二話08 安心感は半端ない背中
同時刻、地下深く。
ごああああああああああああああんんんん……。
廃坑全体が低く唸り、天井から細かい砂がぱらぱらと落ちてきた。
ジオが顔を上げる。
「……近いぞ。崩落か?」
背中で揺れるホシミがすぐ返した。
「迂闊なこと言わないでってば。ここだっていつ崩れるか分かんないのに。」
ジオは返事をするより先に動いた。
ホシミを帯で背中に括り付け、きゅっ、きゅっと締め直す。
「凄いな、両手足が自由だけど、しっかり固定されてて……安心感が半端ない」
「よく弟あやしてたからな。舌噛むなよ!」
そのまま前傾姿勢になり、一気に走り出した。
ダッ!
轟音のした方角、廃坑のさらに奥へ。
足音が岩壁に跳ね返る。
暗がりの先では、赤い光がちらちらと揺れていた。
ジオの目が細くなる。
「間違いない。炎の揺らぎを感じる」
ホシミが僅かに眉を寄せた。
「……こっちで間違いないの?」
「ああ、間違いない。――いるぞ、奴ら」
ズン……。
前方の岩陰から、赤い巨体が姿を現した。
さらにその後ろから、もう一体。
ズン、ズン。
人間の倍はありそうな巨体。岩の様な身体の隙間から炎が吹き出し、内部では鈍い赤色の魔力が脈打っている。
フレイムゴーレム。
ジオは咄嗟にホシミの前へ出た。
ブワッ!!
全身を炎が包む。
正面のゴーレムが剛腕を振り上げた。
振り下ろす。
その前にジオが懐へ潜り込んだ。
ドゴン!!
右拳が脇腹へ突き刺さり、巨体が僅かに傾く。
少し遅れて、
ボッ!ボッ!ボッ!
左からボウリング玉ほどの火球が飛んできた。
ホシミの魔法。
ズガガガガガガ!!!!!!
胸元へ数発直撃。
それでもゴーレムは倒れない。
ぐらついたまま腕を振り上げ、今度はホシミを狙った。
「っ!」
ホシミを庇うようにジオは身体を捻る。
ボッ!
そのまま火球を撃ち込みながら左腕を差し込んだ。
ガンッ!!
剛腕をまともに受け止める。
「ぐっ……!」
腕が沈む。
それでも踏ん張る。
腰を落とし、右拳を引いた。
「おおおおっ!!」
ドゴーンッッッ!!!
拳がゴーレムの額へ叩き込まれた。
巨体が吹き飛ぶ。
ドスン!!
岩床へ叩き付けられ、身体を覆っていた炎がすっと消えた。
沈黙。
「囲まれたぞ!」
ホシミの声に、ジオが顔を上げる。
左右の岩陰からフレイムゴーレムが姿を現し、背後からも重たい足音が近づいて来ていた。正面にもまだ数体残っている。
いつの間にか、完全に囲まれている。
ズン……ズン……。
狭い坑道いっぱいに赤い炎が揺れ、逃げ道を塞ぐように少しずつ距離を詰めて来る。
ホシミは魔杖を握り直した。
「ジオ、首尾は?」
ジオは周囲を一度見回す。
それだけ。
口元が少し上がった。
「……いいね。燃えてきた」




