晴美ルート56
「ああ。ちょうど良かったです。お迎えにあがりました」
私たちの担当である女性スタッフが昇降口で待ってくれていた。
「お待たせしてしまいましたか?」
「いえ。お洗濯物を回収しようとしたついででしたので」
「あ、その件なんですけど。洗濯は大丈夫です」
私の言葉にスタッフの女性は眉を下げる。
「私どものサービスに至らぬ点がありましたでしょうか?」
「い、いえ。ただすみません。私が潔癖症なもので。他の方に自分の服を触ってほしくないだけです」
咄嗟の嘘。
だけどスタッフの女性は納得してくれたみたいだった。
「確かにそういうお客様もおりますよね。承知しました。ではお洗濯物の回収は行いません。お布団の方もやめた方がよろしいですか?」
「あー」
逡巡する。
晴美さんを見て、晴美さんはそういうのも嫌だろうと思う。
「そうですね。布団も自分たちでやっておきます。すみません。わがままで」
「いえいえ、お気になさらずに」
優しい表情で一礼したスタッフの女性は踵を返す。
「では体育館に参りましょうか。そこでお食事をご用意しております」
「はあ。面倒くさ」
「もう諦めなよ」
未だに嫌々の晴美さん。
せめてスタッフの女性の前では言わないで欲しいんだけど。
スタッフの女性の案内で私たちは体育館の中へ。
すでに他の人たちは集まっているらしく、賑やかだった。
中央あたりに長テーブルがいくつか用意されていて、ステージ近くにはずらりと料理が並んでいた。
「晴美さん見て! ビッフェだよ!」
「こんなんで盛り上がるなんて子供ですか?」
「だ、だってビッフェ形式なんて滅多に出来ないじゃん」
半ば晴美さんに飽きられてしまう。
そんなに子供っぽかったかな?
「あ! 羽澄っ! 晴美っ!」
声に向くと、リリィちゃんが両手をブンブン振ってアピールしてくれていた。
隣には母親の麻子さんも小さく手を振ってくれている。
「二人ともここね!」
そして二人が座っている長テーブルをバンバン叩いている。
すでに座席は確定したみたいだ。
「ありがとうね! ご飯とってくるから!」
リリィちゃんにお礼を言って私はまた晴美さんの手を引く。
そして料理の前に到着。
唐揚げ、ハンバーグ、ローストビーフ、焼き鮭、ポテトサラダ、カルパッチョ、カレー、ピザ、パスタ、さばの味噌煮、ケーキ、フルーツ、ヨーグルト、アイスクリーム、ソフトドリンクバー、スクランブルエッグ、ソーセージ、味噌汁。
把握出来たものでもこれだけある。
本当にホテル並みに豪華な朝食だ。
私と晴美さんは好きなものをお皿に取っていって長テーブルについた。
「てか晴美さん、主食ないじゃん。ケーキとかフルーツばっか」
「朝はこのぐらいで良いんですよ。羽澄さんが盛り過ぎなんですよ。普段は朝は食欲がないとか言ってあまり食べないのに」
「そ、そういえば」
晴美さんの言う通りビュッフェでテンションが上がりすぎちゃったかもしれない。
食べられるか自信がなくなってきたかも。
「あ、あの。少し食べましょうか?」
麻子さんを不安にさせてしまっったので箸を手に取る。
「大丈夫です! お腹空いてますので!」
頑張れ、私の胃袋!




