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土の試練 欲

「ワタシは人間が好きなの。

そうね、どうしたら面白いかしら。どうしたら人間のステキな所が沢山見られるかしら」


龍神の言葉は、まるで面白い映画を選ぶかのように本気のようで軽く、愛は感じるが真剣味を感じなかった。


「あ、ごめんなさい。いきなりこんな風に喋り倒されたら嫌よね。

まずは自己紹介。ふふっ。

ワタシの名前はプリムラよ。土の力をもったりゅうぞ…、龍神なの」


バーサルは口をつぐんだ。

神秘さなど微塵も感じない、そんなプリムラの態度に嫌悪する。

別に元からそんなものは期待していなかったはずだ。

だが、少なくとも母は信じていたはずだと思った。

言葉を発すれば、悪態が止まることなく流れ出し、本来話すべきことからズレていくような気がする。

ペラペラと話すプリムラを見れば、別にこちらから仕掛けなくとも自ら有益な情報をだしてくれるのではないかとも考えた。

ならば黙って様子をみよう。


チラリと視線をチアに移す。

どうやらチアは失望してはいなかったらしく、多少の動揺を見せながらもプリムラに頭を垂れた。


「龍神プリムラ様、お迎えに参りました。

ともに参りましょう。教会は、あなた様をお待ちしております」


プリムラはコロコロと鈴を鳴らすように笑う。

「あら、そう?そんなにかしこまられると、なんだかドキドキしてしまうわ。

でも、嫌じゃないものね。

そうだ。あなた!あなたにしましょう!!」


「えっと、それはどういう……」


プリムラは、チアの疑問に即座に答える。


「他の龍神たち、みんな契約してるって聞いたの。

そんな楽しそうなことをしてるのに、参加しないなんてつまらない。ワタシもやりたいわ。久しぶりだもの。

前は古代大戦の時だったかしら。

人間と深く関わるって、いろんな体験ができるものね。感情に触れるって、なんてステキなの。

それでね、どうせ契約するなら、ワタシが気に入った人としたいじゃない?

あ、気にしないでね。そっちの女の子が嫌いなわけじゃないの。

でも、二人同時は無理だし。

だから、力が貰えないからって落ち込まないでね。

あ、でもどうしても欲しいって言うなら、考えちゃうかも」


「い、いえ、別に欲しくないのでかまいません。

そもそも、母は欲しがっているんですか……?」

バーサルは言葉を選び、なんとか返事をした。

それまで唖然としていたチアも、バーサルの問いにハッと我に返る。そしてあわてて答える。


「り、龍神様に選ばれるのは、大変光栄でございます。

しかし、力とは、私は魔術も、人魔術の力も持っておりません」


「だーーーいじょーぶよぉー。

力の発露を魔術関連にしなきゃいいんだから。

まぁ、うまくやらないとだけど、なんとかなるわよ。

そうだ!契約内容を決めなくちゃね。

ワタシの力の根源は欲、大願とも言えるかしら。

あなたの生涯をかけて叶えたい願い。貫く想い。

それが叶わないなら死んでもいい。そういうものをワタシに提示してほしいの。

ワタシがそれに応じた力をいい感じに授けちゃう」


あくまで軽いノリのプリムラに、バーサルの背中にぞわりとする感覚が走り抜ける。

命をかけて叶えたい願い。

それを提示する。


「その力は大願の為に使えということですか?」


「え?別に、ワタシが何か言わなくてもそうするでしょ?だって、とってもとっても大切なものだもの。

他に使うことがないよう、力の種類は選ぶわよ?

だって、せっかく力をあげても、肝心な時に使えなかったら意味がないじゃない?」


「も、もし、他のことに使ってしまったら?」


「それは、他の大願が芽生えるってことかしら。

それまでの想いが命をかけたものじゃなかったと言うこととも言えるわね。

嫌!嫌!嫌!

そんなの興ざめじゃない。

嘘はよくないわ。

そもそも命をかけたんだから、それが嘘なら……」


プリムラは一息ついてから、続けた。


「命とお別れしなきゃ」


龍神の表情など分からない。

ただその時、チアもバーサルも、プリムラが笑ったように見えた。

仄暗い、闇を見せる微笑み。


この龍神は、人間というものを分かっていない。

そんなに単純にひとつひとつの行動を正確に決めて生きてはいない。

ノイズが存在する。不要なことが頭をよぎることもある。理屈を越えた行動をすることもある。

それが分からないのだ。

分からかいのに『心』を軸とする契約をする。


それはあまりにも恐ろしい取引だった。

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