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19話 勇者爆誕




名称:エリス

性別:♀

種族:人間族

HP:9999/9999

MP:999/999

筋力:A

魔力:A

耐久:A

敏捷:A


『う……うわ……』


 立ち上がった俺の姿を見て、剣さんの息を呑む声が聞こえる。

 自分でもステータスを確認してみるが、予想通りステータス値がMAXになっているな。恐らくはこれが人間の限界でもあるんだろう。あと、この子の名前はエリスか。他人のステータスを見た場合、名前は名乗られるまで公開はされないが、このように憑依すれば自分の身体という事で認識出来るようだな。

 やろうと思えば記憶すら読み取る事が出来るだろうが、今はそれが目的では無いから意識はしないでおこう。


 ちなみに少年の意識であるが、今は完全に眠りについているみたいだ。だからこそ、こうして身体を借りて動かせるわけであるが。

 正直言って、本人に了承を得ないままこんな事になってしまって非常に申し訳ないのだが、非常時と言う事で勘弁してもらおう。


 とりあえず、まずは身体が動くかどうか確認確認。

 指……握っては開いてを繰り返してみる。……問題なく動く。続いてその場からジャンプ。そう言えば、重力があると言うのはこんな感じだったなと、なんか泣きそうになった。

 うむ。本来の俺とは体格が全く違うせいでものすっごく違和感はあるが、とりあえず動いてくれる。


『すっげぇ。……そう言えば幽霊だもんね。憑りつくとか出来るよね』

『せめて憑依って言って』


 イメージ的には子供に悪霊が憑りついて超常現象を引き起こすっていう映画があったと思うが、アレと同じだ。

 でも、憑依している俺からすれば、3分巨大化できる変身ヒーローみたいなもんだな。あれも、変身じゃなくて元の姿に戻っているんじゃなかったか。

 それに、そのヒーロー同様にあまり長くは持たなそうだ。膨大過ぎる魔力に、この子の身体がついていけていない。持って数分だなこれは。


『リボルバー』


 俺はテスト運転とばかりに指先に魔力を込め、マジックガンを吸血鬼少女目掛けてぶっぱなす。

 すると、今まで唖然とした顔でこちらを見ていた少女はマジックガンの直撃と共に吹き飛び、大地の上をゴロゴロと転がる結果となる。


 うし! 予想通りこの身体を使えばダメージが通るぞ。

 少女はすぐに起き上がり、体勢を立て直す。そしてギリギリと顔を歪めてこちらを睨みつけた。


「き……貴様、まさかさっきの神族か!?」

『そうだよ。という事で、ここからはガチバトルだ』


 俺はその場から飛び出し、少女に向かって拳を振り下ろした。いくら悪者とは言え、女の子の顔を殴るのは気が引けたので、狙いはお腹である。


「うぐ!」


 ボディブローは見事命中。少女は身体をくの字に仰け反らせ、そのまま後方へと吹き飛んだ。

 うーむ、やはりパワーも相当アップしているようだ。

 ただ、パワーと肉体の耐久力のバランスが掴めていないのか、殴った際の拳の皮が破れ、血が出ている。借り物の身体なのに悪い事をしてしまった。

 ちくしょう。肉体がある事に浮かれてしまったか。

 今度は今まで通り魔力を使った攻撃に専念するとしよう。


 俺は更に指先に魔力を溜めると、今度はマジックガンを乱射する。名づけるならば『マシンガン』である。

 だが、今度は吸血鬼少女の方もその気になったようで、何やら魔力の壁のようなものを前面に精製して防いで見せた。うーむ、やはり幽霊のまま撃つよりも威力が低いな。それに、MPの減りが尋常じゃない。

 あ! そう言えば、MPは999しか無いんだった。って事は、今まで見たいにバカスカ魔法は使えないんだよな。


「チッ!」


 吸血鬼少女は舌打ちし、そのまま高くジャンプする。そして、低空飛行して頭上に迫っていた巨大なドラゴン……いや、プテラノドンみたいに腕と翼が一体化しているタイプだから、あれはワイバーンだな……の足を掴み、そのまま空へ離脱する。

 ちくしょう。体勢を立て直すのか、そのまま帰還して俺の存在を魔王軍の偉い奴にでも報告するのか? これなら、一気に攻撃力の高い技を使って仕留めとけば良かった。


 だが、これで別の事に少しの間だけ意識を向ける事が出来る。

 そう思って俺は剣さんに向き直った。だが、剣さんの方は振り返った俺の姿を見て、こんな事を言い出す。


『うーむ。さすがに髪の毛が金髪になったりはしないんだね』


 ちょっとずっこけそうになった。

 ボケなのかただマイペースなのか分からんが、相変わらずのお人である。……剣だけど。


 まぁ、確かに外見的な変化は俺には分からないからな。見た感じ、肌の色が変わっているとかオーラが炎みたいに放出されているとか、そういった分かりやすい変化もないみたいだし。


