第8話 愚痴を受け止めてくれた人
私が小学1年生の時、父方の祖父が亡くなった。
祖父の葬式には、たくさんの親戚が集まり、見知らぬ顔も多く、幼い私は、ただその場の空気に飲まれていた。
その中に、ひときわ目を引くお姉さんがいた。
私にとっては『はとこ』にあたる子で、家族みんなが
「お人形さんみたい」
と口を揃えるほど、とてもかわいらしい人だった。
幼い私は、そのお姉さんの容姿を、羨ましく思ったことがあった。
数年後、そのはとこのお母さんが、突然、家に訪ねてきた。
仏壇に手を合わせている姿を見ても、私は誰なのか思い出せず、
「どちら様ですか?」
と尋ねると、
「おじいちゃんのお葬式の時にいた、お姉さんいたでしょ。その子のお母さんよ」
と言われ、私は驚いた。
そこから話が弾み、その日は急遽、1泊してもらうことになった。
電話番号も教えてもらい、学校から帰ってきたあとや、親がいないタイミングを見計らっては、こっそり電話をかけ、日々の愚痴を聞いてもらうようになった。
この時は、携帯電話を持っていなかったから、家の固定電話を使っていたが、ある日、電話会社から通話時間ごとに、料金が記載された請求書が届き、父にこう言われた。
「どうしてこんな長電話するんだ。もうかけるな」
母からも、
「毎日電話して相手に迷惑でしょ。そのうち、嫌われるよ」
と脅すように言われ、私は電話をかけられなくなった。
それから1年ほど経った頃、はとこのお母さんがまた、アポなしで家に来た。
「最近、愛羅ちゃんから電話がないから来ちゃった」
と言われ、私は正直に
「電話を禁止されていたから」
と伝えた。
すると、ちょうどそのタイミングで母が帰宅し、はとこのお母さんは母に向かって、
「全然迷惑じゃないし、いつでも電話してくれていいから」
と、優しく言ってくれた。
母は最初こそ躊躇していたが、はとこのお母さんが何度も
「本当に迷惑じゃないから」
と言ってくれたことで、私はまた、電話で悩みを聞いてもらえるようになった。
さらに、祖父の弟(はとこのお母さんの父)が牧場を営んでいたこともあり、数ヶ月後に私は、その牧場で1週間ほど、お世話することになった。
その時、いざという時のために、祖母の携帯電話を借りることになったが、出発直前まで父と母からは、
「よっぽどのことがない限り、電話するな」
と、しつこく言われ続けた。
幼い私は、ただ
『話を聞いてくれる大人』
が欲しかっただけなのに、その小さな居場所さえも制限されていたのでした。




