第3話 昔は祖母と過ごしていた日々
私が幼い頃、よく一緒に過ごしていたのは、父方の祖母だった。
祖母は時々甘やかしてくれ、欲しいお菓子を買ってくれたり、優しく接してくれたこともあった。
幼い私にとって、その時間は、確かに小さな救いでもあったが、家族の中でトラブルが起きると、話はいつも違う方向へ向かった。
たとえ、明らかに相手が悪い時でも、祖母は決まってこう言ってきた。
「ここはあんたが折れて謝っておけ」
「目上に逆らうもんじゃない」
幼い私は、理不尽さをただ、飲み込むしかなかった。
祖母は、戦前から戦中にかけて子ども時代を過ごしたらしく、母親に厳しく扱われてきたそう。
だからなのか、私がどんな被害にあっても、祖母は必ずと言っていいほど、自分の昔話を持ち出してきては
「ばぁちゃんの小さい頃は、もっと大変だった」
「ばぁちゃんも苦労してきたんだから、あんたも我慢しなさい」
その言葉は、いつも
『その場を丸く収めるための道具』
のように使われていた。
私が不登校になった時でさえ、祖母は決まってこう言ってきた。
「ばぁちゃんなんて、ろくに学校にも通えなかったんだよ」
その瞬間、胸の奥で何かがぷつんと切れ、私は思わず言い返した。
「いい加減にして! 何かあるたびに、自分の昔話を持ち出すの、辞めてよ!」
祖母は驚いた顔をしていたが、私の気持ちはもう限界だった。
私が成長するにつれ、祖母は私を
『便利な存在』
として扱うようになってきた。
他に手が空いている家族がいても、何でもかんでも私に頼んできたり、命令のように、家事を押しつけてきた。
2人で家にいる時は、
「ご飯作って」
としょっちゅう言われ、私が食事をしてないと、わざわざ呼びつけては、私が食べ終わるまで、じっと見張られることもあった。
そんな祖母も、外ではまるで別人のように
『良い人』
を演じていた。
ご近所さんや他所では善人を振る舞い、都合の悪いことは、たとえ自分が言ったことであっても、
「そんなこと言ってない!」
と平然と否定してきた。
幼い私は、祖母の優しさと理不尽さの間で揺れながら、
「家族の中で自分は、どう扱われているのか?」
分からないまま、過ごしていたのでした。




