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 特に障害も無く、魔物を倒しながらどんどん奥へと進んで行く。

 もう結構深くまで来たはず。そろそろ辿り着いても良い頃合いだが……。


 「お、いかにもって雰囲気の扉がある」

 「そうみたいですわね」


 さっきの書物によれば扉の手前に隠蔽のため魔術結界のようなものが張られていたみたいだけど、恐らく既にキャシーが解除した状態なんだろう。

 石造りで両開きの重厚な扉が人ひとりが通れる分だけ開いている。キャシーが通ったのだろう。


 「ここからは慎重に参りましょう。お嬢様は先程話したように危険だと判断した場合はすぐに撤退するのですぞ」

 「ええ、爺やに迷惑を掛けるようなことは致しませんわ」

 「そうなら良いのですが」


 中を確認してみると四角形の空間が拡がっていて、ここで行き止まり、間違いなく最奥のようだ。

 そして、何もなく広い空間にポツリと豪華な宝箱が中央に鎮座している。


 その宝箱は煌びやかな宝石や金属で豪華な装飾がなされていて、どこか威厳のある雰囲気を漂わせている。そして一番目を引くのが蓋の部分にある顔を模した仮面のような白色の飾りだ。

 いかにも財宝が入っていそうな宝箱。あからさま過ぎて怪しい。

 

 書物に記述されていた魔物らしきものも、危険そうなものも見当たらない。


 「どうする? 宝箱以外は何も見当たらないけど」

 「そのようですな。ここはレナ殿がお亡くなりになられた場所やもしれませぬし……何らかの罠が仕掛けられている可能性も考えられます。判断が難しい場合は一度引き返すのが得策かと」

 「ま、そうだよな。セラには悪いけどもう引き返そうか。何かそれっぽい魔物とかいて勝てそうだったら倒そうかなと思ってたけど見当たらないし。やっぱ危険そうだし」

 「……そう、ですわね。レナさんの身に何が起こったのか判明しないのは残念ですが、私もそこまで我が儘ではありません。他にも手掛かりがあるかもしれませんし、今引き返しても変態の疑いが晴れないというだけですから」

 「うっ……そ、そうですね」







ガチャ……







 「えっ……」


 鍵が外れるような音がした。

 音のした方、扉の先を見ると中央にある宝箱らしき物の蓋が開いていた……ヤバい。何か嫌な予感がする。


 「タイシ殿っ!! 御下がりくださいっ!!」


 セバスチャンさんはいち早くセラの前に大盾を構え、守るように立ち塞がっていた。

 そして、俺に対して声を掛けてくれたが……間に合わなかった。


 蓋が開いたのを確認した直後、ソコから細長く伸びる半透明の手のような物が幾つも飛び出してきて、逃げる間もなく俺に絡み付いてきた。

 それに抵抗する術もなく、強い力で一瞬の内に体は引き込まれ……意識が……。







 ……全身から生命力が抜け出し、自分が無くなっていくような感覚がする。


 「ここは……俺は、生きているのか?」


 強力な倦怠感に襲われながらも何とか根性で意識を取り戻し、目を開く。


 「なんだ? ここはどこなんだ?」


 視界に拡がるのは果てしなく只管に真っ白な空間。

 転生する際に訪れたあの空間にも似ているが、ちらほらと何かしら物が地面に転がっているのを見ると若干の現実らしさは窺える。

 しかし、先程からずっと命が削られていくような不快な感覚が全身を襲っているのだが……。


 確か宝箱から複数の半透明な手が伸びてきて捕まり、そのまま宝箱の中に引き込まれた、ぐらいまでは覚えている。と言うことは……ここは宝箱の中? こんな不思議空間が?


 どこか違う場所へ転送されたとか、やっぱり既に死んでいて何らかの処置がこれから行われるとかか?


 「ほう、この空間に入ってなお生物として存在し続けるとは……お主、中々の強さを持っているようだな」

 「うわおっ!! な、なんだっ!?」


 心臓飛び出るかと思った。何だか気持ちが弱くなってしまっている。


 声のした方を見ると、これまた真っ白の人?がいた。

 人の形を成しているが、全身真っ白で何も特徴らしき物が存在しない。どこか無機質で、装飾のない人型の白いマネキンみたいな印象を受ける。

 胸があり、アレがないので恐らく性別は女性……だと思う。判断材料が少なく確証は持てない。


 「え、えと、あの……」

 「ふん。ちと心が弱そうだが、お主ならば頼めるかの」

 「へ? な、なんでしょう……」

 「まずどこから話したものか……」


 彼女は色々と事情を話してくれた。


 彼女は“ノーブル・ミミック”と言うミミック種の高位亜種に分類される魔物で、とある魔術師の手によってミミックを元に創造されたらしい。ちなみにミミックとは宝箱に擬態し、冒険者や近付いた者を襲う魔物だ。

