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最終話:花言葉

春の風が吹いた。

 空は青い。雲はゆっくり流れている。

 かつて世界を覆っていた花の海は、もうない。

 人々の声も。

 悲しみも。

 苦しみも。

 すべて静かに眠りついた。

 世界は本当の意味で終わりを迎えたのだ。

 そして始まりでもある。

 世界の中心、最初の花が咲いた場所。

 小さく。静かで優しい花だった。

 その周りを三匹の蝶が飛んでいる。

 白い蝶。

 青い蝶。

 金色の蝶。

 離れないように。見失わないように。

 寄り添いながら。

 風にに乗って舞っていた。

 誰も知らない。

 その花の名前を。

 誰も知らない。

 その花がどんな想いを抱いていたかを。

 けれどもし知る者がいるのなら、きっとこう呼ぶだろう。

 それは——希望の花だと。

 誰かを忘れない想い。

 誰かを愛した記憶。

 誰かを救いたいと願った優しさ。

 そのすべてが咲かせた花だと。

 風が吹く。

 一輪の花が揺れる。

 三匹の蝶が花の周りを舞う。

 まるで祝福するように。

 まるで笑うように。

 どこまでも穏やかに。

 長い冬が終わった。

 けれど、あの日誰かを想った心だけは消えない。

 愛も。

 願いも。

 優しさも。

 きっと世界のどこかに残り続ける。

 だから花は散っても、想いは散らない。

 それがこの世界に咲いた最後の花言葉だった。

 了

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