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戦闘

 体が熱い。


 筋肉が肥大し皮膚は裂け、表面は装甲のように硬くなっていく。


 身に着けているものは魔力の粒子となり、体に染み込んで行った。


 全身が一回り大きく逞しく、闇に覆い尽くされたように黒く変わっていく。


 その姿は邪悪で禍々しく、炎が揺らめいているかの様な形を持ち出す。


 背中からは蝙蝠(コウモリ)のような翼が、腰からは太く立派な尻尾が生え、頭からは天を貫くように伸びた二本の角。


 憎悪に歪んだかの如く醜きその顔は――悪魔そのものだ。







 みんなの瞳に映る俺の姿は、酷く恐ろしいものだった。


 そんな誰もが怯えるであろう姿を見た俺の仲間たちはと言うと、ヒーローを見る子供のようにキラキラと目を輝かせていた。

 良い奴らだ。


 この姿を見て納得してくれたのか、みんなは急いで街へ向かって行った。


 さて、ここからだ。

 逃げる者許さず。と、グリンブルスティが今にも走り出しそうなので俺は急いで敵地へ突っ込んで行く。


 翼を扱うのは初めての経験だが、新鮮さを感じている暇はない。

 幸いなことに、少しの違和感はあるものの手足と同じように体の一部として馴染んでいる。


 俺は一直線にグリンブルスティへ飛んで行き、勢いそのままに相手の得意分野である突進をかます。


ドンッ


 大きな衝撃を感じたが、相手は全く怯んでいない。やはり悪魔化したとは言え実力の差がありすぎる。

 しかし、俺に注意を向けることには成功した。


 対して、相手はその凶悪な牙を振り回し俺を貫こうとしてくる。

 その攻撃を天地を縦横無尽に駆け巡り何とか回避。走る速度は半端じゃないが、体その物の俊敏さは対応できない程ではないようだ。


 だが、通用しないと悟ったのか今度は凄まじい脚力で一瞬の内に距離を詰め、俺と同じように天地を足場に使った猛襲を仕掛けてきた。

 直線に対する力は流石で、少しずつ余裕が無くなっていく。


 近接での戦闘は不利だと考え、一度間合いを取る為にクネクネと曲線を描きながら飛んでいく。

 向こうも猛スピードで追いかけてくるが、小回りが利かないので徐々に距離が空いてきた。


 どうする、このまま援軍が到着するまで逃げ回って凌ぐか。こっちの攻撃が通らないのなら戦っても無駄だ。

 悪魔の姿は魔力が尽きない限り継続可能。いつまで保てるか、だな……。







 ヤバい。状況がさらに悪化した。


 逃げ回っている俺をグリンブルスティが追いながら平原中を駆け巡った。

 その結果、ボア種の魔物が大量に集まってきた。

 普段よりも広い範囲を移動していたようで、遭遇したことのない強めの魔物もいた。


 強力な脚のバネを用いて弾丸のような突進を放つ『バレット・ボア』。

 炎を体に宿し、操る『フレイム・ボア』。

 表皮を硬い装甲に覆われた二足歩行の『ボア・ウォーリアー』等々。


 もちろんビッグ・ボアも含め、他のボア種の魔物も大量だ。


 空に逃げても、フレイム・ボアは炎を巻き上げながら飛んでくる。バレット・ボアはある程度の高さまでなら届くほどの強力な突進を放つ。ボア・ウォーリアーは物を投げて攻撃してくる。加えてグリンブルスティまでが追いかけて来るとなると……安全な場所はない。

