表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
藍子の武者修行  作者: 山口 にま
第三章
14/63

志穂の告白

数日後藍子宛に荷物が届いた。送り主は熊倉志穂。有名なパテシエのチョコレート詰め合わせだった。

藍子は包みを解いて、夕食後の食卓に置いた。楓は先日の諍いを気にしている風はなく、早速チョコレートに手を伸ばした。前歯で齧り、口の中でカカオの産地や香料まで確かめるかのようにじっくりと味わっている。


自室に戻った藍子は志穂にお礼のメールを打った。

「お気遣いありがとうございます。家族と一緒に美味しく頂きました。鵜飼藍子」

返事はすぐに来た。

「こちらこそありがとうございます。明日、母親と一緒に警察に行きます。犯人を告訴する為に必要な書類があるようなので。熊倉志穂」

「そうですね。加害者には自分の罪を償ってもらうしかないです。もし私の証言が必要ならばいつでも出頭します」

志穂「ありがとうございます」

藍子「女性であると言うだけで、いやらしい目で見られたり、性別による役割分担とか押し付けられて、なんだか生きづらいです。そう言う生きづらさを埋めるために私は合気道をやっているのかなぁ」

志穂「・・・実はこう言う事、初めてじゃないんです」

志穂の告白に藍子は目を疑った。

藍子「失礼ですけれど、それって志穂さんの耳が聞こえないから?」

志穂「そうだと思います。今回の犯人は、私が駅で手話を使っているのを見てろうあ者だと分かったそうです。普段はろうあ者だと気づかれないように音楽用イヤホンに見えるメタリックな補聴器をつけていました。でも今回は改札まで友達と一緒だった事もあり油断してしまいました。私以外もろうあ者の女性の多くは被害に遭っています」

藍子は怒りで心臓が爆発しそうになる。志穂の吐息のような「ありがと」を思い出した。あんな声しか出せないと分かっていて志穂を列車のトイレに連れ込んだと言うのか。犯人を殺してやりたいと思った。障害者を犯す者は普通の性犯罪よりも重刑にして欲しいと思った。

「卑劣ですね!許せません!そんな男、前のめりにさせてブロック塀に脳天から激突させてやりたいです」

藍子は怒りのままそんな物騒な文言をメールに打つ。志穂は、

「藍子さんならば出来そう笑」

と返して来た。

藍子「合気道で相手を前のめりにさせて床にうつ伏せに組み伏せる技があります。簡単ですよ」

志穂「私にも出来ますかね?」

藍子「出来ます!出来ます!そもそも武道は型さえ覚えたら誰でも出来るようになっているんです。江戸時代は締め切った道場で稽古をし、稽古を盗み見した者を必ず斬り殺していたそうです。技や型の流出を防ぐために」

志穂「斬り殺す・・・・激しい世界ですね」

藍子「それぐらい武道の習得はたやすいと言う事です」

志穂「あのー、藍子さんの道場に行ってみても良いですか?」

藍子「勿論です。土曜日の稽古ならば先生が二人いらっしゃるし、有段者も何人もいますから初心者を丁寧に教えられると思いますよ」

志穂は武道の一つぐらい習得した方が良いんじゃないかと藍子は思っていた。本人が自ら求めるのならばこれ以上の事はない。

藍子「先生に話してみますね。まずは運動しやすい格好で見学にいらして下さい」

志穂「私、泣きたくなるぐらい運動神経がないですよ」

藍子「ご心配なく。運動神経がなくても老人でも合気道の習得は出来ます」


メールのやり取りを終えた後、藍子は憤激で目がくらんだ。自分が知らないところで一番弱い者が犠牲になっていたとは。志穂には絶対に有段者になって欲しい。黒帯になるまで合気道を研鑽すればもう二度と自分を奪われる事はない。

強さは善だ。強さとは肉体の強さ、経済力の強さ。藍子はいつも藍子達一家を上から押さえつける敬三を憎たらしく思いながら、もっと強くならねばと自分に誓った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