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11話 剣に話しかけられた日




 ぼんやりと飛んでいると、いよいよその王都とやらが見えて来た。


『おおう』


 高い城壁に囲まれたいかにも中世というイメージの街である。

 城壁があるのは、魔獣対策とかだったりするんだろうな。後は考えたくはないが、戦争対策とか。


 視力を強化して街の中を覗いてみれば、さっき会ったへっぽこチームみたいな服装をした者達が道を歩いて居たり、商人とか普通の恰好をした者達も居るな。


 降りてみたい。ファンタジー世界の人間社会というものがどんなものか、実際にこの目で見てみたい!

 だって人間だもの。……元々はだけど。


 でも、それには……


「がう」

「きゅう」

「ぐう」


 このドラ子達の問題が出てくる。

 この世界でドラゴンがどういった存在なのかはまだ分からないが、危険なモンスターとしていきなり攻撃を仕掛けられる可能性だってある。もしそうなれば、俺は問答無用で敵対するぞ。ドラ子達が洒落にならないレベルの怪我を負ったら、この街滅ぼしちまうかもしれない。

 ……それが出来るだけの力はある筈だからな。


 となると、ここはまた別行動……というか街の外に置いていくべきなんだが……。


『う!』


 チラリとドラ子達を見ると、俺はギョッとして思わず仰け反った。

 三竜とも、やたらとキラキラウルウルした瞳でこちらを見つめているではないか。犬とかがよくやる、つぶらな瞳光線である。

 無言で、置いていかないで!と訴えている訳だ。


 さっきはちょっとの間だけど寂しい思いさせたもんな。今度は数分で戻ってくるなんて無理だし、身体はまだしも心はまだ赤ん坊のこいつ等には「待て」は無理だよな。

 ……仕方ない。


 さて、ここで公開!

 この二ヶ月の間、膨大な魔力を持つ俺は、魔法が使えないかとか色々試してみた。

 ゴブリンを倒した攻撃系魔法から、ドラ子達を癒すのに使用した回復系魔法、その他色々役に立つ補助系魔法まで。


 結果として、イメージがしっかりしていれば、一部を除いてなんでも出来たのである。


 もう一度言おう。

 なんでも出来たのである。


 唯一出来なかったのが、実体を得る事である。これだけはまるでロックでも掛かっているかのように出来なかった。

 つまり、それ以外ならばなんでも出来る。


 ゲームとかで見た、あんな魔法やこんな魔法。頭の中でイメージさえ出来れば、ちゃんと出来たのだから恐ろしい話です。どんなチート存在だと、我が事ながら呆れてしまった。


 なので、こういった事だって可能です。


 俺は、魔力で四角い箱を作り上げ、その中にドラ子達を収納するように囲う。

 そして、その箱をギューッと小さくする。すると、中に収められていたドラ子達のサイズも箱に合わせて小さくなるではないか!

 ドラ子達がぬいぐるみ程のサイズになったところで、俺は箱を消し去る。すると、そこにはベビードラゴンの頃のように愛らしい姿となったドラ子達がキャッキャッと嬉しそうにはしゃいでいた。


 これぞ、いわゆる縮小化の魔法である。


 どういった原理でこうなるのかは深く考えないようにしているが、イメージ的にはペイントツールで画像やなんかを小さくしたり、大きくしたりする機能である。

 ただ、絶えず魔力を送り続けないと、3分くらいで魔法は解除されてしまう。

 今回は俺と一緒に行動するのだから、問題は無いだろう。


 続いて、バサッと布みたいなものを被せるイメージで、ドラ子達に透明化の魔法を付与する。

 よし! これで誰もドラ子達を視認する事は出来ないだろう。


『いいか。これで一応見えなくなったけど、大声で騒いだり、はしゃいで暴れたりするなよ! もし約束を守れなかったら……“アレ”をやるからな』


「「「!!!」」」


 俺の言葉に、ドラ子達はピンッと背筋を伸ばして黙礼する。

 かつて、リトルドラゴンに成長したばかりの頃……ささいな兄弟喧嘩から地形が変わるほどの大騒ぎになるレベルの事件があった。

 その時は、仏の如き慈愛でドラ子達を見守る俺であるが、きっちり制裁を加えてやりましたとも。親として、怒る時は怒らないと駄目だよね。……基本、この子達は聞き分けが良いから、そんなには困らないけど。


 まぁ、忠告もしたから好き勝手に動く事は無いだろう。


 さぁて、いよいよこの世界で初めての都市観光である。

 ワクワクするなぁ。


 ふわーっと空から侵入する事も出来るが、ここは門から堂々と入る事にしよう。堂々と言っても、見えないからどっちにしろ意味は無いけども。

 それでも、門を護衛している警備員……この世界では警備兵さん達の傍を通る時はちょっとドキドキしたぞ。結果は、やはり俺にもドラ子達も気づかなかったけど。


『おおう』

「がう」

「きゅん」

「ぐう」


 俺達はもう一度感嘆の息を漏らす。

 人、人、人……ここまで人間を見たのは初めてであるから、思わず圧倒されてしまった。


 街並みも俺の知識にある高層ビルが立ち並ぶ近代都市とは全く違うが、それでもいかにも中世ヨーロッパという感じの街並みが実在しているというのは感動すら感じる。


 それよりも気になったのは、往来を歩く人間達……そのステータスである。


 まず、てんでバラバラに数人のステータスを確認したところ、いわゆる平均的な一般の成人男性とやらのステータスがこんな感じになるらしい。


名称:???

