関係する諸々を強化すると思っていたが、攻撃スキルを別のスキルみたいな使い方にできるのは諸々が過ぎないだろうか?


「……よし、先にダンジョンクリアを優先させよう!なんかもう俺が考えてもなんも分からん!ただでさえダンジョンは謎な場所なのに、高校生の俺が一瞬で謎を解明できるわけないだろおおおおおお!」


 体が軋むのも無視し、大声で咆哮する。考えるのはやめだ。どうせこのまま強くなっていけば、いつかはクランに入って(ちょー)強い攻略者として活動するのだ。そうなればこういった謎も調査しやすくなるだろう。


「うん、叫んだらすっきりした。とりあえずはダンジョンを攻略してから……腹が減ったな」


 すっきりしたらおなかが空いた。今日は朝ご飯を食べてきたが、すでにそれから12時間は経っている。探索は続けたいがさすがに2階層でこのおなかの減りようはいただけない。さすがに食事をしようとバッグを開ける。


「っと、そういや魔石があったな。2個だけだけど」


 するとそこにはここまでで手に入れた二つの魔石が顔をのぞかせていた。どうせもう食事をすることに決めたので、2個だけでも食べてしまおう。手慣れた手つきで魔石を口に放り込み、湧き水とともに飲み干す。


「まあないとは思うけど、念のためもう少し待ってから食事をするか」


 腹に若干の違和感を覚えながらもそれから5分ほど経つ。横になりながら、あと10分くらい待って新しい特殊スキルを覚えられなかったら、食事をとろうなんて考える。すると、一瞬だけクラッと眩暈が起こり、頭が嫌な浮遊感を覚える。

 今更ウルフストレイズとの戦いのダメージかと身構えるが、それはすぐにほかの感情によって上塗りされた。


「なんだ?この矢印?」


 まるで幻かのように突如現れたそれは、俺の人生を本当の意味で変えてしまった特殊スキルの効果だったのだ。

作者

「ようやくここまで来れました。物語はここから始まるといっても過言ではない」

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