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告白

「れん兄っ!」

 校門前でスマホをいじっていたれん兄がふいに振り返る。

 優しい、見慣れた笑顔が夕日に照らされてすごく綺麗で、頬が自然と朱に染まっていくのが自分でもよくわかる。

「じゃあ、いこうか」

「うん。あの、遅れてごめんね」

 うつむいてそういうと頭をポンポンされる。

 余計に頬が朱に染まって、私はうつむきながられん兄のあとに続いた。





「あのね、今日は伝えたいことがあって」

 ふいに切り出す。

「?なあに」

 優しくそうたずねるれん兄。

 二人とも気づけば足を止めていて。

 目の前にいるその人を想って私は大きく息を吸い込む。


♪辛いとき 悲しいとき 気づけば 隣にいてくれて あなたがいる それだけで すごく楽になれたの⋯⋯♪


 ただ、届いて欲しくて。


♪それでね 気づいたの ⋯⋯♪


 瞳をとじて君を想って精一杯歌うよ。


♪好きです♪


 歌い終えると底なしの達成感があって、私はゆっくりと瞳をあける。


「あの、もう一曲、あるんだよ?」


 思ってもないことをいう声が震える。


 それは、れん兄の「おもい。やめてくれない?」という一言がズキリと胸に刺さって、こうやってなにか言わないと立っていられそうになかったから。


 自然と溢れ出す涙。それを隠すようにうつむく。

 ああ、私、泡になってないや。いっそのこと泡になってしまいたかった。

そんな想いが広がっていく。

苦しい胸を抑えてたずねる。

「諦めなくちゃだめ⋯⋯ですか?」


 ほんのわずかな希望をもってーー。


「当たり前だよ。逆になんで諦めようとしないの?」


「へっ?⋯⋯」


 私は思わず涙でぐしゃぐしゃの顔をあげる。

 別人みたい⋯⋯。


「君のそういうとこ嫌いなんだよね。

でもまあ⋯⋯」


 そういっていつものあの優しい笑顔を浮かべる。

 でも今の、れん兄の裏の顔を知ってしまった私からすると、それはとても恐ろしいものに感じられた。


「これからも幼なじみとしてよろしくね」


 そういって最後にどこか苦しげな表情をみせるとスタスタと去っていく。


 引き止める余力なんてなくて、その場にへたりこむ。

 なんで⋯⋯。



 キィーッ

 ふいになったのは車のブレーキ音。

 ああ、知ってる人にこんなとこ見られたら大変だしはやくしないと⋯⋯。

 そう思うも足に力がはいらない。


 私、思ってた以上にれん兄のこと想ってたんだなあ⋯⋯。


「お手をどうぞ。プリンセス」


 その声のする方を見れば、王子様がいた。

 不覚だなあ。

 前もこいつにこういう弱ってる時助けられて⋯⋯。


「王子様みたいだね」


 そういって笑うと瞳に溜まっていた涙がまたツーっと頬を伝っていく。


「ん」


 無愛想な声と共にこちらに投げられたのはハンカチで顔面に直撃する。


「ちょっとー」

 そういいつつナギの手を借りて立ち上がり、渡されたギンカムチェックのハンカチで顔をふく。


「ナギさん、お時間の方も押してますし。誰かに見られると⋯⋯」


 目の前にとまっている黒い車の運転席に座っているマネージャーさんらしき人がそういう。

 ナギは慌てた様子で車に乗り込んだ。

 奥には窓によりかかって寝ているソラ。

 起きてなくて良かった⋯⋯。


「じゃあ」


「あ⋯⋯」


 素直に言葉がでず、喉でつっかえる。

 でも⋯⋯


「ありがとう」


 ちゃんといえた。

 きっとすごい顔だろうけど。


「ハンカチ洗って返すね」


 ナギはそれにうなづくと戸をしめた。


 走り去っていく車を見送りながらナギのハンカチを顔にもっていく。


 別に匂いフェチって訳でもないんだけどこの香り、すごい好きだな⋯⋯。


「うえぇ⋯⋯」

「あ⋯⋯」

 振り返るとドン引きしている風雅がいた。

 こういう日に限って次から次に⋯⋯。

「姉ちゃん何やってんの⋯⋯。きもい」

「あ、あんたにいわれたくない」

 う⋯⋯こればっかりは弁解のしようがなく黙り込む。

「あ、家まで競争しようぜ!で、負けた方がアイスおごりな」

「は?」

 そういってる間にフライングしている風雅。

 その背中を見送ろうとするも気づけば駆け出していた。

 やっぱり負けたくいしね。

 こんな時でも笑ってなくちゃ。

れん兄の優しい笑顔が脳裏に浮かんだのもつかの間。

 先ほど颯爽と現れた王子様の心配そうな優しい笑顔が浮かんで私はブンブンと首をふった。


「まて、風雅あぁぁ!!」

「えっ?ってうわあぁぁ」

 ふっ。これが陸上部の本気さ。などと思いながら全力でかけていると先程までのモヤモヤした気持ちも少し晴れてきた。


 れん兄ともまたちゃんと幼なじみとして笑いあえる日がくるよね。

 それまで⋯⋯。


「え、ちょっ、姉ちゃん!?」


 崩れ込む私。

 それまでれん兄と普通に話すことすら出来ないのか⋯⋯。むしろ嫌われたんじゃ⋯⋯。てか、そんな日なんてくるの?という思考が脳内をループし、晴れ間が見えてきていた心に暗闇が広がりはじめる。


 やっぱり失恋の痛手はそう簡単に治らないようです⋯⋯


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