僕たちだからできること
「これは……」
真穂と幸太は愕然としていた。
王宮の内部はガランとしていた。
もちろんまったく人がいないというわけではない。ポツリポツリ……と言ったほうが分かりやすいだろう。
王宮の使用人用に作られた小さな出入り口、そこにはゴートンの部下が待機しており、彼の案内で中央エリアまで進むことが出来た。
「私が案内できるのはここまでです。ここから先は聖軍士の管轄になります。ですが、まぁ、ご覧になっていただければ分かると思いますが、この通りです。
それから、騎士団長からの伝言です。
君たちが今見て、感じたこと。この国の人間がもつ先入観にとらわれず答えをだしてみてほしいと……」
「…………」
考えこむ真穂を覗き込むようにして幸太が問う。
「先入観って……、どう思う?真穂」
「こんな事言うのは今更だけど、よくよく考えてみれば、名目上保護されてる僕がこの作戦に駆り出されるっておかしいよね。
捕まれば保護していた騎士団や議会に、矛先がいかないわけがない。
議会側が僕を切り捨てたとしても、それを前提として無理やりにでも詰め寄ってくるはずだ。立場を悪くする絶好の機会なんだからね」
「つまり?」
「ゴートンさんは、少なくともよほどのポカをしない限り捕まらないと踏んでいた」
「なんで?」
「警備がここまでスカスカなのが分かっていたから」
「なんで?」
「そこまでは分からないけど……、とりあえず、進もう」
警備が手薄とはいえ、さすがに堂々と歩くことはできない。ここまで案内してくれた騎士に礼を言うと、2人は身をかがめ、壁に沿うようにゆっくりと歩き始めた。
見えてくる景色は不思議なほど騎士団の施設と変わらない。いや、今まで見てきた建屋、街並み、どれも大きく変わらない。サイズが違う、調度品の質が違う、装飾の質が違うだけで、いわゆる個性をあまり感じさせないものだった。
さすがに個人の部屋にはその人独特の感性が多少反映されるが、少し一歩ひいて見てみると、あまりにも統一感がありすぎた。
『でも、日本がゴチャゴチャしてるだけなのかも……』
テレビで海外から日本にやってくる観光客にインタビューする番組は多くある。
マイクをむけられた旅行客は、「いろんなものが詰まっていてカオス」「ゴチャゴチャしてて面白い」と目を輝かせながら答えていた。
あらゆる文化に好意的で好奇心が強く、自分たちの文化に取り込んでアレンジしまくる。
そんな所で生まれついた真穂たちの方が、もしかしたら異質なのかもしれない。
そう思い至った時、真穂はゴートンの言葉を思い出した。
この国の人間がもつ先入観にとらわれず答えをだしてみてほしいと……
『そうか…。これでいいんだ。ゴートンさんは、僕たちにこの現状を見て、日本人的にどう思うかを知りたかったんだ』
真穂の足取りははやくなる。
「お、おい」
「大丈夫!行こう」
自分たちは信頼されている。
自分たちにしか出来ないことがある。
その言葉が背中を押す。
幸いと言うべきが、仕組まれていたと考えるべきかはともかく、想像以上に王宮の奥へ奥へと進んでいく。
真穂はできるだけ多くのものを視界に入れて考える。
そしてひとつの結論に至った。
「興味がないんだ」
「え?」
「この建物を作った人は、統一感とか、落ち着いた景観とか、そんなこと考えていないような気がする。
それに、いくら他にやるべきことがあるからって、ここまで人がいないのはおかしいよ。
最低限とかそんなレベルじゃない」
「ここには大した情報はないってことか?下手すりゃ王様がいないとか」
「それは、進んでみなければ分からないけど、なんとなく、なんとなくだけど、いるんじゃないかと思う」
「そ、それっておかしくないか?王様に興味がないってことになるぞ」
「だから、まだ分からないって」
そう言いながらも、ついに王室であろう巨大な扉の前にたどり着いた。
さすがにそこには複数の聖軍士が配置されている。
おそらく、ゴートンはここで引き返せということなんだろう。
真穂が至った結論を伝えればいい。
だが、
「ごめん、幸太」
「何謝ってんだ?そもそもそういう任務だろう?」
この扉の先に何があるのか。
その思いを胸に秘め、2人は行動を起こした。




