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一息

 あの後も吟遊詩人が音楽を奏で、踊り子が舞いを披露し、道化師や人形使いが演劇を開いたりと賑わいは朝方まで続いた。

 このお店は冒険者たちに評判が良く広さも十分なため、たくさんの人が集まる交流の場としても機能しているようだった。


 「うぅ、気持ち悪い」


 ケイさんに無理やり酒を飲まされたせいで頭がグワングワンする。体も怠い。

 一応二十歳超えているけど、酒なんて特に興味もなくて全然飲んだこと無かったから辛い。


 「マースタァー……へへぇ……」


 ホシコは途中で寝てしまったので俺がおんぶして宿まで向かっている最中だ。他のみんなもフラフラで、いつ倒れてもおかしくない。あと少しだけ持ってくれー。


バフッ


 全体重をベッドへと委ねる。


 「な、なんとか着いた。もう駄目……」


 張り詰めていた糸が切れたように、途端に意識は薄れて行く……。







 「……う、うぅん……ハッ!!」


 息苦しさを感じて目を覚ますと、キャシーが俺の上に覆い被さりながらペロペロしていた。


 「き、キャシーくすぐったい」


 どれだけ眠っていたのか。まだ朝方なのか、外を見るとほんのりと明るい。


 意外と寝てないな。と思ったが、メニュー画面の時計で確認すると既に夕方だという事実を知った。

 しかし、みんなも未だ夢の中だ。昨日は色々と疲れたからな、仕方ないか。


 「主よ、やっと起きたか」

 「ん? あぁノルミ。お早う」

 「昨日はやけに街が騒がしかったようだが、何かあったのか? 皆も遅い帰りであったが」


 そうか、ノルミは状況が理解出来ていないよな。すっかり放置しちゃって申し訳ない。ただ昨日は精魂尽き果ててしまっていたからな、許してくれ。


 贖罪も込めて、昨日の出来事を詳しくノルミへ説明した。


 「なるほど。主の勇姿を見られなかったことが残念ではあるが、皆が無事で良かった……少し寂しかったがな」

 「ご、ごめん。何か言うこと一つ聞くから」

 「そ、そうか。では、我が空間へ訪れてはくれぬか?」

 「え? 亜空間へ?」

 「だ、駄目か? 体が辛いのであれば強要はせぬが……」


 まぁ、今度はいつでも戻れるし危険はないよな。少し辛いけどノルミの頼みだし、行くか。


 「分かった、良いよ。じゃあキャシーはここで待っていてな」


 ゾンビなので大丈夫だと思うけど、注意を怠ってはいけない。

 俺だけでノルミの中へ入って行く。







 「お、前よりは若干楽な気がする」


 レベルが上がった影響か、不快感や倦怠感は以前のものより軽減された印象だ。


 「よ、ようこそ。我が主よ」

 「うん。それで、何しようか」

 「そ、そうだな。もっと近くで語り合ったりなど、したいな」

 「ふふん。やっぱノルミは意外と甘えん坊さんなんだな」

 「あ、いや……仕方ない、であろう。我にとって、このように会える者など初めてなのだからな」

 「そうだね。良いよ、それならもっと近くで触れ合いながら語り合おうじゃないか」

 「え? そ、そんな、いきなり……あっ」


 俺はノルミへ近付いて行き、座るように促すため手に触れた。


 ……柔らかい。


 一見すると装飾の成されていない真っ白なマネキンとか素体って感じで無機質な印象を受けるのだが、実際に近くへ行き触れてみると柔らかく温もりもあり生物らしさが感じられた。

 さらに驚くことに、ノルミに触れると体だけではなく心や存在そのものまでが近くにあるような、触れた部分から溶け合ってしまうような感覚がした。

 相手の考えや気持ちまでもが何となく分かってしまう程の……こんなのは今まで体験した事がない。


 やはり、ここのノルミは魂みたいな存在だから根本的に何か違うのか。


 『だ、駄目だ。気持ち良すぎて、声が出てしまうっ』


 「ん? ノルミ?」

 「へ? あ、駄目だ……それ以上は……んんっ」


 ノルミは腰が抜けたみたいにヘタ~とその場へ倒れ込んだ。

 表情は掴み難いが、少しだらしない雰囲気が出ている。


 これは……面白いっ!!


 ノルミの心が、求めていることが、感覚が、直接肌で感じられる。

 俺に触れられてノルミは少しの困惑と共にとても幸福な気持ちになっていた。そして……ぐふっ、ぐふふ。


 「自分以外の者に触られることが、こんなにも気持ちの良いものだったとは……こんなの、初めてだ」

 「ノ・ル・ミちゃ~ん」

 「なっ!! ど、どうしたのだ主よ。そんなに血走った目をして……あ、そんな」

 「ここが良いんだろう? ほら、どうだい?」

 「んくっ……そんな、に……あっ……駄目、だ……」


 色気は特に意識していなかったけど、こうして反応されると……これはまた味わい深い。

 胸の膨らみはあるが、乳首はない。アソコもココもエッチな部分はない。なのにエロうぃ。

 やはり、この恥じらう姿、必死で堪えながらも漏れてしまう声、後は俺の脳内補完が加われば隙のない完璧な布陣となる。そう言うことなのだな。


 俺はまた一歩、修羅の道を歩んでしまったようだ。


スリスリ


 「あんっ……んっ……」


モミモミ


 「んんっ……あっ、あっ」


サワサワ


 「らめ~~っ!!」







 「ふぅ……」


 世界から争いが消え、みんなが笑顔でいられる。そんな日が訪れる事はあるのだろうか。

 飢えに苦しみ、理不尽な力に押さえつけられる人々を救いたい。

 この卑しい右手が、絶望の淵にいる誰かへ差し伸べる希望となることがあるのだろうか。

 俺は今、穢れ無き心を……。


 「もっと、してくれぇ……タイシぃ」


 ぐはっ!! は、破壊力抜群だー!!

 しかし、いかんな。調子に乗り過ぎてノルミがすっかり中毒になっている。


 「き、今日はここまでだ。そろそろHPが心許無くなってきたからな」

 「そ、そうか……仕方ないな。また、来てくれるか?」

 「も、もちろん」


 そんな甘い声で頼まれたら童貞フィールドなど紙切れ同然。その要求、二つ返事で受け入れよう。


 「じゃあ戻してくれ」

 「ああ。それではな」







ヒュンッ


 戻ってきた。


 みんなも起きていたようだ。


 「あ、マスター。どこ行ってたっすか?」

 「主は我が空間へと招待していた」

 「そ、そうなんだよ。昨日のことを話すついでにさ」

 「そうっすか。もう夜っすけど、どうするっすか?」

 「そうだな、今日は宿でゆっくりしていよう。まずはご飯もらいに行くか」

 「ゴハンッゴハンッ」「オナカ、スイタ」「ヤッタ、ヤッタ」

 「ギャア……」


 あれ、スーラは?

 ……おおっ!! 寝てる間に進化したみたいだな。


 スーラはホシコと同じぐらいの大きさで人型の『スライム・ヒューマン』に進化していた。

 スライムが人の形を真似ている感じで、まだスライム分のほうが強い。だが動きの幅が広がり、今も俺に向かって手を振っている。


 「進化したんだな、スーラ。よしよし」


 頭を撫でると身を捩って恥ずかしがる動作をした……きゃわわ。



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