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12話 聖剣グランカリバーさん




 その剣は、まるで10代の女性のような声で、朗らかにこちらに話しかけてくるのだった。


『あ、やっと気づいた! やっほー! あたしの声聞こえているよねー! あ、言葉とかってこれで通じているかな?』

『は……はい……』

『うおお! やったぜ!! 話の通じる相手ゲットだぜ!!』


 剣なのにテンションの高いお方です。

 俺としては、この世界に来て初めての会話にめっちゃドキドキしているというのに……。

 ドラ子達は言葉は理解出来るみたいだが、話せるわけでは無いからね。


『ほらほら、もっと近こうよれ。せっかくだから色々お話ししようぜ』

『は……はい。それじゃ、失礼します』


 ふわーっと近づき、剣さんの前にとりあえず正座した。

 目の前ではいかついおっさんが必死で剣さんを抜こうとしているから、実に変な構図である。

 だが、剣さんはおっさんの事は特に気にした様子もないまま、会話を続けるのだった。

 うぅ……声の感じはなんか若い女の子っていうイメージだから、なんか緊張するな。


『ううむ。その様子だと、実体の無い精神体みたいな存在なのかな? どっかに身体があったりするの?』

『い、いいえ。気が付いたら、こんな身体でした』

『そーなのかー。あたしも気がついたら、こんな剣の身体でさー。自分では動けないし、最悪なんだよねー』

『え? 気が付いたらって……元々剣じゃないんですか?』

『そうなんだよー! ……って言い切りたいんだけど、あたしもその辺は自信なくてさー。いわゆる記憶喪失ってやつで、この身体になる前がどうだったのかは分からないのよね』

『あ、俺もです。気が付いたらこの身体で……』

『おお、そうなんだー!! この身体になって結構長いけど、同じ境遇の人には初めて会ったなー。ひょっとしたら、探せば居るのかもね』

『そうかもしれませんね』


 なるほど。浮島には俺と同様の存在が居なかったから思いもしなかったが、俺達のような存在が世界中に居ると言う可能性はある訳か。これは、旅の目的に追加してもいいかも。


『ところで、俺の事を就活中の学生って呼んでましたけど……』

『あ、気に障った? ごめんね、何となく見た目のイメージで呼んだだけだから、気を悪くしたなら謝るよ』

『いや、そうじゃなくて、就活中の学生って言葉を知っているって事は、ひょっとして……この世界じゃない世界の知識があったりとか、そういう事だったりするんですかね?』

『うん。そだよー』


 えらく軽い感じで答えてくれた。

 そうなのかー。そんな所まで俺と一緒なのか。なーんか、すげぇ親近感湧いた。


 片や幽霊……片や剣……とんでもない異世界転移があったもんだ。いや、これって転生か?


『なんか、色々と聞きたいことあるんですけど……あり過ぎて何を聞けばいいのか困りますね』

『えへへ。あたしもー』


 とりあえず軽く笑いあう。

 目の前では色んな男がとっかえひっかえ剣を引き抜こうと頑張っているのに、実に変な光景だ。


『ところで……ええと聖剣グランカリバーさん……でしたっけ』

『あれれー。なんであたしの名前知っているの?』

『いえ、ステータスにそう表示されて……』

『んん? ステータス?』


 首かあったらそのままぐにゃりと傾げていそうな感じである。

 ひょっとして、剣さんはステータスをご存じない?


『何か、ゲームとかで主人公や敵の強さの数値を確認出来たりするじゃないですか。そういうのって、剣さんには見えたりしません?』

『おおう。そう言えば、そういうのってあるよね。そっかー、ステータスか……。えい、見えろっ!!』


 なんとも適当な感じで確認しているが、今まで見えなかったものがそんな簡単に見えるものだろうか―――


『……って、わわわわっ!!? 本当になんか見えたっ!!?』


 ―――見えたらしい。

 そんな簡単なもんなのか。それでも、そんな事に今まで気づかなかった剣さんも大概というか、俺なんかは転移二日目で発見できたと言うのに……。

 それにしても、剣さんにも見えたって事は、転移者には標準機能だったりするのかね?