『あ! でも、目の色が金色になってるっぽいよ。なんかキラキラ光って見える』


 外見的な変化はその程度か。まぁ目の色なら俺には確認できないな。

 ともあれ、今はそんな事を話している余裕はない。


『剣さん』

『は……はひ!』


 真剣な俺の様子に、剣さんも背筋をピンと伸ばしたようになる。……気のせいだけど。


『こんな状況ではあるけど、昨日の約束……果たさせてもらうよ』


 そう言うと、剣さんはゴクリと唾を飲み込む。……実際には飲み込んでないけど。そもそも唾は出ないし。


『……って事は、マジでやるんだね』

『マジです』

『……うっわー。遂にこの時が来たか―』


 そう。あの吸血鬼少女に攻撃が当たったと言う事は、今まで触れられなかった剣さんに触れられるという事だ。

 しかも、今の俺の魔力の数値はA。本来のEXよりは下がるが、十分に剣さんを抜ける資格を持っていることになる。


 ……つまり、遂に剣さんを抜く時が来たのだ。


『えっとあの……不束者ふつつかものですが、どうかよろしくお願いします』

『いや、これってそういうんじゃないけども』

『あたしにとっちゃそういうもんなんだよう! 何せ、この日が来る事を200年待っていたんだから―――って、ああっ!!』


 い!?

 に、200年!? 剣さんが俺よりもずっと長くこの世界に存在している事はなんとなく察していたが、200年もこんな場所に居たって言うのか!?


『あああ!! うそうそ!! 今の聞かなかったことにして!!』


 ……剣さんが普段から異常に明るく振る舞っているが、きっと色々な事があったんだろう。彼女の心の整理がつくまで、俺はそのことに関して追及はしないでおくことにした。

 だから、今の発言も無かったものとして進める事にする。


『……じゃあ、行きます!!』

『おう! どんと来い!!』


 ズンズンと剣さんの台座に近づくと、俺はその柄をむんずと掴む!

 触れた! あとはこのまま抜くだけだ!!


『あ! ちょっと待って!!』


 そこで剣さんが俺を止める。何のこっちゃと思っていると、剣さんは申し訳なさげに言うのだった。


『あ……申し訳ないけど、レイ君の剣になるにあたって一つお願いがあるのですよ』

『お願い?』

『な……名前付けてくれないかな? あたしに』

『名前?』


 改めて剣さんのステータスを確認してみると、そう言えば聖剣グランカリバーってのは種族名みたいなもので、名前の欄は???になっていたな。


『剣さんって自分の名前は付けてないんですか?』

『考えた事もあったけど……名乗る相手も居なかったし、あんまし意味は無かったからね。だったら、あたしを抜いてくれた人に名前を付けてもらおうと思っていたんだ』


 まぁ俺も便宜上レイと名乗っているだけで本当の名前って訳でも無いからな。でも、剣さんにレイ君と呼んでもらえて心がゾクッと震えた事は事実だ。

 名前を誰かに呼んでもらえる。

 それは人の身体を失った俺達であっても、嬉しい事には変わりない。

 それに、ドラ子達の名前だって俺が考えたんだ。剣さんにも相応しい名前を付けてる事に問題は無い。


 ……ケヴィ達の名前は天使の名前から取ってつけた訳だけど、剣さんの場合はどうするか……。さしあたって剣の名前であるグランカリバーをもじるか。

 グラン……グラさん……これは無いな。だったら下のカリバー……それに女の子の名前という事だから……


『カリン』


『おっ!?』


『カリンさんってのはどうですか?』

『そ、それで!! なんかビビッときたぜ!!』

『じゃあカリンさん……行きますよ!!』

『おうレイ君!! 来い!!』


 剣さんのその言葉と共に、俺は剣の柄を握る両の腕に力を込めた。


『おおおお!!』


 最初は抵抗が掛かったが、次第にズズズ……と台座より剣が抜けていく。見れば、刀身が少しずつ光っていくのが確認出来る。

 行ける!


『だあっ!!』


 掛け声と共に俺はカリンさんを抜き放った。


 ―――抜けた!!


 俺はそのまま剣を高らかに掲げる。

 刀身からは眩い光が放射され、天に向かって一筋の光が昇って行く。


 さながら、伝説の勇者だな。

 ……今の俺は、文字通り伝説の勇者なのだ。


『うおおっ! 凄い、なんか力みたいなもんが湧いてくるよ!!』

『俺もです。カリンさんから、なんか力見たいものが流れてくる!!』


 行ける!

 肉体や魔力の使用に制限のかかる今でも、剣さん……いやカリンさんの力を借りれば勝てる!


 俺は、今まさにこちらに背を向けて逃げ出そうとしている吸血鬼少女を睨み付け、そのまま飛びあがった。




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