晴美ルート57
黙々と食事を続ける。
隣の晴美さんは元からあまり盛り付けてなかったのですぐに食べ終わってスマホをいじり出してしまう。
でも帰らないから待ってくれているみたい。
「リリィ、食べ過ぎじゃない? お腹痛くなるわよ?」
「んむんむ」
リリィちゃんは三回目のおかわりを食べ始めていた。
やっぱり若いな〜。
「晴美は描き終わった?」
「ん?」
もぐもぐしながらリリィちゃんは晴美さんに話しかける。
「まだだよ。今日には描きあげたいけど」
スマホをいじりながらも晴美さんはリリィちゃんに応える。
昨日からそうだけど、意外と気は合うのかもしれない。
晴美さんもお姉ちゃんしてたしな。
「リリィも描き始めたんだよ! 後で見にきてよ!」
「あ、うん。気が向いたら」
「向いたらじゃなくて絶対来てよ!」
「はいはい」
「おっ! 羽澄さん!」
隣の椅子が引かれて誰かが座る。
水墨絵を手がけていた湊くんだ。
「ここ良いですか?」
「うん。良いよ」
拒む理由もないし、湊くんとは話が合いそうだから良い。
「あ、と。こちらの方は?」
座って気づいたのか、湊くんは麻子さんに目を向ける。
「リリィちゃんのお母さんの宇田川 麻子さん。麻子さん。こちらは湊くん」
「どうも宇田川です」
「あ、はい!」
麻子さんが微笑むと、湊くんの背中がピンと張る。
「そ、そうだ。これ名刺です」
作務衣の懐から私のときのように湊くんが麻子さんに名刺を手渡す。
「あ、ご丁寧にありがとうございます。まあ! 可愛い名刺ですね!」
二次元キャラが描かれて名刺に麻子さんの表情が和らぐ。
「あ、えと。アニメとかゲームが好きでして」
明らかに湊くんの声が硬い。
もしかして緊張してる?
でも私の時は普通だったから女性が苦手なわけじゃないだろすけど。
「そうなんですね。リリィも好きなんですよ。ね、リリィ?」
「うん! むぐむぐ」
しっかり返事はするけどリリィちゃんは食事に夢中だった。
「なんか親しいですね」
今まで黙っていた晴美さんに脇腹を突かれてビクッとしてしまう。
「ちょっと! ご飯中〜」
「どこで男を引っ掛けたんですか?」
「引っ掛けたって。昨日、晴美さんが締め出したから、校舎をいろいろ回って知り合ったの」
「ふーん」
それだけ言って興味をなくした晴美さんはまたスマホをいじり出す。
その間も意外と湊くんと麻子さんはアニメの話をしている。
「そういえば裸描き終わったの〜?」
リリィちゃんのその一言で一気に湊くんが凍りつく。
「裸?」
「うん! 女の子の裸描くのが上手いんだよ!」
湊くんは水墨画で二次元美少女の裸体を描いているのをリリィちゃんに見られているんだった!
これは不味い!
「あ、あれですよ! セミヌードってやつです! ほらテレビとかで女性の裸を描いた浮世絵とか見ません!? それの水墨画バージョンで!」
「あ、あー。そう言うことですか。私はてっきり」
頬を染める麻子さんも納得してくれたらしい。
湊くんからの感謝の瞳が熱いぜ!




