晴美ルート55
「すぐセクハラするんですね。今までよく捕まりませんでしたね」
「だからごめんって」
だってあんな声出すとは思わなかったんだもん。
顔と腕の包帯を取り除いて薬を塗っていく。
「おっぱい揉みます?」
「もういじめないでよ〜」
死ぬまでいじられそうだ。
「はい。これでよし」
顔の包帯を巻き終わり、晴美さんの右腕を取る。
「義手つける?」
「あー、どうしよう」
「あんまりつけたくない感じ? 義手でご飯食べられるようにして欲しいけど」
「じゃあ羽澄さんに任せます」
「え? どうして?」
「そういう気分なので」
「そっか。じゃあつけようか」
筋電義手を取り付けて服を着てもらう。
「具合はどう?」
「はい。問題ないです」
筋電義手の動作も大丈夫なのを確認して私は自分と晴美さんの脱いだ服を持つ。
「洗濯物は確か廊下のカゴに……あった」
スタッフの女性に言われた通り洗濯用のカゴが置かれていた。
ここに入れれば洗ってくれるなんて本当にサービス良いなここ。
「あの」
脱いだ服をカゴに入れようとして後ろから手を止められる。
晴美さんも教室から出てきていた。
「どうしたの?」
「あまり他の人には」
「え? ああ、じゃあやめようか」
服を丸めて胸に抱く。
晴美さんはこういうことも他人を拒絶するらしい。
洗濯物でも他人に触れてほしくないんだろう。
教室に戻って持ってきていたビニール袋に入れる。
まあ確かに他人に下着を洗われるのは私も嫌かも。
それに元から持ち帰って寮で洗おうとしてたから別に良いや。
「羽澄さん」
「ん〜?」
「好きです」
「はいはい」
またか。
だけどその手には乗らないぞ。
今更そんなので驚きませんよ〜。
「好きです」
「はいはい。ありがとね〜」
よし。
洗濯物はカバンにしまったし、ご飯に行かないと。
ちゅ。
「…………」
晴美さんに向く。
熱っぽい瞳。
唇はすぐそこ。
ていうか今キスされたの私?
「好きです」
「え? えっ?」
ガチ?
ガチなのっ?
「羽澄さんのタイプは瀬名さんみたいな大人な女性ですか? それとも咲良さんみたいな清楚なくせに危うい子ですか?」
「きゅ、急に何?」
「羽澄さんの心に私のスペースが欲しいだけですよ」
ぎゅっと抱きしめられる。
「揶揄わないでよ。またそうやって意地悪するんでしょ」
「どうして私を優先してくれるんですか?」
「優先?」
耳元で囁かれるとさらにドキドキしてしまう。
「洗濯物のことも、義手のことも、私の気持ちを考えてくれる」
「それは普通でしょ。相手のことを考えるのは」
「そういうところが人たらしなんですよ」
「っ!?」
ガリっと耳に痛みが奔る。
まさか噛まれたの!?
「ねえ、朝ごはんサボりませんか? 行きたくないです」
「あっ! まさか体育館に行きたくなくて演技したの!?」
「……バレちゃいました?」
晴美さんが離れていく。
「でも優しい羽澄さんは私を優先してくれますよね?」
悪戯っぽく晴美さんが舌をぺろっと出す。
本当にこの子はマセテルというか、人の心を掻き回すのが好きだよな〜。
このまま舐められたら私の大人の威厳がピンチである。
「もう甘やかしません! 晴美さんには社交性を身につけてもらうために体育館に連行します!」
「え、うそですよね?」
「問答無用っ!」
無理やり晴美さんの腕を引っ張る。
「嫌ですよっ!」
「どうしてさ!」
「面倒くさいからです! 他の人とご飯食べるぐらいなら絵を描きたいんですよ!」
出た、絵を描きたいから好きなタイプがお世話してくれる人。
「わがまま言わないの!」
「あ、ちょっ!?」
私は晴美さんを教室から連れ出す。




