一 執着の始まり
2025年 巳(蛇)年 1月1日──────────
蛇獣人のタクミは、人間界に来ていた。彼にとっては、初めての人間界だった。
神社を歩いていると、ある1人の女性に、彼は目を奪われた。そのとき、昔父親が言っていた言葉を思い出した。
「父さんが母さんに会った時な、俺感じたんだよ。この人が俺の運命の人だって……あの人を俺の番にしたい…ってな。……って、お前にはまだ早かったか……でも、お前もいつかそんな人に会ったら、分かるはずだ」
あの時は父の言うことがよく分からなかった。でも、父が母のことを心から愛していることは分かった。
彼は、自分がそれを理解できるのはまだ先だろうと思っていた。しかし、それは思ったよりもすぐにやってきた。
(あの子、可愛い……弱そうだから、守ってあげたくなる……父さんの言っていたことが分かった。あの子を僕の番にしたい。でも、急に声を掛けたら、怖がっちゃうかもしれない……僕が人間界に居られるのは1年もあるんだから、それまでにあの子のことを知ってから告白しよう!)
タクミは、一応急に声を掛けて怖がらせるということをすると、番にできなくなるかもしれないとういことは予想できた。しかし、勝手に人を調べるということはダメだとは思わなかった。好きな人を調べることは、当たり前のことだと……
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蛇獣人は、一般的に執着が強い。その中でもタクミは執着心が特に強かった。
彼は、1年間、自分の分身の小蛇も使って、その女性──ミコトについて調べた。身長に体重、誕生日や食の好みなど、様々なことを……
調べていくうちに、彼は、どんどん彼女を手に入れたくなっていった。
こうして、巳年が終わろうとしていた。彼は、神界に帰るときに彼女を連れて帰ろうと思った。自分がこんなにも彼女を好いているのだから、彼女もきっとそうなると思って……
そして、明日、声を掛けると決めた……
「ようやく彼女、ミコトを手に入れるときが来たんだ」




