371: 踏み込む理由
【365号室】
信者たちが調査した内容をセオリーがまとめて、シクレへ報告する。
「なるほどね……。学園長代理の机の上に弟の資料がね……」
セオリーの報告に、 シクレが静かに思案する中、磨き隊たちがざわめく。
「……ああ、見える……抑えきれぬ輝きが、今まさに溢れ出している……!」
磨き隊のリーダーらしき男が、恍惚とした声を漏らす。
「やはり原石は隠しきれぬ。俗眼の徒であろうと、惹かれてしまうか……」
磨き隊のメンバーの一人が静かに頷く。
「学園長代理とて例外ではない。むしろ――あれほどの輝き、気づかぬ方が不自然」
別の磨き隊のメンバーが、腕を組み、熱を帯びた声で言い切る。
「……弟君を嗅ぎ回っていたのは、あの者の差し金か」
空気がわずかに張り詰める。
「ふふ……ならば尚更、我らが導かねばならぬ。外敵に奪われる前に」
「寮内を嗅ぎ回る輩への警戒については引き続き、君たちにお願いするよ」
「我らにお任せ下さい」
シクレが立ち去った後も、部屋では、セオリーの指揮のもと、作戦や役割分担についての話し合いが続く。
そんな中、一人の男がシクレの背を追い、部屋を出ていく。
「リンセ様」
「ギラ……? 話し合いはもういいの?」
「俺は……あいつらの指示に従う気はありません」
「ははっ……。正直だね。で、俺に何か用?」
「今日、倉庫を見てきた。警備員は、一人だけ、リンセ様が言うように厳重な警備には見えなかった」
「……ああ。そうだね。外側はね」
「……外側は……?」
「例えばさ、ギラ。守る必要のなさそうな場所を、外からガチガチに固めてたらどう思う?」
「……何か隠してるな……と思います」
「そう。怪しいって思うよね。だから外側は“普通”に見せるんだよ」
ギラが小さく息を呑む。
「厳重なのは……内側か……」
「そういうこと」
「……俺が内側に侵入して――」
「侵入はおすすめしないよ」
シクレは軽く笑いながら首を振る。
「中は警備システムが厳重に敷かれてる。探るなら正面から……そうだね、植物の搬出し忘れがないか確認したい、とか言って迷ったふりで覗くくらいかな。ただ……まあ、かなり危険だけどね」
「……俺がやります」
「ねぇ、ギラ。君は最初、俺のことよく思ってなかったよね……? なんで、急に俺の指示に従う気になったの?」
「なぜ、今更そんなことを……?」
「ただの雑談だよ。ギラは、凛を救い出す為だとしても、誰かの指示に従うようなタイプにはみえないからね」
「……力、隠してますよね?」
わずかな沈黙。
「……なんのことかな?」
(へぇ……ただの脳筋ではないってことか……)
「……言いたくないなら、いいです」
「無理に丁寧にしなくていいよ」
「……いえ。あんたには、ちゃんと話したい」




