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類似した欲

「ま、待ってください!僕は反対です」


「あら?やっぱりあなたがワタシとやっちゃう?」


「しません」

茶化すように話す龍神に、反射的にバーサルは答える。

バーサルの龍神への拒絶は強い。

それは誰の目にも一目瞭然だった。

チアから見ても


「この子は、愚かにも龍神さまのお力を信じてはいないのです。

私が!恐れながら私が志願いたします」


「………………………ッ」


チアの言葉にバーサルは息がつまる。

チアの本心は分からない。

それでも、彼女の中には龍神への信仰心と、少なからず嫌がる娘に重い契約を背負わせたくないという親心がチラついた。

バーサルの心は激しく揺さぶられた。

チアが嫌だと言えば、やっぱりバーサルにとなるかもしれないし、この龍神の機嫌を損ねた先に何が怒るのか、皆目見当もつかない。

打開策は思いつかず、だからと言って身を捧げるのは嫌だった。

そして、それを見透かすかのようにとびきり明るい声色でプリムラは言った。

「はーーーーーい、決定ね。

さぁ、あなたの命をかけるべき欲はなぁに?」


「私にとって大切なのは家族です。家族を守るための力が欲しい。

もう二度と、家族を失いたくないのです」


「……………………。

やめてください。そんなこと、誰も望んでいません」

バーサルの声は小さい。

下を向き、表情は誰からも見えなかった。


「誰が他人の意見なんか聞いてるんだい?

これは他ならぬ私の欲望。何があろうと、家族を守るっていう、私の大願」


「その守ろうとした相手が、あなたのことなんて微塵考えていなくてもですか?」


バーサルは顔をあげ、今まで黙っていたことを吐露した。


「ミスティ姉さんは………、ホスティアさんを愛してた。尊敬とか、そんな優しいものじゃない。

思いつく限りの感情全てを煮詰め固めた煮凝り。

実験体になることで、ホスティアさんの愛情を得たがってた。それで死ぬことになっても、ホスティアさんの心に残り続けるなら幸せだと、本気で思ってた。

僕たち家族のことなんて、微塵も考えてなかった。

あなたが……、お母さんが……、がむしゃらになってエイリ所長を憎むなんてお門違いも甚だしいことだった」


チアの家族愛など、ミスティにはどうでも良かった。

邪魔と思っていた方がまだマシだったかもしれない。

あっても無くてもかまわない。

そのへんに落ちていて、視界をはしを飛んでいった紙くず。その程度のものだった。

それは、チアにとって嬉しいものなはずはない。


「そうかい……。

それはまた、私と同じじゃないか」


「え…………?」

バーサルの想像していた反応ではなかった。

チアの声は沈んではいない。

むしろ、どこかホッとしているようにすら聞こえた。


「思いつく限りの感情全てを煮詰め固めた煮凝り。

私の中にもあるよ。

家族が幸せに生きていてくれるなら、どこまででも汚れてみせる。家族の意見すら聞いてやれない。私だけの感情。

あの子は、変な所が私とおんなじだったんだねぇ」


自分の中に染み込ませていくような声。

チアはプリムラをまっすぐ見つめ、声をあげた。


「さぁ、龍神様、私の心はお気に召しましたか?

どうか、私にあなたの力を貸してください。そして、その身を、教会で守らせてください」


その願いに身悶えるような声で、プリムラは答える。


「あぁあああ!!!

なんてステキなの。醜くてかわいくて愛おしいわ。たまらない!!!!!

だから人間は大好きよ」


プリムラの前に現れた球体は、チアの中に入っていった。

バーサルが叫んだが、それは誰の耳にも届かなかった。

光があふれ、大地が揺れる。

バーサルが揺れから身を守るようにかがみ込み、再び顔をあげたときには、プリムラもチアもいなかった。


「しまった……!!!」


バーサルは己の失態に気づく。

途中から、議会側の人間として押さえて置かなければいけないことが見えていなかった。

自分がここに来ることになったのは、チアの身内だからだが、それは研究者としての自分を忘れていいというわけではい。


『母は、教会の人間として力を得て、龍神は教会に行ってしまった』


辺りを見回しても、どこも破壊された形跡がない。

土を司ると言っていた。

大地を介して移動できる可能性がある。


「とにかく、ゴートン騎士団長に報告だ」

『研究者として、僕ができることをしなければ』

バーサルは決意し、歩き出した。

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