第46話 役所の影と、言い返したいのに言えない私
ついこないだ、ポストを開けた瞬間、胸の奥がズキッとした。
日本年金機構からの再提出書類。
「戸籍上の配偶者の住所を記載してください」
そう書かれていた。
「前回、『行方不明』ってちゃんと書いたよね?」
「なんで、分からないの?」
「それ以前に、この書類を送り返してきた人自身、ちゃんと目、見えてます?」
思わずそうツッコミたくなるほど、
「融通が利かないな」
と感じた。
さらに、昔住んでた地域から保険料の通知まで届いた。
もう、2年前に離れているのに、今さら何を言ってくるのだろうか?
「そもそも、お金に余裕がない人に、安易に『払え』なんて言わないでくれる?」
「こっちは、必死で生活してるのに!」
「それを脅すように言うなら、あなた方は、生活保護受給者にも払えって言うのか? 実際、そう言ってるのと同じことだぞ!」
「もし、逆の立場だったら、あなた方は不快に思わないんですか?」
こういう通知が来るたびに、心がざわつくし、そう反論したくなってしまう。
怒りと不安が混ざったような、この嫌な感覚。
「それに、どうしてそんな、2年前のやつを、今さら払わないといけないのだろうか?」
「こんな無意味なものにお金をかけたくない!」
「もう脅すような通知は来てほしくない!」
そんな気持ちが、胸の中で渦巻くし、
「仮に余裕があっても、こんなどうでもいいものに、お金を払う必要があるのだろうか?」
とさえ思ってしまう。
だから、この件で、昔住んでた地域に電話で問い合わせてみた。
「再三送付したって文面に書いてありますが、そもそも、そんな通知すら、届いていなかった」
と、本当のことだったから、そう何度も主張したが、電話口のおばさんは、
「これまで何度も郵送しました」
「払うべきものなので、払ってください」
の一点張りで、私の主張は無視された。
こういう出来事に遭遇するたびに、
「今日こそは、今日こそは言ってやる!」
そう、何度も思ってきた。
けど結局、言えないまま終わることが多い。
そのたびにまたひとつ、胸の奥にモヤモヤが積もっていく。
「反論しようとすると、口が吃ってしまう」
「言いたいことがあるのに、言葉がうまく出てこない」
「そのたびに、自分が嫌になる」
「どうして私は、こんなに生きづらい性格なんだろう」
役所の冷たさも、制度の硬さも、そして、自分の性格さえも、全部が重なって押し寄せてくる日だった。
それでも私は、今日も生きている。
怒りながら、悩みながら、それでも前へ進んでいるのだった。