 その魔術師とは例の書物に出てきた魔術師のことなのだが、実はまだ生きていて、さらには人々を苦しめる為にこの罠を仕組んだ張本人だと言うことだ。


 どんな罠かと言うと……まずは洞窟に珍しい魔物を封印し見つけた者に所有権を譲り渡すという内容と、その順序や偽の契約呪文が記述された書物を作成。それを適当な場所に隠しておいて、その魔物であるノーブル・ミミックには記述された契約のための特殊な言語、呪文を引き金に罠が発動するように仕組む。そして、騙された者が契約のため呪文を口にすると罠が発動し、後は近付く者をただ只管にこの空間へ引きずり込む罠が常時発動された状態になって終わり。

 と言う感じの地味に手の込んだ嫌がらせだ。


 クエストが発生して、案内通りに進んで、最後に貰える報酬がBADEND。つまりハズレ。

 例えるならそんな感じ。


 ちなみに何故BADENDかと言うと、この空間はミミック種がそれぞれ体内に持つ亜空間。収納袋やアイテム保存系の物の中に似た造りらしいのだが、基本は生物が生きていられない空間だと言う。

 アイテムを入れた時の状態を保つ。その定義が命ある者に適用されると、アイテム化するために空間自体が生命力をどんどん奪っていく仕様になっているそうだ。

 ただ収納袋や普通のミミックなどはそもそも命ある者を弾いてしまう習性が備わっているので本来そのような事は起こらないのだが、ノーブル・ミミックは魔術師の力でそれが可能になっていると言うことだった。


 じゃあ俺このままだと死ぬってことだよね。HP補正のおかげで何とか持ち堪えているって状況だよね。防御の補正も役に立っているのか分からないけど、取り敢えず……ピンチじゃん。


 「ど、どうすれば……」

 「そこでお主に頼みたいのだが……我を殺してはくれぬか」

 「え?」

 「我も本当はこのような非道な行いをしたくはないのだ。しかし体は我が創造主の手により支配権を剥奪され、自らの意思ではどうすることも出来ぬ」


 彼女やミミック種の本体は目の前にいる真っ白なマネキンらしきものだが、亜空間から出られないため精神体のような扱いで、実際に現実で行動するための体は宝箱の方らしい。

 肉体が宝箱の方で、こちらは魂って感じか。


 しかし、殺してくれって……。

 確かに本体を殺せば肉体も活動を止め、俺もここから出られるかもしれない。けど殺してくれって向こうから頼まれて、しかも相手が悪い人じゃないなんて状況はちょっと躊躇しちゃうよなぁ。

 こうやって話もしちゃったし、助けたいと思っちゃうよね。

 とか言いつつも自分が死ぬのも嫌で、お願いされた訳だしやっぱ殺した方が相手の為かもと自分を納得させようとしちゃったり。


 何か方法はないか……。

 ネトゲ時代に培った知識の中で役に立ちそうなものは……。


 ミミックは確か魔術師の書物にも記述されていたように特殊な呪文で契約出来るんだよ。そこは本当なはずなんだ。

 一番最初のミミックは魔術師が既存の魔物に改良を施して創造された人造魔物で、従属させるためのミミック専用呪文も一緒に創造されていたと言う設定をネトゲ時代に見た覚えがあるからな。

 そして、今でもミミック種はその名残で正しい呪文を唱えると従属化に置く、契約を結ぶことが出来るとか何とか……そんなような記憶がある。

 ただ既に長い時を経て独自の進化を遂げてしまっているので呪文も初期の頃と微妙に変化していて決まった呪文がなく、ミミック個々によってもバラバラだったのでネトゲ時代にミミックを仲間にするのに苦労したのも良い思い出だ。


 つまり、彼女に対応した呪文を唱えることが出来たら支配権は俺に移り罠も止められるってことだよな?


 「……と言う訳で、契約呪文を教えてくれ」

 「すまないが、自分でも分からぬのだ。その部分の記憶は消去されているらしい」

 「そんな……」

 「我を気遣ってくれるのは嬉しいが、他に手はない。殺してくれ。このような頼みは迷惑かもしれぬが、自害出来ぬように制限が掛けられているのだ」


 それはそうか。どうにか出来るなら殺してくれなんて頼まないよな。

 これはいよいよ覚悟を決めるべきか?


 諦めの気持ちに心が覆い尽くされ始めた、そんなとき。


 一筋の光が現れた。







 「ギャアッ……」







 え? なんでキャシーがここに!?



今回の話は設定や説明が長く、ややこしい感じになってしまったかもしれません。分かり難かったらすみません。纏めるの下手です。

ご都合主義っぽさも出てしまったかな。

自分でも何回か書き直しているうちに色んな認識があやふやに……。


何かご不満が御座いましたらご指摘お願いします。直せそうな部分は直します。

ただ更新を続けることが最優先事項ですので、考えすぎて止まっちゃいそうな場合はこのまま押し切る可能性もあります。


まだまだ未熟者ですが、これからもお付き合い頂ければ幸いです。

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