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手掛かり

 朝食をとって、支度をして、マンドラゴラに魔力水をあげて、準備オッケー。


 「よし。出発だ」


 門付近にみんなで向かうと既に昨日の二人は待っていた。


 「すいません。遅くなりましたか?」

 「いえいえ、私共も先程来たばかりですぞ」

 「遅いですわ。変態のくせに人を待たせるなんて、言語道断です」

 「へ、変態って……まぁ良いです。行きましょう」

 「タイシ、ヘンタイ?」

 「違う……」


 違うとも言い難い。


 「お、今日はまた大人数で出掛けるんだな。気を付けて行って来いよ」

 「はい。行ってきます」


 いつもの門番さんに見送られて洞窟へ歩き出す。







 道中自己紹介やら親睦を兼ねて色々と話した。


 お嬢様風の女性はセラと言う名で、俺より少し冒険者歴は長いようだった。良家の娘さんと言うことらしいのだが、父が病に倒れたうえに財政難だったので自ら冒険者として金を稼ぎ仕送りをしていると……見た目から受ける印象とは違ってアグレッシブな人だな。

 攻撃魔術をメインに扱う魔術師だと言っていた。

 綺麗な装飾のされた持ち手部分から細長い棒が伸びているような形状で、三十センチ程の魔術強化効果のある杖を持っている。

 実は俺より年下で、十八歳。


 執事風の老人はセバスチャンと言う名で、セラの家、アルセーヌ家に仕える執事らしい。セラの父からセラが無茶をしないように見守ってくれと言いつけられているが、セラはセラでお転婆な気質で正義感も強いため止められないと思い、同じく冒険者として近くで守っていると言っていた。

 そのためかメインが両手で扱うような大きな盾で、敵からの攻撃は絶対にセラまで届かせない安全第一なスタイルのようだ。

 大きな盾を彩る装飾や模様が芸術品の如く繊細さと華やかさを併せ持っていて、戦闘向きでは無さそうに見えるが素材も良くて魔術的な施しもなされているので実用面で考えても非常に性能の高い代物らしい。

 セラの父から守るための力として授けられた物だと言っていた。


 二人とも戦うところを見せてもらったが、コンビネーションもバッチリで動きも整っていて実力は相当なものに思えた。レベルという面で見てもセラが20、セバスチャンが35と十分に高い。


 「二人ともすごいですね」

 「当たり前ですわ。あなたのような変態に負けたくはありませんもの」

 「そう仰られるタイシ殿も防御に関しては光るものが御座いますぞ。そのレベルと装備から導き出されるような硬さではありませぬ」

 「ええ、まぁ唯一俺が自慢できるとこですかね。実際努力で身に着けたものとは違うので誇れはしないですけど」

 「それもタイシ殿の個性であり強さ、それに甘えず心身ともに鍛練を怠らなければきっと一流の冒険者、戦士となれるでしょうな」

 「爺やは変態を褒めすぎです。このような万年発情魔はきっと与えられたものに甘えて呆気なく最期を迎えますわ」


 今日は一段と賑やかで良いな……。

 ホシコやスーラ、ハーピー三姉妹も楽しそうに見える。キャシーはちゃんと一人で歩けるようになったのだが、今日はやたらと俺にくっ付いてくる。戦闘のときは離れてくれるが……なんだろ? 甘えてるのか?


 ちなみにキャシーは生前、アルセーヌ家に雇われてセラに魔術を教えていたレナと言う魔術師だと聞いた。給料が払えなくなったので数か月前に契約を解消したが、キャシーも何か別の気になることがあったらしく不満は抱かなかったと言うことだった。

 そして、年齢は不詳と……ま、まぁ見た目が綺麗なら問題ない。


 「またレナさんとそんなに密着して、さすが汚らわしい性獣ですわね」

 「いや、キャシーが離れないんだから仕方ないだろ」

 「そうしてレナさんに責任を押し付けるあたりが卑劣ですわ。そのように自ら調教を施しておきながら」

 「それも前に説明しただろ」

 「私はまだあなたを信用していませんので」

 「はぁ……あ、あそこの洞窟だよ」


 洞窟が見えてきた。取り敢えず部屋の辺りまで進んでみるか。







 「ほう、これはレナ殿が所有されていた書物の数々ですな。見覚えがあります」

 「こちらのティーカップは私が贈った物ですわ。レナさんはこの部屋にいた……」

 「しかし、このような低級魔物ばかりの場所でレナ殿が死ぬなど考えられませぬな」


ジロッ……


 こっち見ないでセラさん。俺は無実だ。


 「あ、これなんっすか?」

 「ん? どうしたホシコ」


 ホシコが何か発見したようだ。

 部屋の隅の方、地面に砂と埃をかぶった一冊の本が落ちている。


 要約すると……高位の魔術師が魔術を用いて生み出した魔物を、自身の死期を悟ってこの洞窟の最奥に封印した、と。そんな内容が書き記してあった。

 さらに見つけた者にその所有権を譲り渡すという旨と、その魔物を目覚めさせ契約を交わす為の特殊な言語のような記述もあった。どんな魔物なんだ?


 しかし、これは手掛かりになりそうだな。お手柄だ、ホシコ。


 俺はセラとセバスチャンさんに本を見せた。


 「これは、確かに関係があるやもしれませぬな。レナ殿は珍しい魔物を収集するのが趣味だと仰られておられたことが御座います。遠く離れた自宅に何体かの魔物を住まわせておられて、定期的に帰宅していると」

 「確かにそうでしたわね。でしたらこの本に記述されている魔物を目指して洞窟へ訪れて……」

 「けど、この書かれ方だと問題なく契約を済ませて終わりって流れみたいな感じなんだよな」

 「その場所へ向かえば分かるかもしれませんわ」

 「しかし、レナ殿が命を落とす原因となった何かがあるやもしれませぬ。危険な予感がしますぞ」

 「そうだよな。そんな死ぬかもしれない程危険な場所へ行くのは……」

 「ですが、レナさんは私の師であり、姉のように優しく友人のように接して下さった大切な方ですわ。もしレナさんを酷い目にあわせた者がいるのなら、それを許してはおけません」


 このお嬢様は退かなそうだな。


 「俺ならちょっとやそっとのことじゃ傷も付かないし、一人で見てくるよ」

 「いや、タイシ殿御一人に任せるわけには行きませぬ。この老いぼれも共に行かせて頂きましょう」

 「変態に借りを作りたくありませんし、私も行きますわ」

 「お嬢様を危険な目には合わせられませぬ。私にはこの大盾が御座いますし一人でも」

 「俺は汚名を晴らしたいだけだし大丈夫……」







 何だかんだと話して結局俺、セラ、セバスチャンさんの三人で向かうことになった。

 俺の仲間たちは部屋で待機していてもらう。ちょっとごねられたが、どうにか説得した。

 ハーピー三姉妹は洞窟だと狭くて戦い辛いだろうし、キャシーもスーラも俺と違ってチートがないので万が一のことがあったら嫌だし、ホシコはまた面倒を押し付けるようだけど保護者役を頼みたい。


 てな訳で、まだ探索していなかった洞窟のもっと奥深くへと向かう。


 「気を付けて下さいっすマスター」

 「タイシ、ハヤクキテ」

 「ガァア……」

プルンッ

 「おう、少し待っててな」



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