 何体もの敵を相手取りながら逃れられるような相手ではないのだ。


 かと言って地上に近付いても袋叩きにされるのみ。

 攻撃が効かずとも、身動きが出来なくなったところをグリンブルスティに狙われたら如何なるか分からない。


ドンッ


 「グゥッ……」


 遂にグリンブルスティの攻撃を食らってしまった。

 致命的とまではいかないが、確実にダメージが入った。しかし、まだまだ余裕は残っているので大丈夫だ。焦ることはない。


 もう一度ここいらで態勢を整えるために魔術を放っておくか。


 逃げている最中に気付いた悪魔の力だ。闇系統の魔術が幾つか扱えるようになっていた。

 その中で威力も範囲も中々の『ダーク・ウェーブ』を一発お見舞いする。


 魔術の発動方法は様々だが、魔力を術式に変えて世界に干渉させることが出来ればどんな方法でも良い。

 その中でも一番良いのは念じるだけで発動可能なこと。しかし、誰もが出来る訳ではない。

 そこで人それぞれ自分に合った方法を模索するのだが、ネトゲ時代にはコマンドで可能だったために感覚が掴み難くて今まで魔術にはほぼノー―タッチだった。

 だけど悪魔化したおかげか魔力に対する感覚が鋭敏になって、さっきはイメージで魔術が発動出来た。


 その時のことを思い出して……感覚を頼りに自分の中にある魔力を術式に変換して行く。そして、それを外に出して世界に干渉させる。


 すると闇の炎が自分を中心にして円形状に広がり、周囲の魔物を燃やす。


ボァ……バチバチッ……


 グリンブルスティにもほんの少しダメージが入るようだが、一番は群がる邪魔な魔物を排除できるのが大きい。一掃するのは無理でも、地味に動きやすくなる。

 グリンブルスティも一瞬止まってくれるだけで十分だ。


 そこで生まれたちょっとの猶予を活かして距離を取る……が、もう限界に近いな。


 魔人なので平均より魔力は多いが、あとはレベルに準じた量しかない。

 逃走中にも何体か魔物を倒しレベル11にまで上昇したものの、魔術も使用してしまった。悪魔化が解除されたら絶体絶命だ。







 「マースター!!」







 ホシコっ!!


 仲間たちが戻ってきた。ナイスタイミングだ…………おおっ!!


