第三十五話 花のあとに
光が溢れた。
白く。
どこまでも白く。
世界そのものが光へ溶けていくようだった。
風が吹く。
花弁が舞う。
無数の白い花弁。
空へ。
高く。
どこまでも。
ひなの身体は少しずつ光へ変わっていく。
指先から。
腕から。
髪から。
まるで春の風に攫われる花弁みたいに。
怖くはなかった。
寂しくもない。
暖かかった。
春人がいる。
陽菜がいる。
そんな気がした。
風の中。
光の中。
確かに。
「終わったんだね」
小さく呟く。
誰に向けた言葉だったのか。
自分でも分からなかった。
けれど。
胸は満たされていた。
旅は終わった。
長い長い物語は終わった。
そして。
ひなの身体は最後の光になった。
その瞬間だった。
白い光の中から一匹の蝶が現れる。
白い蝶。
続いて。
青い蝶。
そして。
淡い金色の蝶。
三匹の蝶はひなの周りを舞った。
くるり。
くるりと。
まるで迎えに来たみたいに。
ひなは思わず笑う。
「……そっか」
分かった。
言葉なんていらなかった。
白い蝶。
青い蝶。
金色の蝶。
三匹は寄り添うように飛んでいる。
ひなは目を閉じた。
旅の記憶が浮かぶ。
花の村。
春人との旅。
陽菜との出会い。
たくさんの花たち。
たくさんの想い。
全部。
全部大切だった。
「ありがとう」
その言葉を最後に。
ひなの姿は光へ溶けた。
あとには。
一輪の白い花だけが残った。
風が吹く。
花は静かに揺れる。
誰もいない世界で。
けれど不思議と寂しくはなかった。
三匹の蝶が花の周りを舞う。
まるで見守るように。
まるで笑うように。
いつまでも。
いつまでも。
なんかここだけ短いですけど、お気になさらず……(;^ω^)




