印
どうして……。
「大丈夫なのか……キャシー?」
「アァ……ギィ……イ゛」
なんだ? 何か普段の呻き声とは違う。言葉を紡ごうと必死な印象を受ける。
それより何故この空間で生きていられるんだ? キャシーは俺のようにHPも防御力も高い訳ではないはずだ。
ゾンビ種の命は疑似的なものだからか? 魔力によって形成されたものは生物という認識が成されない。そんな感じでシステムの隙間があるとかなのか?
「その者は確か、少し前にここを訪れた魔術師。ゾンビとなり、この空間を彷徨っていたが……いつの間にか消えていたな」
やはりこの空間内でゾンビは命ある者の定義から外されているようだ。
そして想像通りキャシーも罠に掛り、この空間へ引きずり込まれていた。そして死んだ後にフレッシュ・ゾンビとなった……? ならどうしてキャシーは俺と出会った? ここで死んだのならここから出られないはず。
ここに出口はない。向こう側から出したり入れたりは可能だが、こちら側から向こう側へは干渉が不可能な造りとなっている。つまり誰かが向こう側から引き出してくれるか、ノーブル・ミミックと契約を交わし自分を外へ出すように命令を与えるかの二択しか脱出方法がないと彼女は言っていた。しかし向こう側で宝箱に近付けば亜空間へ引きずり込まれ、契約の呪文は不明。どちらも希望は薄い。
本体を殺せば出られる可能性もあるみたいだったが、彼女は死んでいない。
となると、どこかに抜け道が隠されている? 魔術師が最悪の事態に備えて緊急時の脱出方法を用意している可能性もなくはない……か?
それをキャシーは偶々発見し外へ出たと。
「ガァア……」
キャシーは俺の腕を引っ張り、どこかへ連れて行こうとしているようだ。もしかしたら出口があるのかもしれない。
だけどそうなるとノーブル・ミミックは放置することになってしまう。一度出て魔術師を見つけ契約呪文を聞き出すとか方法もあるけど……取り敢えずキャシーについて行って、その後また考えよう。
停滞していた状況にせっかく変化が訪れたのだ。まず行動だ。
ノーブル・ミミックにもそう伝え、三人で果てしなく広い空間の中を歩き出す。
……どこまで行っても終わりが見えてこない。本当にこんな場所で出口が見つかるのか? かなり生命力も吸い取られ気力も無くなってきた。
それでも幸いだったのは、道中に高性能な回復薬が幾つも落ちていたこと。
魔術師は整理するのが面倒だったらしく、特に必要なさそうな物はノーブル・ミミックに入れたままの状態で放置していた。
その回復薬をがぶ飲みして何とか生きているが、今度は膀胱が危険信号を発し始めている。
と、意識が散漫になりながらもキャシーの導きに従い進んでいた……その時。
「ア゛ァ……」
キャシーが顔を向けている方向を見ると、壁は見当たらないのに空中に何か文字が記されていた。
透明な壁に刻まれたような光を放つ文字列。
「どうしたのだ? 何か見つけたのか?」
ノーブル・ミミックには見えていない様子だ。
彼女はこの亜空間全体を把握出来ていると言っていた。そうでなければアイテムの出し入れが不可能だから。なので出口に関しても望み薄だと。
その彼女が認識も出来ず把握出来ていなかった物となると、魔術師が何かしら手を施した重要な物の可能性が高い。
思考を巡らせているとキャシーが徐に文字をひっかきだした。良く見ればひっかき傷のようなものが少し付いている。以前もこれに何かして外へ出たのか……。
ヒュンッ
「えっ!?」
「なっ!?」
き、消えた。急にキャシーが光の粒子となって消えた。
……無事だよな? これは外に出られたってことだよな? 心配だ。
「なにが起こったのだ? 何故あの者は消えたのだ?」
「ノーブル・ミミックには見えてないようだけど、ここに文字が記されているんだ。それを触っていたら消えた」
「なんと……そのような物があったとは。それはどのような文字だ?」
「えーと、“ガイル”って文字」
「ガイル……それは我が創造主の名前だ」
お? て、ことは……この文字はいわゆる契約の印みたいな感じですかね。
キャシーが消えたのも異常を感知したから、その原因をこの空間から排除したとか。そうだったら希望が見えてきたぞ。
この文字を一撃で破壊すれば契約は解除されて魔術師の呪縛から解放される。
晴れてノーブル・ミミックは自由の身。俺も外へ出られる。完璧だ。
「そう言うことなんだけど、大丈夫か? もしかすると予想通り上手く運ばないかもしれない」
「問題ない。元々死ぬつもりでいたのだから可能性があるだけで十分だ」
「よし。じゃあ行くぞ……」
剣をしっかりと握り、全身に力を込める。
そして、渾身の一撃を放つ。
ピキッ……ガシャンッ
――成功だ!!
見事に文字は砕け散った。
「これは……すごい……魂に絡み付いていた鎖が消えた。自らの存在を取り戻したような気分だっ!!」
「良かったな。たぶん契約も解除されているから罠も止められるんじゃないか?」
「ああ、我が肉体も意思の赴くままだ。まさか本当に自由になれるとは。ありがとう」
「いえいえ、じゃあ外に出してくれるか?」
「あ、あぁ。だがその前に、少し頼みがある」
ん? まだ何か問題があるのかな……正直もう死にそうだから早く出たいんだが。
「あ、いや、すまない。外に出たら我と話をしてほしい。伝えたいことがあるのだ」
「ああ、それぐらいなら幾らでも」
「ありがとう。では行くぞ……」
キャシーと同じ様に体が光の粒子へと変わっていき、次第に意識が遠退いていく……。
色々設定を考えたけど結局辻褄を合わせるのが下手で微妙な感じになってしまった気がします。
何だかごっちゃごちゃしてパッとしない話になったかも……。
こじ付けっぽさも酷いかな。
あー難しい。基本がなってない内に凝った話を書こうと思ったのが間違いでした。アイディアが浮かんで突発的に書いた結果ですね。
この作品の基本コンセプトは女の子と軽い感じでイチャイチャ。な、つもりです。