性別:♂

種族:人間族

HP:5/5

MP:1/1

筋力:O

魔力:O

耐久:O

敏捷:O


 この数値は、ゼロじゃなくてオーです。

 ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZの、大体真ん中あたり。どうも、これがこの世界における大体の基準になるらしい。


 続いて、俺達がついさっきまで暮らしていた浮島の、最弱生物のステータスをもう一度掲載。


名称:???

性別:♂

種族:キラーバグ

HP:100/100

MP:5/5

筋力:F-

魔力:G

耐久:G

敏捷:E-


 ……一体どれだけの開きがあるのか……。ゲームで言う所の一撃二撃で倒せるレベルと思っていたが、その一撃の攻撃力が随分と上だったみたい。

 よもや、俺達の住んでいた場所って、とんでもなくレベルの高い場所……ゲームで言う所の、ラスダンよりも難易度の高い場所だったりするんじゃなかろうか。

 下界で出会った生物達のステータスを見るに、その可能性が高くなってくる。


 となると、下界に来て初めて遭遇したケツァルコアトルってなんなんだという話になるが、あれは例外だったりするんだろうか。


 そして、赤ん坊の時代から人間を遥かに凌駕するドラゴンってやっぱり凄いんだなぁ。


「がう」「きゅう」「ぐう」


 そんな事を思ったら、ドラ子達がえっへんとばかりに胸を張った。可愛いが腹立つな。


 まぁ、その辺の事情はもういいや。

 今は観光を満喫するとしよう。


 俺達はそのままぶらぶらと散策を続ける。途中、露店で串焼きやケバブみたいなもんが売られていたりした。その匂いに誘われてか、ドラ子達がふらふらと近寄り、そのままガブリと行こうとした所を見つけてひっぱたいた。

 なんで叩くんだよう! と憤慨した様子のドラ子達だったが、売り物を勝手に食べたり盗んだりするのはいけない事なんだと、とくとくと説明。ドラ子達は分かったような分かんないような顔をしていたが、これは人間社会においての一般常識も教え込まないといけないな……と実感。

 今後人間社会に溶け込むかは別として、ある程度は教えないといけないだろう。


 まぁ、それには俺自身もこの世界の一般常識を学ばないといけないけどな。

 見ていたら、この世界は主に硬貨が主流のようだ。となると、こちらもきちんと稼いだりしないと人間社会の買い物は無理そうだな。……幽霊とドラゴンがどうやって稼ぐのだとという話なので、買い物は諦めた方が良いだろう。

 宝石や魔獣の素材やなんかも、どうやって換金するんだと言う話だし。

 ちょっと残念ではあるな。


 そう言えば、あのへっぽこチームはこの街には聖剣があるとかって話だったか。

 その聖剣とやらは何処かな……? と探し回っていると、噴水のある広場に出た。ここは最も往来の多い場所なのか、露店や大道芸をする者達がかなり多くみられる。


『あれが聖剣か……』


 そこにそれはあった。

 台座に突き刺さった一振りの剣……。その剣の周りには屈強な男達が立ち並び、順番に台座に突き刺さった剣を抜こうと試みている。

 が、力自慢……と言ってもステータスはせいぜい“N~M”と言った所……の男達が顔を真っ赤にして抜こうと試みているが、剣は一向に抜ける様子は無かった。


 それにしても、あれって本当に剣なのかな?

 実は台座と一体化しているただのオブジェだったり―――ん? よく見ると、その剣のステータスみたいなもんが見えて来た。

 無機物にステータスってあんのかい? と突っ込みつつも確認してみるのだが……


名称:???

性別:♀

種族:聖剣グランカリバー

HP:9999

MP:999

筋力:EX

魔力:A

耐久:A

敏捷:-


 色々と突っ込みたい所があるのだけど……まず、一番気になるのは性別の欄だ。

 “♀”ってどういう事やねん。

 剣に男や女とかあるって聞いた事が―――


『もしもーし』


 あん? なんか声が聞こえたような……。周囲の人間じゃない。声というよりも、頭に直接響く、念話とかそういうものっぽい感じが……。


『もしもーし。聞こえてますかー? そこの就活中の学生みたいな恰好した君だよー。もしもーし』


 就活中の学生……よもや、俺の事なんだろうか?

 だ、誰だ……。この世界に来て、話しかけられた事なんて初めてだぞ! 俺はキョロキョロと辺りを見回すが、誰の視線も感じない。一体、何者!!?


『キョロキョロしなくても、目の前に居るってばー! ほら、正面向く!!』


 言われるがままに首を正面に戻す。

 目の前には、ゴツイおっさんが剣を抜こうと頑張っていた。が、当然声の主はこのおっさんではあるまい。

 という事は―――


『うん。あたしあたしー!! やっほー!!』


 声を掛けて来たのは、目の前にある剣だった。




ヒロイン(剣)登場です。

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