ニ 求婚
ミコトは、神社に初詣に来ていた。それを見つけたタクミは彼女に声を掛けた。
「あ、あのミコトさん…ちょっと時間いいですか?」
ミコトはいきなり知らない人に名前を呼ばれて、とても驚いた。
「だ、誰ですか?」
ミコトは、震える声で言った。
「あっ失礼しました。タクミといいます。あなたに番になって欲しいんです」
ミコトは急に現れた男に求婚(?)をされて一瞬思考が停止した。
(…………?つがい?番って、妻ってこと?なんで知らない人に急に告白(?)されるの?そういえば、なんで私の名前を知ってるの?)
「あの、急に何を言って…?」
ミコトは戸惑いを隠せなかった。
周りからは「なんだ?」「不審者?」「いちゃつくなら他のところでやれよ」などという声が聞こえてきた。ミコトはここが神社ということを忘れていた。それに、今日は元旦だから、初詣で人がたくさんいた。
「あの、少しついてきてください」
ミコトは、タクミを連れて、人気のないところまで移動した。
「で、あなた一体何なんですか?急に現れて番になって欲しいなんて……それに、なんで私の名前をしっているんですか?」
ミコトは聞きたいことがたくさんあった。
「僕はタクミっていいます。去年、ここであなたを見たときに一目惚れしたんです。だから、番になって欲しくて……人間の言葉で言うとプロポーズ(?)みたいなものです。あとあなたのことは、1年間でいろいろと調べました」
ミコトは、タクミが何を言っているのかを理解できなかった。
「そういうことを聞きたいんじゃないんです。プロポーズ?私はあなたのことを何も知りません」
「これから一緒に暮らしていく中で知っていけばいいじゃないですか?」
タクミが何を当たり前のことをという感じで言ってきた。
「それに、人間の言葉で言うとって…まるであなた人間じゃないみたいな言い方して……」
タクミが変な言い方をしたことにミコトは引っ掛かりを覚えた。
「あぁ、そうですよ。僕は人間ではありません。蛇の獣人です。だから、巳年が終わった今、早く神界に帰らないといけないんです。」
(蛇?獣人?神界?この人、何を言ってるの?頭どっかやっちゃたの?)
「あの、言っている意味がよく分からなくて……」
「見せたほうが早いですかね。」
タクミがそう言うと、彼の下半身が蛇のように変わり、瞳孔は縦長になった。そして、彼の足元には小さな蛇が数匹出てきた。
「これが僕の獣人としての姿です。あと、これが僕の分身の小蛇です。この子たちを使って、あなたについて調べました。」
ミコトは、目の前のことが信じられなかった。急に膨大な情報が入ってきて頭がパンクしそうになった。
「これで信じていただけましたか?」
タクミが小首を傾げて、ミコトに聞いた。
「とりあえずは……」
ミコトが返事をすると、タクミが嬉しそうに微笑んだ。
「よかった……じゃあ、これで一緒に神界に行ってくれますか?番になってくれますか?」
ミコトがタクミの言うことを信じたと言ったら、なぜか番になるというところまで話が飛躍していた。
「いやいや、信じるのと受け入れるのは違います。少し考える時間をください」
急に獣人に番になって欲しいと言われて、二つ返事でOKする人間がいるだろうか?否、いない。
「時間ですか?でも僕は明日か明後日には帰らないといけなくて……帰ったら、次に来れるのは次の巳年、つまり11年後なんです……」
こんな急に言われたことをたった2日で決めろと?
「分かりました、では明後日の午前8時に再びここで会いましょう。それまでに答えを持ってきます。」
「分かりました、では明後日また会いましょう!待ってますね!早く明後日になってほしいな」
タクミはそう言って嬉しそうに手を振りながら去っていった。