 す、すげぇ。まさに援軍だ。


 大量の冒険者や兵士の方々が向かって来る。迫力あるなー。

 そこら中に集まった魔物と戦う様子は宛ら戦争のよう。


 剣や槍、斧や戦鎚などで魔物を打ち倒して行く者たち。

 弓やクロスボウ、自らの魔力を弾丸に変換し撃ち出す『魔銃』『魔砲』と呼ばれる武器で魔物を射抜く者たち。

 多種多様な魔術で魔物を薙ぎ払う者たち。

 中には俺と同じように使役した魔物で攻撃する魔物使いも見える。


 兵士は集団で統率の執れた戦いを行っている。


 その波は次第に辺り一帯へと拡がって行った……。







 今、俺と仲間は安全な崖の上で休憩中だ。グリンブルスティも含め、魔物は援軍に任せている。

 悪魔化は解除された。それと同時に粒子となっていた衣類や鎧も自動で元に戻った。便利な機能だ。


 「無事っすか? 怪我はないっすか?」

 「ああ、大丈夫だ。生きてる」

 「タイシ、イキテル」「ヨカッタ、アンシン」「ヤク、タッタ?」

 「もちろん。みんなのおかげで助かった」

 「ギャアウ……」

プルンッ

 「キャシーもスーラもご苦労様」


 それにしても、凄い援軍だな。まさかこんなに来るとは期待していなかった。


 ホシコたちによると、まずはベンさんとセラ、セバスチャンたちが身近な冒険者たちに声を掛けてくれて、門番さんは手の空いている街の兵士に声を掛けてくれたそうだ。

 こう言う時に人脈が役に立つんだな……関わりを持っていて良かった。


 そして、この辺で見ない上級魔物であるグリンブルスティがいると言う情報に強者たちが興味を示し、気付いたら人数が膨れ上がっていたと。

 さらにグリンブルスティはボア種の魔物を大量に引き寄せる性質を持っているので、初級の冒険者たちもお零れを貰おうとやって来た。

 そんな感じらしい。


 何にしても一安心だ。

 中級から上級らしき冒険者たちがグリンブルスティと対等に戦っているのを見ると、感嘆と共に安心も覚える。


 戦い方も見た目も特徴も千差万別。それぞれの道を究めた人たちって感じだ。

 世界は広いな。例えば……


 本来ならば据え置き式の大型弩砲であるバリスタを、個人用のクロスボウのように軽々と扱う『巨人』。

 魔術式の込められた楽器『魔楽器』や自らの声により、音で創り出す魔術『詩』の使い手『吟遊詩人』。

 魔術と機械の融合が生み出した、自律型ゴーレム『魔導人形』。

 あくまで料理を作るのが目的で、戦闘はその過程『魔物調理師』。

 己の肉体を用いて動きで創り出す魔術『舞い』の使い手『踊り子』。

 ドラゴンに跨り天空からの襲撃『竜騎士』。

 様々な魔道具を扱った奇妙な技『曲芸』で、予測不能な戦いを見せる『道化師』。

 チェーンソー風の魔剣を振り回し、ホラー映画宛らの恐怖を演出する『美少女』。

 自作武具の性能を確かめる為、自ら戦場へと赴く『鍛冶職人』。

 危険な薬物と発明品を携えて、丁度良い実験場だとほくそ笑む『マッドサイエンティスト』。

 体の一部を戦闘用に義体化した『改造人間』。

 魔力量の多さを活かし、ガトリング砲の様な魔砲をぶっ放す『狙撃手?』。

 その小さな体で見事な剣捌き『ケット・シー』。

 獣へと化け、野性的な狩り姿『獣人』。

 大きな体はみんなの盾に、全身を甲冑で包んだ『騎士』。

 意思の無い人形を自由自在に操る『人形使い』。

 虫も集まれば脅威となる『虫使い』……等々。個性が定員オーバーだ。


 俺もまだまだ初心者なのだと再確認させられた。

 あんなに苦戦させられたグリンブルスティも既に息絶え絶えなご様子。辺り一面を埋め尽くすほどだった魔物も残り僅かだ。


ジュウ……


 ホシコが光線銃で魔物を倒した。ホシコの光線銃もいわゆる魔銃と呼ばれるものと同じ性質だ。


 ここにも偶に魔物がやってくる。それらを撃退していた結果、レベルも今ので13に上がった。


 「おーい、タイシー」


 魔物使いと共にグリフォンに乗ってベンさんがこっちへ来た。

 ベンさんも先程まで両手持ちのハンマー振り回して大健闘していた。初級とは言えDランクだし、熊だし、実力は相当だ。


 「ベンさん。今回は有り難うございました」

 「良いってことよ。それにしても、さっきの魔術は凄かったな。悪魔みたいな姿になったり、禍々しい炎で周囲を焼き払う魔術は迫力あったぞ」


 魔人だとかはバレていない様子。隠した方が良いのかは分からないけど、取り敢えず訂正しないで良いだろう。


 「ああ、はい。最近覚えたんですよ」

 「そうか。しかし、あのグリンブルスティと魔物の大群相手に持ち堪えるとは……やはり、タイシは一流の素質があるな。一目見たときビビッと来た俺の感覚は間違っていなかったようだ」

 「それは褒め過ぎですよ。逃げてただけですし」

 「いや、レベル10そこいらの冒険者がグリンブルスティと遭遇して生き残る確率なんて奇跡ってぐらいに低いんだ。ホシコちゃんから助けを求められた時は冷や汗ものだったが、流石だよタイシは」

 「そうですか。照れますね」


 こんなにも俺のことを認めてくれる人がいるのって、凄い幸せだな。







 その後、見事魔物の殲滅は完了した。

 結構大規模な戦闘だったので、戦った者たちが街の至る所で盛り上がっている様子が窺える。

 かく言う俺も仲間やベンさん、セラ、セバスチャン、門番さん、他多数で大きめの酒場を貸し切って祝勝会を開いている最中だ。


 「貴方のしぶとさだけは称賛に値しますわ」

 「まさかあれほどの魔物に加えグリンブルスティを相手に一人耐え凌ぐとは。御見事で御座いますぞ、タイシ殿」

 「いやー、みんな褒め過ぎ。調子に乗っちゃうから止めて。みんなも俺の為に助けに来てくれて有り難う」

 「別に貴方の為ではありませんわ。放っておけば街に被害が及ぶと考慮した結果、偶然貴方の助けとなっただけです」

 「それでも、みんなが俺の命の恩人なことには変わりない。セラもありがとう」

 「ま、まぁそこまで感謝したいと仰るのであれば、その言葉を受け取って差し上げないこともありませんわ」

 「なんだ、タイシはこんなツンデレお嬢様にもモテるんだな。魔物だけじゃなく女の扱い方も慣れたもんだと言うことか」

 「つ、ツンデレですってっ!?」

 「いや、別にモテてはいないと思うが……」


 こう言う賑やかな雰囲気も悪くない。

 俺もすっかりこの生活に、この世界に馴染んできたみたいだな。


 「ギャア……」


 キャシーは俺の股の間に収まるようにして座っている。ふぅ、リアルにカップルみたいで何だか良い気分。

 マントを羽織らせているので見えていないが偶に生身を触ったりなんかしちゃったり。

 いかん。戦いの熱が冷めていないのか性獣がエレクトしだした。あ、お尻でスリスリ止めてっ!!


