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リベドゥーディネ

「あれが、クリフが連れていきたいって言ってた場所…」

「リベドゥーディネって言うんだ」

大きな都、いや国と言っていいだろう。


「国?」


「国だね」


青き鳥に乗り大空から見下ろしたその姿は、色とりどりで煌びやかだが落ち着いた、相対する美を思わせる街並みが見えた。

集落から離れれば危険が多いのは、この一帯も同じなのだろう。巨大な壁が集落を覆っていることは変わらないが、こちらのほうがより近代的な雰囲気が見られた。さらにそこも相対するように、内部の建物は瓦や木材を使用しているように見え、どこか日本らしさも垣間見えた。


「なんか、日本っぽい」

無意識に顔がほころぶ。

「日本って、夢芽がいた所だったね。似てるの?」

「うん、なんとなくだけど……。

クリフは、ここ出身だったりするの?」

「いや、住んでいたことはあるけど、出身じゃない」

どことなく突き放したようにも聞こえる言葉。

「ちぇー」夢芽の口がとがる。

少し拗ねるような感情が夢芽の中に芽生えたのは、自分の読みが外れたからか、自分と似た故郷を持つという類似性が外れたからなのか、本人にもわからない。


「飛んでると空撃されるから降りよう」

「お、おう!」

さらっと物騒なことを言った。

どうやら軍事的文明はファーレガビャよりこちらの方が上なようだ。



少し離れた所に着陸し、しばし歩く。

風が暖かい。

もう春だ。

「リマの木、もう咲いてるかな〜。見頃とやらを見たかったんだけど、あの国にもあるかな」

見頃でなくともとても綺麗だったのだ。

だとすれば、想像以上に美しいものを見逃したと思うと、少々、いやかなり残念だと感じた。

しかし夢芽の願いは、クリフの言葉によって叶わないと知らされる。

「いや、あの木は特殊なんだ。はるか昔に絶滅した木に似せて作られた。たぶん……、あそこにしかない唯一の木」

苦笑いするクリフに、夢芽は食い気味に反応する。

「え?そんなすごい木なの?」


「うん。でもまぁ、ファーレガビャに住んでいるほとんどの人はそのことを知らないよ。

国からほとんどでないからね。

珍しい木というくらいかな。たまたま自分の国にその1本しかないと無意識に思ってる人も多いと思う。

あと、あくまで似てるにすぎなくて、見頃と言われている時期にあるリマの木の特徴はあの木にしかない。まさに特別な木なんだ」


絶滅した植物をグレードアップして復活させたということだろうか。

軍事的文明はリベドゥーディネのが上だったとしても、それ以外の文明ではファーレガビャもかなりのものなのだと、夢芽は考えを改め、心の中で反省した。


目の前には、不審者を圧倒し排除するような存在感を突きつけてくる両開きの扉がそびえ立ち、それを守護するように立つ門番はジロリとこちらを睨めつけた。


ふと、気になって夢芽はポーチに手を添える。

少し前まではベラベラと楽しそうに悪態をついていた玉っころは、息をひそめている。それでも生き物独特の温かさが、生きている、そして少しおびえていることを夢芽に知らせ、心を穏やかにした。


おびえていることをカワイイなどと思ったと知れたら、間違いなく不機嫌になるので口にはしない。

なぜなら自分なら怒るからだ。

それでもポーチごしに触れる手に『大丈夫大丈夫』と気持ちを詰め込んでみた。


「クリフが帰還した。それだけ伝えてくれれば結構です」


門番は目を見開き、慌てた様子で1人が中へと入っていった。

すぐさま別室へと待機を促され、それほど待つことなく別の部屋へと通される。

その部屋は、この国の歴史や文化に詳しいわけではない夢芽にも分かる上等なものだった。

日本に似ていると言っても、やはり似ているだけで、室内は靴を履いて椅子とテーブル、テーブルの上には沢山の果物や菓子が並んでいた。


夢芽はクリフに断わってから、ひとつ菓子を口には入れる。

白くふんわり優しい求肥のような皮、中にはなめらかなあんこ。

「うま…」

おもわず漏れた言葉に、ポーチの中から「俺も俺も」と声がする。

夢芽は菓子をひとつ取ると、ポーチに放り込んだ。

「おぉ〜〜〜」と感嘆の声がする。どうやらお気に召したらしい。




ガチャリと重い扉が開く音が、和んでいた部屋の空気を止めた。


視線をそちらに向けると、服装や態度から察するに、おそらく地位の高い者たちが数名、部屋の中に入ってきた。

中心先頭に立つ男は、長い髪と切れ長の美しい瞳をもつ美男子だ。

クリフに一礼し、落ち着いた口調で「おかえりなさいませ、クリフ様」と言った。


「ただいま帰りました。カーム様」

クリフもまた一礼した。



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