『うわーっ! なんか君って凄い数値じゃん!? これって何かバグってたりしない?』


 あぁ、俺の魔力の数値見たのか。確かに、他の人の数値見た後だと、そう思うよね。俺だってそう思うんだから仕方ない。


『でも、剣さんも凄いじゃないですか。俺の見てきた中では、一番の数値ですよ』

『ううん。君の数値見た後だと、自信は無くなるけどね……』


 まぁ、魔力がEXでMPが約9億だかんね。

 それでも、剣さんの筋力EXというのは凄いだろう。逆に俺は魔力は凄いが、筋力の数値は無いからな。

 ちなみに、今まさに剣さんを引き抜こうとしているおっさんの数値は、筋力Nの魔力Oです。比較にならねェ。


『あ、でもそうだとしたら……。ねぇねぇ、君ならあたしの事抜けるんじゃないかな?』

『ん……抜く? それって剣を抜くって事ですか?』

『そうそう。どうも、あたしの剣の特性として、魔力の数値がB以上じゃないと持てないらしいんだよね』


 なるほど、それでこんな厳つい奴等が必死にやっても抜けないのですね。必要なのは筋力じゃなくて、魔力か。

 と言っても、これだけの人数が引き抜こうとしているんだから、ここで俺が抜いてしまえば今抜こうとしている奴が抜いたと勘違いされてしまうのでは? それはそれで問題あるような気もする。


 そう言うと、確かに剣さんも難色を示した。


『そっかー。下手したらあたしがそいつの持ち物になっちゃうかもしんないのか。それは嫌だなー』


 チラリと横を見ると、剣を引き抜こうとする者の行列が出来ていた。

 なんでまたこんなにも人が集まっているのだろうか?


『ああ、それはねー。何か、魔王ってのが最近現れたんだってさ』

『え? 魔王って、ゲームとかでよく出るあの魔王?』

『どの魔王かしんないけど、その魔王じゃないかな? 魔族とか魔獣を率いて、いろんな町とか村とか襲っているんだってさ』


 はえー。

 実にファンタジーゲームらしい世界観だと思っていたら、聖剣もあれば魔王も存在する世界だったみたい。


『だから、魔王に対抗する為に伝説の聖剣であるあたしを抜ける勇者を探そうとしているんだって。伝説が確かなら、以前あたしを使っていた人は勇者になって魔王を倒したんだとか』

『とかって、他人事みたいですね』

『だって、その時の記憶無いからねー。気が付いたら、この場所でこの台座にスッポリ収まっていたって言うか……』

『そ、そうなんですか』


 俺もそうだが、剣さんにも謎が多いんだな。

 さて、この人数が終わるまで待ってもいいんだが、果たしていつになるのか……。多分、夜になると思うな。


「がう」「きゅう」「ぐう」


 すると、今まで黙っていたドラ子達がぐずりだした。

 どうも、俺が剣さんとの話に集中していたせいか、自分達を構えとせっついているらしい。


『ん? 見えないけど、他にも誰かいるの?』

『まぁ、ちょっとうちの子達が……』

『なぬ!? 幽霊君子供とか居る訳!!? ……バツイチ?』

『いやまあ、正確には俺の子じゃないんだけど……って、今姿見せる訳にはいかないよな』


 ここで透明化を解除すると、この場に集まっている者達にも見られてしまう。それはさすがに止めておこう。


『少し時間を置いてから、また来ます。その時に紹介しますよ』

『うああ、行っちゃうの? マジで? ねぇマジで?』


 むちゃくちゃ切ない声で引き留められた。

 心がすげぇ痛むんだけど、ドラ子達のご飯とかも探さないといけないからな。俺は食べなくても生きていけるから問題ないけど、ドラ子達は食べないと死んじゃうし。


『また来ます! すぐに来ますから!!』

『絶対よ! 絶対に来てよ! じゃないと呪うからね!!』


 聖剣なのに呪うのか。でもまぁ、剣さんが言うと変な説得力があるな。


『ちゃんと夜になったら会いに来ますから安心してください』

『う…うん。待ってるからね』


 俺は見えないままのドラ子達を抱えてふわーっと浮き上がると、王都の外目がけて飛んで行った。

 とりあえず、魔獣でも狩ってドラ子達のストレス発散と食事をしないとな。そうしてら、また剣さんに会いに行こう。


 ……なんか、非常にワクワクしているのが実感できた。




 悲しいお知らせですが、ストックが無くなりました。

 しばらくは2~3日の投稿になるかと思われます。キリの良い所までは止まらないようにしたいと思います。

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