 「キャシー、次はホシコの番っすよ」

 「ギャウ……」


 今度はホシコが股の間に入ってくる。何故か順番制になっているみたいだ。


 「にひ、マスターのここ落ち着くっす」

 「そうか、よしよし。ホシコも今日は大活躍だったな」


 ベンさんや門番さんを見つけて話をしてくれたのはホシコだ。戦闘でも、それ以外でも頼りになる。

 労う様に頭を優しくナデナデする。


 「ひひっ、くすぐったいっす」

 「タイシ、ワタシモ」「ナデナデ、シテ」「イイコ、イイコ」

 「おう。ほーら、いいこいいこ」


 両隣を占領しているハーピー三姉妹も、今日は俺やホシコたちを運んだりと頑張ってくれた。良い子たちだ。


 頭の上に乗っているスーラも撫でてやる……なんか重くなったな。


 最終的にレベルは俺、ホシコ、キャシー、スーラが15。ハーピー三姉妹は17になった。そろそろスーラが進化する頃合いじゃないかな。もしかしたら今夜あたり進化してもおかしくない。


 「おー。お前さんがタイシっつう魔物使いか。良く脂が乗って美味そうなハーピーだな」


 恰幅の良い巨漢が近付いて来た。

 炎のように赤く、揺らめくようにクセのついた短髪と立派なヒゲ。オレンジの瞳を持ち、似合わない調理師の制服を着た男は戦場で見かけたあの……あくまで料理を作るのが目的で、戦闘はその過程『魔物調理師』の人だ。

 大きなフライパンと包丁を両手に持って炎系の魔術も扱いながらの豪快な戦い方は烈火の様を思わせる素晴らしいものだった。

 ここは、この人の店だったようだ。


 ……ん? 美味そうなハーピーだって? いやいや、まさか俺の仲間を調理しちゃおうなんて思ってないだろうな!?


 「ガハハッ!! そんな怯えんなよ。今日は大量の猪を手に入れたからな、食材には間に合ってらぁ」

 「そ、そうですか」

 「しかし、パッと見は普通の兄ちゃんって感じだが、中々ガッツのある奴みたいだな。気に入ったぜ」

 「あ、有り難うございます」

 「俺はガノンってんだ。美味いもん食いたくなったらいつでも来いよ。手頃なのから洒落たのまで何でも取り揃えてるからよ」

 「は、はい。どれも美味しかったです」

 「そうかそうか。今日は祝いの席だからな、これもサービスだ。いっぱい食え」


 猪の丸焼きやソテーなど肉料理を中心にたくさんの皿が並べられていく。

 どれも香ばしく食欲をそそる匂いを漂わせている。正直もう結構食べたが、こんなに美味そうな料理を前にしたら食べずにはいられない。


ガブッ


 「お、いい食いっぷりじゃねえか。ますます気に入ったぜ」

 「お~タイシ~。飲んでるか~食ってるか~」


 今度は無造作に散った茶色の短髪と軽装の鎧を纏った男、門番さんことケイさんがジョッキを両手に持ってフラフラと千鳥足でやってきた。

 向こうで一緒に飲んでいた兵士の方々は全員ダウンしている。これは相当飲んでいるな。


 「ほ~ら、お前も飲め~」

 「うわっ、ちょっと離れて下さいよっ!!」

 「うー、苦しいっすよマスター。この人どけて下さいっす」


 酒癖悪いなー。



微妙なところで切っちゃいましたが、今日中に投稿したかったのでここまで。


途中で選手紹介みたいなの始めてすいません。設定だけ垂れ流したみたいで。完全に自己満です。

ああ言うのを考えだすと止まらないんだけど、キャラとして出そうとすると中々に大変ですね。どのキャラも本編に出したいけど全員出すにはどれくらいかかるだろうか。

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